上川隆也が完全無欠な執事役で主演を務めるドラマ『執事 西園寺の名推理2』(テレビ東京系)の第1話が19日に放送され、平均視聴率8.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録。前作の最高記録7.9%をいきなり更新する結果となりました。
伊集院百合子(吉行和子)の執事・西園寺一(上川)は、ある日、百合子が25年来の付き合いだという天才イリュージョニスト・薫子(プリンセス天功)のショーを観覧することに。すると、天女をモチーフにした瞬間移動の演目中、薫子が脇腹を刺され死んでしまう事件が発生します。
この演目は、小部屋の中に閉じ込められた薫子が、離れた場所にある台の上に登場するというもので、客席から見えない通路を小部屋と台の間につくり移動する、という瞬間移動のトリックを西園寺はすぐに見抜きます。そして、その通路内に薫子の血痕があることから、何者かに刺されたことが判明するのでした。
ところが、舞台袖で見守っていた絹代(秋元才加)や夏美(日南響子)、オペレーション・ルームにいた演出家の吉崎ら劇団員たちは、怪しい人物を目撃していないと証言。西園寺は、ショーの途中で客席から立ち去って行った久美子(浅野ゆう子)が事件に関わっているのではないかと睨みます。
すると、久美子が薫子の先輩だったことや、25年前のショーの直前、演目で使う羽衣が消失したショックで久美子がショーに出られなくなり、その代役として薫子が舞台デビューを果たしたことが判明。その後、薫子が羽衣を盗んだ疑惑が生じ、2人の仲がこじれたというのです。
また、久美子と絹代が母娘だということもわかり、丸山昭雄・刑事(佐藤二朗)ら警察は、復讐のための殺人だと決めつけます。
しかし、他に真犯人がいるのではないかと疑う西園寺は、独自に調査を開始。その結果、事件発生時、オペレーション・ルームにいたハズの吉崎が、実際には防音用のガラスに自身の顔の映像を反射させてアリバイを確保していたことを突き止めるのです。
殺人の動機は、吉崎が考えたトリックを薫子が演目に採用してくれないためであり、25年前の羽衣消失事件も吉崎が関わっていたことが発覚。
昨年4月に第1シリーズが放送され、すぐさま続編制作ということで人気の高さが窺える同ドラマですが、凝ったトリックよりも、西園寺のスタイリッシュな佇まいや、百合子への美しき忠誠心が見どころなのだと思います。
そのため、前作からの視聴者にとって1番の注目ポイントは、がん治療で休業中の八千草薫に代わり、今作から百合子役に抜擢された吉行のキャラづくりだったと思います。
吉行も八千草と同様、輝かしいキャリアを築く大女優であり、演技力は申し分ありません。上川とのやりとりも自然でした。ただ、達者すぎるんですよね。パーフェクトな執事の西園寺がいなくても、十分に生活していけそうな感じなんです。
その一方で八千草には、今にも消え入りそうな儚げな雰囲気が漂っていました。それを見守る西園寺は、主というより老齢の祖母に接するようであり、残されたわずかな時間を1秒でも惜しむまい、百合子を守るために完璧であらねばならないんだ、という愛情からくる強さみたいなものが感じられました。
案の定、ネット上でも八千草ロスを訴える声が少なくないようですが、現在闘病中の身ですから、これはもう仕方ありませんよね。受け入れるしかありません。メイドの前田美佳(岡本玲)がイギリス留学中で不在、というのも前作ファンからすれば寂しいところだと思います。
トリックに関しては、前述したように特に目新しいものはありませんでした。防音ガラスにパソコン画面の顔を反射させてアリバイ確保というのは、かなり無理があるのでは? とも思いましたが、その辺りの微妙な設定は前作同様です。現場にしゃしゃり出てくる名探偵に対して、無能な刑事がイライラする手垢がつきまくった関係性も相変わらず。謎解きの面白さをメインで楽しむドラマではないのだと思いますし、今回に限っていえば、プリンセス天功の存在そのものの方がよっぽどミステリアスだったと思います。
気になったのは、その天功が演じた薫子が殺された場面。瞬間移動中に吉崎に刺されたものの助けを求めず、最後までショーを続けたのはなぜか、という小さな謎が提示された点です。
これを西園寺は、薫子が新人時代に久美子から受けた、「一度お客様の前に出たら、何があっても魔法(ショー)を止めちゃいけない」という教えを守ったためだと解き、そのことを知った久美子が涙を流すという感動仕立ての展開になりました。けれど、久美子は羽衣が無くなって動揺した結果、舞台を降板した過去があるんですね。それが頭にあったため、このシーンはどうにも心を動かされませんでしたし、感動の押し売り感がありました。
次回は爆破事件が描かれるとのことですが、『令和』が発表直後にはしっくりこなかったように、吉行の百合子役も次第に違和感がなくなっていくことでしょう。上川との新たな名コンビぶりが発揮されることを期待したいと思います。
(文=大羽鴨乃)