かつて、ナンシー関は「ほかではつまらないのに、特定の番組だと面白い芸能人がいる」という論を展開していた。例えば、彼女は「ほかではそうでもないのに、『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(日本テレビ系)に出てるときだけは面白い」と、いびつな形でダチョウ倶楽部を称賛している。



 特定の番組に異常にマッチし、その場所でのみ魅力を放出するタレントは現代にも存在する。『ゴッドタン』(テレビ東京系)に出ているときに限って谷桃子はすごかったし、『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)で見るザブングル・加藤歩は、なぜか神がかり的だ。

ジョイコン完全無視で、ゲーム始まらず……

 5月2日深夜に放送された『勇者ああああ~ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組~』(テレビ東京系)にゲスト出演したのは、あの園山まきえ(園山真希絵から改名)。この番組だと魔法が起こるのか、この番組がいち早く逸材を見つけただけなのか、どちらにせよ『勇者ああああ』で見る園山はすごい。

 今回行われたのは、「ゲームダービー レディースマスターズ」なる企画。年齢層が少々高めの4人の女性タレントにゲームの楽しさを知ってもらうべくゲームで対戦させ、誰が勝つのかをクイズダービー形式でBETする趣旨だ。

 出場したのは、大原がおり大林素子安達有里、園山の4人。それぞれのゲーム知識はバラバラだった。「好きなゲームは何?」という質問に、大原は『スパルタンX』と35年前のソフトを挙げる一方、安達は「『ゼルダの伝説』で次のダンジョンにどんどん進んでいくのが好き」と意外な知識を披露する。そんな中、園山は初っ端から挙動不審だった。

「ちょっと私、カルタとか百人一首以外やってない……(苦笑)」(園山)

 モニタールームで見ていたアルコ&ピースの酒井健太は「大丈夫か、コイツ?」と、失笑しながらいきなり園山をコイツ呼ばわりである。

「コン、コン」という音を頼りに互いが打ち合う「ピンポン」という卓球ゲームがある。

まずは、これにチャレンジしてもらいたい。できれば、運動神経がある者同士の対戦がいい。となれば、大林が当然選ばれるだろう。続いて「運動神経に自信がある」と、唐突に園山が立候補した。世界的アスリートを前に、この態度。「おいおい……」という表情で園山に視線を向ける大原と安達。この時点で、もう面白い。「勝っちゃうと思う」と、不可解なほど園山は自信満々だ。

 ゲームが始まった。両者は利き手にジョイコン(リモコン)を持っている。ジョイコンを振り上げる動きに応じてボールは浮き、落ちてくるタイミングでジョイコンを振ればラリーが始まるというシステムである。なのに、園山は何も持っていない左手をしつこく振り続ける。
一向に始まらないゲーム。モニタールームの芸人たちは「なんで左手でボールを上げるんだよ」「左リモコンねえだろ!」と、ひどい言いようだ。結果、当然のように園山は敗北した。



 続いては、Nintendo Switchを使ってのエアギター対決である。どうせなら、このゲームは楽器経験者に参戦してもらいたい。「楽器の経験者はいますか?」という質問を受け、「あります」と手を挙げたのは、やはり園山である。いつも名乗り出る園山。「なんでもかじってんじゃねえか」とモニタールームの芸人たちはバカ受けし、サッカー審判資格やレースライセンスを持つ三井ゆりになぞらえ、園山のことを“ポスト三井ゆり”と呼ぶ始末である。

 エアギター対決は、園山vs大原という顔合わせに決定。バラエティ慣れしている大原はノリノリでエアギターをかき鳴らした。一方、楽器経験者のはずの園山はエアギターだと言っているのにジョイコンを包丁に見立て、みじん切りの体勢の“エア料理”を勝手にし始めた。モニタールームの芸人たちからは「料理作っちゃったよ」とブーイングが発生し、園山は惨敗した。


 最後に行われるは「テレフォン」というゲーム。電話が鳴ったらジョイコンを取り、「はい、もしもし」と叫ぶルールである。注意したいのは、取っていいのは「プルル、プルル」という着信音のみで、他の電話に出てはいけないということ。今回は、園山vs安達という顔合わせだ。

 ゲームがスタートすると、まずは「ジリリリリリ、ジリリリリリ」という着信音が鳴った。正しい音ではない。なのに、「これ? これ?」と言いながらジョイコンを平気で取る園山。まんまと罠にはまる。園山にBETしていたウエストランドは「さすがに許せないわ」と、怒り心頭だ。

クイズよりもモザイクに気を取られて誤答する園山

 実は、同番組への園山の出演は今回が初めてではない。2018年8月23日放送のクイズ企画にも登場していた。各ジャンルの専門家を呼び、出題ジャンルを絞った形でクイズ王に挑めば勝利するのでは? という趣旨で、このときに「料理」ジャンルの専門家に選ばれたのが園山だった。



 登場するなり、「私、陰陽師になったんです」と、いきなり意味不明なことを言いだす園山。いわく、人を見ただけで、なんの食材を食べたほうがいいかアドバイスできるというのだ。まず、やさしい雨・松崎克俊を見て「もずくを食べたほうがいい」と助言する彼女。松崎のパーマヘアからもずくを連想したのは明白である。さすがに、アルピーの平子祐希が「事務所と、もうちょっと(キャラを)練ったほうがいい」と突っ込むと、「さっき決まったばっかりなんです(笑)」と、園山はあっさり白状。彼女のプロ意識のなさのおかげで、オープニングはいきなりグダグダになる。

 クイズが始まってからの彼女もすごい。モザイクのかかった食材が映し出され、ヒントを頼りに、それが何かを当てる問題が出題された。すると、モザイクに気を取られ「これ、放送禁止?」とフリーズする園山。知識うんぬんではなく、クイズというシステムに対応できていない。結果は惨敗だった。

 終了後、所在なげに園山は「どこに行けばいいんですか?」と口にし、「帰るんだったら帰ればいい」「今までの現場でビンタされたことはありますか?」と平子も完全にあきれた様子。
以来、彼女はこの番組で「園山」と呼び捨てにされている。

 前回も今回も、園山は爪痕を残した。特に今回の放送終了後、SNS上では「園山やべー」「園山のエア料理が食べたい」「園山の勘の悪さがウケ、まかり間違ってプチブレークするんじゃないか」といったツイートが上がっている。つまり、この番組の中だと園山まきえはスターなのだ。

 彼女自身は、この扱いをおいしいと思ってなさそうだ。園山のブログを見ると、『勇者ああああ』にまったく触れていなかった。きっと、無自覚だから彼女は面白い。絶妙なバランスなのだ。

(文=寺西ジャジューカ)

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