ソウル市のお隣・富川(プチョン)市にある、世界の建築物のミニチュアを展示するテーマパーク「アインスワールド」を訪れた。2003年のオープン以来、地域住民に愛されてきたが、近年は施設の老朽化とともに客足も減り、ますますの珍スポ化が進んでいるという。



 バスを降り、人気のないエントランスに立った私は、その荒涼とした景色に息をのんだ。アスファルトの隙間からは雑草が伸び放題。音楽どころか物音すら聞こえず、券売所は閉ざされたままで、底のない倦怠感があたりに充満していた。

 券売所ではなく入場ゲートで直接お金を払い、いよいよ公園内へ。入場料は1万ウォン(約1,100円)。週末の夜だけに行われるライトアップ時なら1万30,00ウォンと、この規模にしてはちょっと高めだ。


 最初に現れたのはイギリスのタワーブリッジ(の模型)。園内はイギリスゾーン、フランスゾーン、ロシアゾーンと分かれ、写真で見たことのある世界の建造物の模型が次から次へと現れる。パンフレットによると「25カ国67個の有名建築物」が展示されているという。



 それぞれの建物は実に精巧だ。しかし、ところどころ破損し色落ちし、雑草は伸び放題、植木は蜘蛛の巣に覆われるなど、管理のずさんさが際立ち、腰砕け感は否めない。周囲には私以外に誰もおらず、まるで人類滅亡後の世界を見学しているような気分になる。


 ヨーロッパを抜け、次に現れたのはアフリカゾーン。そこに大々的に展示されていたのが「キリマンジャロ山」だ。もはや建築物でもない。

 雑草が生い茂る空き地や、もぬけの殻となった売店などを横目に見ながら、やがて登場したアメリカゾーンだ。これぞニューヨークな景色はこの公園のクライマックスといえるが、その朽ちかけた様子に思わず変なため息が出る。よく見ると、ワールドトレードセンターの壁が一部はがれ落ちているのだが、これって倫理的にまずいのではないか。



 その裏にあるのはお待ちかね日本ゾーンだ。展示されていたのは姫路城と熊本城という、日本のことわかってる感のあるラインナップ。背景に描かれた、インチキくさい居酒屋を思わせる「ザ・日本」なイラストがたまらない。

 インドのタージマハールやカンボジアのアンコールワット、最後に韓国ゾーンを見て、地球一周の旅は終わり。所要時間は30分。ミニチュアがただそこにあるだけの、そしてまともに雑草も抜いていないこの場所に、安くもない入場料を払う必要はあったのかというモヤモヤが胸によぎった。


 あらためてネットに書かれた訪問客のレビューを読むと、「高い」「ボロい」「見るものはない」といったネガティブな意見のほかに、「夜なら比較的楽しめる」との意見も目立った。暗いから施設の破損はそれほど気にならない、というのがその理由らしい。

 珍スポ好きの皆さまは、ぜひ太陽が燦燦と降り注ぐ日中に訪れ、ポカーンとしたワールドの細部をじっくり堪能してほしいところである。

(文・写真=清水2000@simizu2000

●アインスワールド                                  

住所 京畿道富川市遠美区跳躍路1

休館日 なし

営業時間 10:00~18:00(冬季~17:00、週末・祝日~23:00)

HP www.aiinsworld.com