農林水産省の元事務次官の熊澤英昭容疑者が44歳の長男を殺害した事件では、息子による家族への暴力が背景にあったと報道されている。悲惨なDV、虐待のニュースは後を絶たない。
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頭の中が地雷でいっぱいになってしまう理由
――第1回では、加害者の頭の中は「地雷」まみれだと伺いました。地雷がまったくない人などほとんどいないですが「地雷まみれ」になってしまったら生きにくいですよね。そうなってしまう背景は、どこにあるのでしょうか?
中村カズノリ氏(以下、中村) 自己受容と自己肯定の低さがあると思います。
ただ、原家族(※最初に育った家族)でのコミュニケーションで自分はこれでいい、という自己受容や自己肯定が育まれないと「自分が誰にも認められないんじゃないか」という不安が残ったままになります。それが地雷という形になったり、また、地雷を踏まれたら傷を負うから、防衛のために相手を必要以上に攻撃をしてしまうんです。
――「不安」が「地雷」になるんですね。しかし、原家族に問題のある場合、自分がその問題を次の家庭で継承してしまう連鎖を断ち切るのはなかなか難しそうですね。
中村 はい。
中村 僕の場合は、原家族が厳しくしんどい場所でした。ですが、自分の中で「家族は大事なもの」という価値観はとても強かったんです。「男は家庭を作って維持してなんぼだ」という気持ちが強くありました。
――『DVはなおる 続』を読んでいて、中村さん同様に、加害当事者は意外なくらい「家庭」や「結婚生活」への思い入れ、こだわり、憧れが強いように感じました。DVや虐待やモラハラで家庭を壊しているわりに、結婚や家庭への憧れがむしろ人一倍強いんですよね。結婚しないとダメ、独身でいる選択肢なんて信じられないというか。
中村 それも結局「家庭を作って認められたい」ということなのでしょうね。
――根深いですね。同書では被害者側の手記もありますが、被害者側にも似たものを感じます。「家族」への気持ちやこだわりが人一倍強く、読んでいる側としては逃げればいいのにと思ってしまうような壮絶な状況でも留まってしまう。
中村 はい。心の中で「家族」に依存する比重が高すぎるという点で、加害者と被害者は似ています。家族への依存が強すぎるので、ほかに行けないというか、そもそも家族以外の選択肢がないんです。
――中村さんと私は同い年です(1980年生まれ)。ですので、中村さんの話す「家庭と男と責任感と」という感じは、少し古風な印象を受けました。
中村 「男らしさ」へのこだわりが強かったんですよね。実際は全然男らしくなかったのですが。
――一方で「男らしさ」へのこだわりは、私たちより10年くらい若くなるとさらに薄れていっていると見ていて感じます。
中村 10歳下くらいから全然違ってきますよね。
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2回にわたって加害者側の心の動きについて解説してきた。次回からは解決に向けた手掛かりを引き続き中村氏に伺う。
(文/石徹白未亜 [https://itoshiromia.com/])
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