注目芸人を集めた『ツギクル芸人グランプリ2019』(フジテレビ系)で優勝を果たし、ネタ番組に絶賛露出中のザ・マミィ。1年前にトリオ『卯月』を解散して、改めてコンビを組み直した2人は、「僕ら、お笑い第7世代に乗り遅れた第8世代です」と不敵に笑う。
■テレビ出るのに10年はかかると覚悟してた
――『ツギクル芸人グランプリ』優勝おめでとうございます。
2人 ありがとうございます。
酒井 昨日、上野を歩いてたら、「芸人さんですよね? 優勝してました?」と初めて声かけられました。「みんな見てくれてるんだなー」って。
――今、絶好調のかが屋を倒したというのが大きいですよね。
林田 破りましたねえ……。前回大会で(昨年までは「お笑いハーベスト大賞」)、前のトリオ(卯月)で決勝まで行ったので、同じところまで来られた安堵感がありましたね。
――『ツギクル』もそうですが、若手のネタ番組『マイナビラフターナイト』(TBSラジオ)で月間チャンピオンになったときに、「調子いいな」と思ったんです。
林田 あの番組のチャンピオンって、いい流れにのってないと獲れないイメージありますもんね。確かに少しは調子がいいかなと(笑)。
酒井 あと最近では『ネタパレ』(フジテレビ)への出演も嬉しかったですね。
――卯月のときも一時期、追い風が吹いてましたよね。その時と感覚は違います?
酒井 卯月も割と早かったんですけど、それより早いかもしれないですね。卯月は2年目で『キングオブコント』の準決勝に行って、その後からテレビに出られたんですよ。マミィはあれよあれよで。1年かけずにテレビに呼んでいただいて、まだ気持ちが追いついてないというか……不思議な感覚ですね。芸人を始めるまでは、テレビに出られるのに10年はかかると覚悟してましたから。それがこんな早く出られるとは……。
林田 そう考えると、振り返ってみれば『オンバト』(2019年3月に1回だけ復活)の影響がでかかったです。マミィになって間もないタイミングの、強いネタが2個くらいしかないぐらいでうまく引っかかって、結果を出せたたなって。ライブでもお客さんの見る目が変わって、周りの芸人からの「こいつら終わってないんだ」という視線を感じましたし。
酒井 何といっても、533キロバトルですからねえ。
林田 この人、『オンバト』の話をすると、すぐ調子乗るんですよ。
酒井 思わず、1位の感じで泣いてしまいました。空気階段さんがさらに高い点数だったのに(笑)。でも僕は『オンバト』でお笑いを知って、この世界に飛び込んで、困ってるときに『オンバト』に救われたわけで……。泣きますわね、これは!
――ではあらためて、どうやってザ・マミィ結成に至ったのか、卯月の頃を含めて教えてください。
酒井 僕ら、人力舎の養成所の同期なんです。
林田 酒井が別の奴とコンビを組んでいて、そこにコンビを解散した僕が入れてもらえることになって、前のトリオの卯月になりました。それが養成所卒業の3カ月前ぐらいですね。
酒井 僕がコンビでやってたときに、顔や空気感は面白くても、なんか脳みそが足りないなと。そこでちょうど余ってた脳みそを見つけた(笑)。
林田 脳呼ばわり……気持ちよくないな。
酒井 組んだらそばから養成所のライブでいきなり1位を取れたりして、これはいけるぞと。
林田 あくまで養成所の中の話だけど、3人それぞれが目立ってはいたんです。でも組んだ当初は、先生も「目立ってるやつが集まったからってうまくいくもんじゃない」という評価で、それがライブで1位とったら「いや~、ドリームチームだね!」って。手のひら返しでした(笑)。
――順調だったのに、突然の解散でしたよね。あれはどういう事情で……。
林田 解散の経緯は僕ら目線になっちゃうし、一緒にやっていた木場も同じ事務所で芸人続けてるんで、うまく説明できないんですけど、方向性なんかについて話し合うことが多くなってて……。そういうのが積み重なって、解散の方向で考えようということになったんですよね。で、その後、ここ(林田と酒井)でやれるかどうか、改めて話をしました。僕はやりたかったんで。
――コンビで再始動して、感覚はすぐつかめました?
酒井 いやー。どういうネタを作っていいか分からなかったですね。
林田 トリオだと2対1の構図を作るだけで伝わる情報もあるんです。そのへんのコツがつかめなくて、めちゃくちゃ説明セリフが増えたりしてました。お客さんは「新しいコンビになって、どうなんだ?」で見てくるし、スベるときは前よりもスベって……。
――最初にできたネタは?
林田 卯月みたいなパターンのやつです。中央にいる酒井くんが巻き込まれていって、出入りする形が似ている。東京03の飯塚さんには「面白いけど、卯月じゃん!」って突っ込まれました。
酒井 他にも「もう一人の影が見える。今にも出てきそう」とか言われましたねえ。
林田 それから3カ月ぐらいグチャグチャもんで……。あの時期はキツかったです。
――いつ形が見えました?
酒井 「松ノ門」(霊能者のコント)を見つけたときですね。ライブにかけたら久々にウケた感覚があったんですよ。
――「松ノ門雲洲」という名前が秀逸ですよね。『ツギクル』では金縁のメガネ褒められてましたが、名前や小道具はかなりこだわってます?
酒井 それこそオジサンがかけるメガネを、100均で買う芸人もいるんですよ。でもそれだとコント自体が安っぽくなる気がして。だからイタリア製の6,000円のやつを選びました。そこはこだわってます。
――というと、松ノ門の和装は?
林田 こだわりを話した後に申し訳ないんですが、あれはドンキで買いました(笑)。
――デパートの屋上コントで出てくる、ウサギの着ぐるみはどうなんですか。
酒井 あれは買いました。
――えー!
酒井 ネット通販で15,000円しましたね。
林田 設定がある程度できた段階で、なぜか2人でハイになって買っちゃったんですよ。でもその後中身が固まらなくて、でも着ぐるみ買ったから、ムリヤリ作ったネタですね。
酒井 昔、巨大な勾玉を紙粘土で作ったこともあります。作っている間、放っておくと形がつぶれるんで、6時間ぐらい手で持って乾燥させたりしました。実は、うちの兄がおもちゃ制作会社で働いていて、なんでも作れるらしいんですよ。アイアンマンみたいに顔がカシャーン! と開く面もいけるから、作ってあげようかと言われてます。
林田 面白いな、それ。
――今年の『キングオブコント』はどうですか。先輩からアドバイスもらったりします?
林田 飯塚さん(東京03)の存在はでかいですね。営業で一緒になる機会があると、アドバイスをいただいてます。
酒井 やっぱり03さんのコントを近くで見られるのは贅沢ですからねえ。角田さんの顔のつくり、言葉の乗せ方、感情の爆発……。いろいろ勉強させてもらってます。
林田 ハナコの岡部さんも、「やったことない演技は一回、角田さんだったらどうするか想像して、そこから自分に下ろす」と話しているのを聞いたことあります(笑)。というか、今や岡部さんがマネされる位置になりつつあるかもしれないですね。酒井にもその位置に行ってほしい。
――今日のインタビュー中もいろんな方のお名前があがりますが、ライバルは誰なんですか?
林田 かが屋さんは意識しますねえ。でもスタイルウォーズというか、同じコントでも異種格闘技感があって。彼らは先いってるし、自分らにはできない表現してるんで、ライバルなのかは分からないですね。そういう意味では、空気階段さんはシンプルに見た目も似てるし、僕らと同じ道路の先にいる感覚があります。
――林田さん、空気階段の水川かたまりさんに声質が似てるような。
林田 結構見た目も言われます。僕もいろんな人に似ていると言われるんですよ。シソンヌのじろうさんとか、ロングコートダディの堂前さんとか。
――みんなコンビの脳みそ担当じゃないですか。一方、酒井さんは同じ事務所の岡野陽一さん似ですね。
酒井 めちゃくちゃ言われます。
――憧れて寄せているんですか?
酒井 巨匠(岡野が組んでいたコンビ)さんは好きでしたけど、似てるとは思ってなかったです。養成所入った瞬間、講師に「岡野じゃん」と言われて、「はい?」みたいな。それが卒業して岡野さんとバッタリ会った時、向こうから「俺じゃん!」って。
林田 ヘタしたら消滅してたよね。ドッペルケンガーみたいに。
酒井 でも一番可愛がってもらってます。
林田 ヒゲも意識してないんでしょ。そのヒゲ、もともと大学時代、オシャレではやしたんだよね?
酒井 EXILEに憧れていたんです。でも薄かったから、男性ホルモンの薬を塗って生やしました。その薬が臭いんで、彼女に悪いと思ってヒゲも剃ったんですよ。そしたらある日、彼女とキスしたらヒゲの感覚を感じて……。キスで薬が相手に移って、ふんわりヒゲが生えてたんです!
林田 いきなり何の話してんの? これどういう記事になるんですかね?
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ザ・マミィ
林田洋平(はやしだようへい) と酒井尚(さかいたかし) によるコンビ。人力舎の若手養成所・スクール JCAの24期生 。トリオ「卯月』で注目を集め、数々のショーレースで検討するも2018年に解散。その後、解散翌月に改めてコンビとして結成。事務所ライブを始め多くの舞台に出演し活躍中。8月に行われた「ツギクル芸人グランプリ2019」(フジテレビ系)で優勝を果たしたほか、テレビ番組などにも徐々に出演機会が増えている。まさに“次来る”芸人として注目度が急上昇している。
※撮影/二瓶彩