稲垣啓太インスタグラムより

テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(12月29~1月4日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

稲垣啓太選手「なぜか『もののけ姫』を歌わされるんですよね」

 年末年始のテレビ番組は関所のようだ。

この1年にブレイクした芸能人が多く出演し、旧年の振り返りと新年の華やかさを演出するけれど、中にはこれを機にテレビからフェードアウトする人たちも出てくる。ここまでしか進めない人と、ここから先も進める人がより分けられる。

 ただ、今回はそんな“一発屋”然とした出演者が、あまりいなかったように思う。りんごちゃんは出ずっぱりという感じではなかったし、いくら不思議な演出が多い『紅白』といえども、椎名林檎と絡ませるなんてことはなかった。「パンケーキ食べたい」というフレーズは、年末年始を待たずにあまり聞こえなくなっていた。

 そんな中、多くの番組で目にしたのがラグビー日本代表の面々である。トークをしたり、ゲームをしたり、スポーツで対戦したり。メンバーが入れ替わり立ち替わり出演し画面を占拠する様子は、さながら最盛期のAKB48グループのようでもあった。リーチマイケル選手の出演はほとんど見かけなかったけれど、そこはレイザーラモンRGがモノマネで補完していた。

 特にフィーチャーされていたのは、笑わない男、稲垣啓太選手である。時折ニヤッとはするけど破顔はしない、そういう意味で稲垣選手は確かに笑わない。そんな彼が、どこまで意識的に笑わないよう努めているのかはよくわからないけれど、周囲を意図的に笑わせようとしているのは確かだろう。

真顔と低音ボイス、そして一瞬の間の後に、少し意外性のある簡潔なフレーズをつぶやく。そんな発言は確かにおかしかった。たとえば――

・31日『第70回NHK紅白歌合戦』(NHK総合) カラオケで歌う曲を聞かれ、「なぜか『もののけ姫』を歌わされるんですよね」

・2日『新春しゃべくり007』(日本テレビ系) 最近はエスプレッソマシンを購入し、ラテアートに挑戦しているが「ドブみたいな模様にしかならない」と語り、何を描こうとしたか聞かれると「ハートです」

・3日『VS嵐2020』(フジテレビ系) 笑わない男の異名を取ると私生活でも大変ではないか、外食時にも笑えないのではないかと問われて、「最近はですね、ウーバーイーツで済ましてます」

 笑いを量産する面白いスポーツ選手というと、松岡修造のようにハイテンションで意図的に笑わせにくるか、丸山桂里奈のように天然で無意図的に笑わせにくるか、基本はこの2パターンだった。ローテンションで意図的に笑わせにくるという点で、稲垣選手は新しいのかもしれない。

 話は戻って、年末年始の番組に“一発屋”的な人があまりいなかったのは、2019年の新語・流行語大賞でトップテンに選ばれた芸能関係の言葉が、”闇営業”しかなかったこととも符合する。そういえばこの年末年始、芸人がたくさん出ている番組でよく話題に上っていたのは、”闇営業”も含めた吉本の一連の騒動だった。チュートリアル・徳井について語られたり、千原せいじの不倫が改めてツッコまれていたり、新しいところではFUJIWARA・藤本が「チョリース」と言っている姿も目にした。

 この年末年始を機に見なくなる芸能人はあまりいないかもしれないけれど、吉本の話題についてはさらにフェードアウトしていくのかもしれない。

正月番組のMVP? ”笑わない男”稲垣啓太選手と”ポンコツ”綾瀬はるか
綾瀬はるか

 この年末年始、綾瀬はるかを繰り返しテレビで見たという印象がある。実際、30日に大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK総合)の総集編があり、31日に『紅白』で司会を務め、1日に『お正月だよ!笑点大喜利まつり ~木久扇 笑点50年記念3時間SP~(日本テレビ系)で大喜利の司会と落語を披露し、同日に『関口宏の東京フレンドパーク2020元日SP』(TBS系)でゲームに興じ、2日にはドラマ『義母と娘のブルース』(同)の新春スペシャルで主演していた。

 紅白で綾瀬が司会を務めたのは4年ぶり3回目ということだったけれど、今年もその司会ぶりは健在だった。かんだり、曲紹介が歌にかぶったり、うまく踊れてなかったり、コントで髭男爵の「ひぐちカッター!」ならぬ「はるかカッター!」を披露したり。

お茶の間やSNSやネットニュースや、その他もろもろの場所で綾瀬に一斉にツッコミが入ったはずだ。

 審査員席の上沼恵美子も、綾瀬の司会ぶりを次のように“審査”する。

「何回かやってらっしゃるのに、初々しさをまったく失ってない。素晴らしいですよね。だいたい達者になっていくんですけどならない」

「その初々しさが素晴らしいです。私の若いころにそっくり!」

 なんだか『M-1』の和牛に対するコメントを彷彿とさせるけれど、確かに、綾瀬に対するツッコミの多くは、その初々しさというか、正直さというか、ゆるさに対するものなのだろう。

 近年の紅白は、音楽の嗜好の多様化に応じ、演歌やJ-POPだけでなく、アニメ、クラシック、海外アーティストなどさまざまなジャンルが詰め込まれている。『おしりたんてい』のコーナーがあるかと思えば、KISSが叫び、美空ひばりがAIで蘇り、ビートたけしにピンスポットが当たり、竹内まりやが歌い上げたりする。

 女性と男性の歌合戦というスタイル、男女が交互に歌い合うという形式も年々崩されている。それでも例年、トップとトリだけは明確な対戦形式が残っていたけれど、今回のトップバッターは男女の子どもたちで構成されたFoorinだったし、トリのパートでもMISIAのステージでレインボーフラッグが翻った。

 そんな中、多様化し拡散する視聴者をつなぐ結節点になっていたのが、なんだかゆるい綾瀬の司会だったかもしれない。

 あと、今回の紅白での綾瀬以外の最大のツッコミポイントは、向かって右下を不自然に見ながらしゃべる米津玄師だっただろうか。

カンペを読んでいたのだとしたら、これもまた正直でゆるい。

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