100円ショップで売っている商品から3品を厳選し、それだけを材料とした料理に挑戦してみようという企画の第3回。
相変わらずノープランで100円ショップへと買い物に行くと、粉ものコーナーが充実していることに気が付いた。
これらは具と形の組み合わせで、無限の可能性が広がる素敵な素材といえるだろう。
よし、今回はこの粉もので勝負してみることにしよう。
購入したのは、たこ焼き粉、ふりかけ、天かすの3品。
この組み合わせで目指すのは、山形県が誇るソウルフード、どんどん焼きである。今回はいつものように適当なオリジナル料理ではなく、ちゃんとした本家のあるカバー料理なのだ。
どんどん焼きとは、薄く焼かれた生地を割り箸に巻いたお好み焼きのことで、山形県民にとってはおなじみのおやつである。定番の具は、魚肉ソーセージの輪切りと切手サイズの海苔。
特徴はそのボリュームに対する値段の安さで、だいたい1本150円くらいが相場となっている。
こんな値段なので、わざわざ家で作る山形県民は少ないと思うが、埼玉県民が食べるには山形まで出かけるか自分で作るしかない。どんどん焼きが1本150円とするならば、材料費300円で2本作れればドロー、3本作れれば私の勝ちといっていいだろう。何を勝負しているのかよくわからないが。
まずはボールに適量のたこ焼き粉、ふりかけ、天かすを入れて、これを水でゆるゆるに溶く。
生地にたこ焼き粉をセレクトしたのは、最近のどんどん焼きのトレンドとなりつつある「モッチリふわふわタイプ」を目指すため。「カッチリしこしこタイプ」にするのであれば、膨張剤などが入っていないお好み焼き粉をセレクトするといいのではないだろうか。
本場のどんどん焼きには、鰹節パウダーや青海苔、紅しょうがのみじん切りなどが入るのだが、これらをワンセットとして補ってくれるのが、ふりかけの存在である。複数の材料が組み合わされた存在は、こういうときに心強い。
そして唯一の具である天かすについては、完全に私の好みだ。天かす、大好き。
本来のどんどん焼きは、大きな鉄板に生地を四角く広げて作るのだが、わざわざホットプレートを出すのも面倒なので、卵焼き用の四角いフライパンを使ってみることにした。
本当のことをいえば、まず普通のフライパンで焼いてみたのだが、テフロン加工の効果が末期を迎えており、焦げ付いてしまってひっくり返せなかったのだ。その点、卵焼き用のフライパンは使用頻度が極端に低いので、同じ時期に買ったにもかかわらず新品同様である。
お玉1杯分の生地を流し込んで薄く広げ、そこにウスターソースを掛ける。
いい感じに生地が焼けたところで、慎重に裏返す。たこ焼き用の粉を使ったのだが、生地のフカフカトロトロ度が予想以上に高く、薄く焼いてひっくり返すのがなかなか難しい。
本当は鉄板の上で割り箸にクルクルと巻くのだが、このフライパンだと構造的にそうもいかないので、両面が焼き上がったところで皿に取り出してから、クルクルクル。
仕上げにウスターソース、マヨネーズ、追加のふりかけを掛けたら、3品食堂風どんどん焼きの完成だ。本場のものに比べると、ちょっとボリュームが足りないけれど、なかなかの再現度じゃないだろうか。
山形でどんどん焼きを食べたのが結構前なので、実はその味を忘れ気味だったのだが、これを食べて思い出した。そうそう、こんな味だった。もっとボリュームがあって、さらにシンプルだったかな。ちょっとふりかけと天かすを奢りすぎたようだ。でも満足。
300円分(税別)の材料で軽く5枚は作れるようなので、この勝負は私の勝ちだ。
どんどん焼き屋さんにも、お好み焼き屋さんのように予算に応じたトッピングという文化があり、チーズだったり、カレーだったりを追加できる。そこで2本目以降はせっかくなので、冷蔵庫にあったものを適当に巻き込んでみた。
お店だと値段が気になってなかなかトッピングに挑めないが(プラス100円とかだけれど、もともとが150円とかなので高く感じる)、自宅ならそのあたりはフリーダムなのがうれしい。
そして最終的には、生地をさらに水で伸ばして、もんじゃ焼き風にしていただいた。
変幻自在な粉もの文化に大満足だ。
それにしても、粉ものを自宅で作ったときの材料費の安さはすごい。お好み焼きとかも、これにキャベツとかを加えればできるだろう。
そこで昔の偉い人は、こんなことを言いました。
「お好み焼きは、エコノミー焼き」
ちなみにどんどん焼きの名前の由来は、屋台で太鼓をドンドンと鳴らしながら売っていたからだとか。
(文=玉置豊)