
前回(参照記事)「モラハラ」とはなんぞや、というお話をさせていただきました。しかし、説明だけではまだピンとこない方も多いと思いますので、今回は具体的な実例を見ていきましょう。なお、本連載で取り上げる例は、僕がカウンセリングしたご夫婦(「元」含む)から許可をいただいて、個人情報に関わる部分やエピソードの詳細を一部ぼかしたものとなります。
まずは典型的な「モラハラ」事案、Iさんご夫妻の例です。きっかけは、旦那さんからのご相談でした。
会社員のIさんは30代前半で1つ年下のKさんと社会人サークルで知り合い、結婚。2年後に第一子が誕生し、一見幸せ家族として生活していました。ところが、子どもが生まれてから1年ほどたったある日、妻は子どもを連れて家を出て行ってしまったのです。突然の出来事に呆然とするIさん。妻から届いたメールには「あなたのモラハラがつらいので、しばらく実家に帰ります。これ以上、一緒に暮らしていると離婚も考えてしまいそうなので、いったん距離を置いて別々に暮らしたい」と書かれていました。
妻子を養うために必死に働いてきたIさんにとって、まさに青天の霹靂でした。途方に暮れたIさんは「妻がなぜこんなことを言うのか訳がわらないし、どうしたらいいのかわからない」と、僕のところに相談にきました。
「(妻の主張は)到底納得できるものではないが、もし、自分が何かまずいことをしていたのならそれは直していきたいし、心当たりもまったくないわけではない。このまま何もせず、家族がバラバラになってしまうのは耐えられない」という言葉に、僕は少しホッとしました。というのも、本人にモラハラの自覚がなかった場合、その後の相談が非常に難しくなってしまうからです。