お笑い第7世代と呼ばれる若手芸人たちが次々と登場する今、「ブレイク前夜」の闇の中に潜んでいる次世代お笑い芸人に、強すぎる光を当てるライブ企画『ワロタwwww』(コンテンツリーグ)が満を持して帰ってきた!
MCは前回と同じく、研ぎ澄まされたツッコミで若手をぶった切っては輝かせる、アンタッチャブル・柴田英嗣である。最近、何かと注目される男が語る「若手」、そして「ツッコミ」とは――?
◇ ◇ ◇
――『超ワロタwwww』、見ました。
柴田 前回も本当面白かったんですよ。前作出演者の中からスターも結構な数、出たじゃないですか。永野、平野ノラちゃん、サンシャイン池崎……。今回も出てくるんじゃないかと思うと楽しみですね。
――今回、スターが出てくる予感ありました?
柴田 全員ありますよ。みんな飛び道具だから、何かのタイミングで一気にハネる可能性がある。タイミングだけだと思います。
――今回、ツボに入った芸人さんはいました?
柴田 Yes!アキトかな。素晴らしいトップバッターだったね。
――こないだ早速『さんまのお笑い向上委員会』フジテレビ系)に出てました。
柴田 もう来てるんだ! あと事務所(人力舎)の後輩ですけど、しんぷる内藤。
『しんぷる内藤 – Simple Naitou』YouTubeチャンネルより)
――尾田栄一郎さんが「ジャンプ」(集英社)の巻末コメントで、「カラスに乗って」を「革命軍のテーマにしたい」と褒めてたみたいですね。
柴田 えっ、そうなの!? まさかしんぷる内藤がこんなに早く注目されるとは思わなかったです(笑)。
――『ワロタ』に出てくるのは、いわゆるキワモノ系の芸人さんばかりですけど、ずっと見てられるのはどうしてなんでしょうね?
柴田 「そういう人たちだ」という目線で見てるからじゃないですか?(笑) 会場のお客さんも「普段とは違うお笑いを見る」というスイッチが入っていたような……。ここに和牛みたいな正統派漫才師が出たら、笑いは一番取るだろうけど印象に残るのは彼らでしょうねえ。ウルトラマンがたくさんいる中に怪獣1匹だと違和感あるじゃないですか。でもここには怪獣しかいない。これを見られるのは感謝の一言ですよ。
――まだ見ぬ若手はまだまだいるんだ、という印象も受けました。
柴田 ただ若手といっても、はぐれ超人なんて僕と年齢そんなに変わらないでしょ? ワンワンニャンニャンも、たぶん芸歴同じぐらいじゃないですか。こういうところに出てくる芸人は隠れ先輩や隠れ年上がいるんで、気をつけないといけない(笑)。
――柴田さんの若手の頃と今では状況違います?
柴田 全然違います。僕たちは養成所で先生から基本を習う文化があったんですよね。だから当時は正統派のコントや漫才が多かった。言い方悪いけど、菓子めたる、あぁ~しらきみたいな気持ち悪いヤツはいなかったんですよ(笑)。ネプチューンでさえ、当時は突飛だと言われてましたから。それが今はいろんな角度があるし、いろんなタイプの芸人が見れるようになりましたね。むしろ売れるのはこの手のタイプほうが早いかもしれない。まずはきっかけとしての飛び道具というか。売れてから実力継続できれば、生き残れるでしょうし。
――柴田さんは若手にアドバイスしたりします?
柴田 全然! 扱えるタマじゃないですよ。
――面白い芸人は続ければいつか売れるんでしょうか?
柴田 売れてなくても面白い芸人はいるんで、100%じゃないと思います。でも、どこかで結果は残すでしょうね。(ハリウッド)ザコシショウとかそうじゃないですか? 実は中学の先輩で、昔から面白かったですし。バイきんぐの小峠だってそうですよね。「なんて日だ!」一発で売れましたから。そういう意味では、キラーワードが必要なのかもしれないです。
――「ワロタwwww」を見ていて、柴田さんはピン芸がツボなのかと思いました。
柴田 コンビでやってきた僕からすると、そういうアイディアがないからすごいと思うんです。まいあんつとか、どうしても気になってきちゃうんだよな~。
――「一発ギャグはつっこみずらい」とも言ってましたね。
柴田 フリ・オチがあるわけではないので、ツッコむ必要がないし、ツッコむと邪魔になるんですよ。たとえばYes!アキトの「ダブルパチンコ」というギャグに、「損と得、両方きちゃうかもしれねーじゃねえか」みたいにつっこんでも、そういうことじゃない。ツッコミってこっちで方向性決めちゃうんで、そういう定義づけがナンセンスになると思うんですよね。
――柴田さんがキャラつけてピン芸に挑んだ経験はあります?
柴田 番組でムツゴロウさんのオマージュで、畑山さんというキャラで遊んだことあるんですけど、難しいですよ! ちょっと恥ずかしいし、やったことないんで、なかなかふりきれない。ゆってぃも漫才からピンになって最初は戸惑ってましたけど、ふりきってから面白くなりましたね。劇団ひとりもそう。漫才バリバリやってたのが、急にキャラクターのネタになっていった。あいつは天才というか、すごいヤツですよね。
――ツッコミの人がキャラ立ちするのは難しいんですかね?
柴田 説得力ないじゃないですか。さんざん怒って、ボケを訂正してたやつが、急にキャラ入ってふざけるというのが(笑)。もし、くりぃむしちゅーの上田さんや爆笑問題の田中さんが急にふざけたら、「え!?」と思っちゃう。
―― 一方でツッコミのパーソナリティが知れ渡って売れる、というパターンもありますよね。
柴田 結局いじられますよね。ブラックマヨネーズの小杉も、フットボールアワーの後藤くんも、僕も。僕の場合、いろいろあっていじられるネタが豊富だった事情もありますけど(笑)。でもツッコミもふざけたいストレスはあって、「俺もツッコまれたい」という部分が自然とバレていくような……。僕ももともとはこの世界に、最初はボケやりたくて入っていますし。
――コンビ組んでから「いつかボケに戻りたい」という気持ちはありました?
柴田 そういう人もいるかもしれないです。でもまあ勝てないでしょう、山崎には(笑)。組んだ時点で役割分担は決まっちゃいましたね。
――そういえば、ナイツの塙さんが本(「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」/集英社刊)を出して。
柴田 読みました読みました。
――そこで柴田さんについても言及していました。
柴田 全くないです。塙が「関東芸人」とか書いちゃうから、そういう区分けやライバル関係ができちゃうだけで……。やめとけ塙!(笑) ツッコミはふざけている人を直すのが仕事であって、関東の言葉、関西の言葉とか関係ないと思っています。全部芸人。仲良くすればいいんですよ!
――『ワロタwwww』などで人の漫才を見ていて、「漫才やりたい」欲が高まったりしませんでした?
柴田 それは一生消えないんじゃないですかねえ。10年以上やり続けてきたから、作る苦しさも分かるし、ウケたときの気持ちよさも知っているんで。漫才やってた人はずっとやりたいと思うんじゃないですか。でも売れると時間がなくていいネタできないから、続けるのが難しいんでしょうけど。
――それが『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ)で、久々にコンビで漫才を披露したわけじゃないですか。やってて昔との違いは感じました?
柴田 全くないです。10年前と全く同じ。変わらぬ山崎の肩の安定感(笑)。シャツがピタピタだからいい音が出るんですよ。ボケ方も一緒ですし。逆に言えば、成長してないのかもしれない(笑)。
――柴田さんもツッコんで、「変わらないな」という意識でした?
柴田 というよりしくじったらまずいと思って、一所懸命やってました。めちゃくちゃ緊張しましたけど、まあ体が覚えているんでしょうね。
――「泣いた」「感動した」みたいな反響はどうでしたか。
柴田 意外でしたね。こんな喜んでくれる人いるの? って。ニュースにはなるかなと思ってたんですけど、もっとラフな反応を予想してたんですよ。「へ~、あの2人って一緒にやってたんだ」みたいな。泣くほど喜んでくれること自体は、めちゃくちゃ嬉しいんですよ。でもそうなるとこれからハードルも上がるのが心配で。ネタ見たらわかると思うんですけど、人を感動させるようなことはやってきてなかったし、好きなことばかりやってきた2人なんで。ただ、その場その場で面白かったことを言っちゃうみたいな感じなんですよね。
――「漫才は作っている過程を見せるのを含めて作品」とラジオで言ってましたね。
柴田 特に僕らは、一言一句決まったことやって、どこのお客さんでも笑わせるタイプではないんですよ。「今日のお客さんここ笑ってくださるんですか。じゃあ急に寄せます!」みたいな。笑わせるというよりか、お客さんが笑ってくれるところだけやるみたいな感じで。
――賞レースもそうでした?
柴田 そうですね。練習していた以外のことが出てくることが多かったです。普段と違う箇所が一カ所あるだけで笑ってくれる、という作戦です、僕らは。逆に難しくないですか? ネタをばっちり決めて、絶対どこでも笑わせるって。だから、アンジャッシュなんてすごいですよ。
――今、舞台に立ちたいですか?
柴田 練習の場はほしいです。お客さんいるところでやらないと、うまくならないですからね。今まで、これ言ったらお客さんが笑うかなという感覚は持ってたけど、それが10年経って合ってるか・合ってないか分からなくなるんです。その答えあわせの場として、舞台は立ちたいですよねえ。
――ところで柴田さん、最近後輩との交流はありますか?
柴田 交流あっても、みんな逃げちゃうんですよ。
――どういうことですか?
柴田 僕、寝ないで遊んでいたいんです。眠たくて眠たくてのカオスの瞬間に出てきたことが面白いことかもしれないじゃないですか。それで後輩がしんどくなって、来なくなっちゃう。
――たとえばどんな遊びを?
柴田 マラソンしてみようか、と決めたらずっと走る。あと「これからは英語でしょ!」と思ったら英語の勉強を始めるとか。今って、ネタだけじゃなくて、何で世に出るか分からないじゃないですか。「お笑い以外のフック、何もないです」という後輩が多いので、それじゃあ一緒に作らないかと。強制してるわけじゃないんですよ!
でも、マラソンは大学でスポーツやってたヤツが途中でどっか行っちゃいました(笑)。最初は「いいですねえ」で寄ってきても、結局みんな「バイトが……」「彼女が……」みたいな言い訳しながらいなくなって、気づいたら僕一人になっている。後輩に迷惑かけていたことに気づいて、自らつきあいを断ちました(笑)。
――では最近は何をやってるんですか?
柴田 ダーツです。芸人がダーツうまいって面白いんじゃないかなと。たまたまお仕事いただいて始めて、協会のオフィシャルサポーターになったんですけど、腕前は全然です。やっぱり生半可じゃうまくならない。でもむちゃくちゃやってます。今日も朝5時までやってました。
――ストイックですね。
柴田 ダーツはずれたら腕立てやる、というルール設けたりとか。そうすればダーツうまくならなくても、すごい胸筋の芸人になるかもしれないし、どっちかが立つかもしれじゃないですか。それって何もやらないよりかいいかなと。花開かない時もあるけど、開く時もあるわけで。何かやってないと止まっちゃうという話ですよ。
柴田英嗣(しばた・ひでつぐ)
1975年静岡県生まれ。94年にお笑いコンビ「アンタッチャブル」を結成。04年には、『M-1グランプリ』で優勝を飾るも、10年に体調不良により活動休止、1年後の11年1月より芸能活動を再開。『志村でナイト』(フジテレビ)『青春高校3年C組』(テレビ東京)などに、レギュラーで出演中。また19年には、『全力!脱力タイムズ』で約10年ぶりにコンビで漫才を披露。『THE MANZAI』(ともにフジテレビ)にも出演し、世間から喝采を浴びた。
『アンタッチャブル柴田の「超ワロタwwww」~もうすぐ世間に知られてしまう超絶おもしろ芸人たち~』
価 格:¥3,000+税
発売日:2020年1月29日
発売元:Contents League
販売元:ソニー・ミュージックソリューションズ