3月20日に発売されたNintendo Switchの大人気ゲーム『あつまれ どうぶつの森』が中国で発売禁止となったことは既報の通りだが、発禁から1週間以上がたち、現在さらなる騒動が中国で沸き起こっている。今回は『あつ森』発禁騒動の続編をリポートしていきたい。
発売禁止の理由はやはり習近平政権への批判だった?
発売禁止の告知が行われた数日後、中国当局は更なる厳格なゲーム規制に乗り出した。
まず、中国以外の国に在住するユーザーと共同プレイをしてはいけないことが決まったのだ。オンラインゲームの魅力はインターネットに接続し、世界中のプレイヤーと共にゲームを楽しむことができることにあるが、政府はこの機能を問題視したらしい。他国とは異なる形式で「中国専用の接続サーバー」を製作すると同時に、中国以外の人々とチャットを行う機能も削除するという。
以前より『あつ森』が発売禁止になった理由として、ゲーム内で好きなデザインを起こし、自身の島にインテリアとして配置できる「マイデザイン」という機能で習近平政権やWHOのテドロス事務局長を批判するユーザーが世界中に多発したことが原因ではないかと推測したが、当初政府側からは正式な発禁理由を語ることはなかった。
しかし、「世界のユーザーと交流することを禁ずる」という今回の規制によって、「国民に批判されたくない」または「他の国からよせられる自国の批判を国民に見せたくない」政府の魂胆が浮き彫りになったと言える。彼らはどんな形であれ、自分たちの威信を揺るがす発言を許さない。
新型コロナウイルスを想起させる単語も使用不可に
さらに『あつ森』規制のみならず、中国ではどさくさ紛れにさまざまな『規制法案』が可決してしまった。Nintendo Switch、及び周辺ソフトを中国国内で購入する際は実名登録が必要となり、現在すでに購入している人も、役所に実名登録をしなければ罰せられる規則の制定が報告されている。これはパッケージ版やDL版にかかわらず、全てのユーザーが行わなければならなくなるようだ。
それだけではなく、ゲームソフトには当局によって、より一層厳しい審査が行われることになり、社会に影響を及ぼす内容、及び多数の異性と恋愛関係になるなど青少年の教育に悪いと判断されたもの、また使用される文字も規制され「殺、死、鬼、妖」等「よい影響を及ぼさない」とされる字も使用不可となるそうだ。中国では以前からこうした動きはあり、ゲームユーザーは「ますます規制が厳しくなるのではないか」と戦々恐々としていたものだが、いよいよ現実となってしまった。
また、「瘟疫(疫病)」といった単語など、新型コロナウイルスを想起させる単語は使用が禁止されるのだという。これはオンラインゲームのチャット機能も同様で、こうした言葉たちは「そもそも出現しない」ものとされている。
先日スクウェア・エニックスから発売された『ファイナルファンタジーVII リメイク』も、中国ファンは発売を待ちわびていたわけだが、どうやら厳しくなった規制に引っかかる可能性が濃厚で、発売が絶望的になってしまった。
日本では18歳未満のゲームの利用を原則1日1時間を上制限にするという、香川県の「ゲーム依存症対策条例」が記憶に新しいが、中国の制限はこんなものではない。
まず、未成年には平日プレイ時間は1・5時間、祝日は3時間のプレイ制限が課せられる。そして22時から8時まで専用サーバーの稼働が終了し、この10時間はそもそもプレイができない。
大手台湾メディアの『三立新聞台』はこの規制に対し「中国共産党がインターネット規制を非常に重視していることがわかる」と分析し、「この『鎖国』行為は中国ゲームユーザーが得るはずだった無数のプレイ経験を奪うのではないか」と懸念している。
『あつ森』ファンである筆者からすると、平日1.5時間、休日3時間というプレイ時間はどう考えても足りない。8000ベル(ゲーム内通貨)という高値買い取りが行われる「タランチュラ」を無人島で目一杯捕まえるには少なくとも2~3時間かかってしまうし、家具の整理や「島クリ」と呼ばれる開拓を行うだけで休日を費やしてしまった……というユーザーも多いはずだ。また、「自由に交流、創作する」ことが売りの本作にてチャットの禁止やマイデザインの規制をされてしまっては、プレイしている意味がなくなると言っても過言ではないだろう。
当然中国のユーザーからは絶望の声もあがっている。
4月10日、中国報道官の華春瑩(ホァ・チュンイン)はアメリカに対し、「いつでも中国においでください。あなたたちは街にいる誰とでも話すことができますし、自由を享受することが可能です」と発言したが、その数日後に今回のゲーム規制が言い渡された。諸外国からは、「自由(笑)とは?」「ネタかな」と乾いた笑いが届いている。
自由な無人島生活を営むはずが、このような形で「不自由」になるとは、なんとも皮肉な話だ。だがしかし、一度与えた自由を奪うような規制が長期的に見て中国にどんな影響を及ぼすのか。