
新型コロナウイルスの影響が如実に現れている業界のひとつに、飲食産業がある。筆者自身若かりし頃、飲食業界でアルバイト先に加え寝食まで世話になった身。ニュースなどを通じて伝え聞くその現状がとても心苦しくある。
一方で、最近では「ニューノーマル」という言葉が流行し始めている。新型コロナウイルスの影響で始まる「新しい日常・状態」という意味だ。とても曖昧模糊としていて、個人的にはあまり中身のない空虚な言葉だと思うが、ひとつだけ的を射ていると思える定義がある。
それは“「物理的空間の制約」を受ける日常・状態”が、すなわちニューノーマルであるというものだ。もう少し嚙み砕くと、「これまで使えたはずの空間が使えず、人と人の距離を保つ必要があり、移動も制限されること」が、我々の一般的な暮らし方(=ノーマル)になるという意味だろう。飲食店の現状に即して言えば、店舗に人が来づらくなる、来たとしても同じスペースに入れる客数は制限されるほか、海外や地方などから集客が難しくなるといった日常がニューノーマルといったところだ。
そして、そんなニューノーマルに対する飲食業の対抗策として盛んに叫ばれているのが、オンラインサービスの利活用(=デジタルトランスフォーメーション、DX)、そしてウーバーイーツなどITサービスの駆使だ。
ただこのような安易な“デジタル万能論”に根差した問題解決策に対して、苦々しく思う飲食業界関係者も少なくないようだ。コロナ禍にいち早く対応し、配達や弁当サービスで多くの注文を受けつけているA氏は言う。