ジャニーズの面々も趣向を凝らした動画を公開している(Johnny’s officialより)

 新型コロナウイルス感染拡大予防のために発令された緊急事態宣言は、コンサートの中止やテレビ収録の一時休止など、エンタメ業界にも大きな影響を与えている。そんな中、活況を呈しているのが芸能人のYouTubeデビューだ。

 タレント、芸人、俳優、歌手とさまざまなジャンルの芸能人たちが、この自粛期間中にYouTubeなどを利用した動画の配信を始めた。4月には女優の杏が、所属事務所の公式YouTubeチャンネルに反戦歌「教訓I」を弾き語りする動画をアップ。これが大きな話題になり、現在公開から1カ月で400万回再生に迫ろうとしている。

 また、それまでネット動画をあまり利用していなかったジャニーズ事務所も、ここにきてYouTubeをフル活用している。アイドルたちのコンサート映像を配信したり、木村拓哉やV6、TOKIOのメンバーがオリジナルの動画を制作し、ファンからも好評を得ているようだ。

 しかし、その裏では芸能事務所の苦労が見え隠れする。

中堅芸能事務所のスタッフはこんなため息を漏らす。

「うちはもともと動画配信は率先してやってきたのですが、新型コロナの影響で収録やライブがなくなると、『何か配信させてくれ』『ライブを生中継したい』などタレントからの要望が激増しました。ファンのために動画を配信することには賛成ですが、正直スタッフも手が回りきらなくなってきている。というのも、編集は全部こちら任せ。中には、『こういう字幕をつけてほしい』とか『音楽つけてほしい』とか、細かく注文してくる方もいます。タレントはYouTuberじゃないので、自分で動画編集できないのは仕方ないですけど……でも僕も動画専門のスタッフではないので、『早くして』と急かされると悲しくなりますね(苦笑)」

 もちろん外部の制作会社に依頼することもあれば、中には自ら動画編集をこなす芸能人もいるが、動画の編集経験もない素人同然の事務所スタッフに丸投げするパターンも少なくないようだ。

また、専用のYouTubeチャンネルを持っている芸人などは、すでに動画用の作家や撮影スタッフを抱えているが、そうしたスタッフを持たない事務所は四苦八苦しているようだ。

 さらに、大手芸能事務所スタッフは「YouTubeをやりたがる若い俳優には、ストップをかける場合もある」と語る。

「俳優さんたちも続々とYouTubeを始めているので、マネしたがる若手もいるんですけど『1回冷静になってくれ』とストップをかける場合もあります。こういう動画って向き不向きがあると思うので。『歌ってる動画をあげたい』とか言われても、キミはそんなに歌うまくないよね? 恥をさらすだけだよ? ってアドバイスすることも(苦笑)。タレントはやっぱり人に見られてなんぼの職業だし、ちやほやされないと気が済まない人が多い。

なのでコロナ禍で身動きが取れず、家でじっとしていなきゃいけないのがつらいんですよね。その気持ちはわかるんだけど、動画をやるにしてもちゃんと企画色を持たせなきゃダメだし、よっぽど自己プロデュースが上手じゃないと事故る気がするんですよね……」

 ちなみに自身で編集をしているか、スタッフに丸投げしているかは「字幕のフォントが有料フォントの場合はスタッフに丸投げパターンが多い」(前出・中堅事務所スタッフ)という。ファンサービスには一役買っているYouTubeだが、その裏で苦心しているスタッフもいるようだ。こんな時期だからこそ、エンタメ業界を陰日向になって支える裏方たちにも労いの言葉をかけたいところだ。