テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(5月17~23日)見たテレビの気になる発言をピックアップします。
平成ノブシコブシ・吉村「(リモート収録は)人によって戦力が違う」
2周目が大事、とよく聞く。
その2周目が大事。話題性だけでなく実力が評価されるターンに入ったときに、いかに”爪あと”を残せるか。それによってその後、テレビに定着するかどうかが左右される。ここをうまく乗り切らないと”一発屋”になる。そんな話を、若手から中堅にかけての芸人が語っていたりする。
で、芸能人ではないけれど、リモート収録もまた2周目に入った感がある。
最近では『笑点』(日本テレビ系)もリモートに切り替わった。流行が終わりかけたころに、林家木久扇が「PPAP」や「本能寺の変」を歌い始め(ちょっとリズムがおかしい)、流行が完全に終わってもしばらく歌い続けている(ずっとリズムはおかしい)。そんな『笑点』で取り入れられたのだから、これはもう2周目だ。
また、19日の『しくじり先生 お笑い研究部』(AbemaTV)も象徴的だった。
「(リモート収録は)人によって戦力が違うというか。持ってる機材の質によって優劣がついちゃう」(平成ノブシコブシ・吉村)
「リモートだと結構スベっても平気というか。逆に、これリモートじゃなかったら死んでたやろうなっていうの、何回かあります」(ニューヨーク・屋敷)
「(自宅からのリモート収録では)見せたくないものが見えちゃった演出みたいなのが、これからどんどん複雑になっていくと思うんですよ」(伊集院光)
最近、バラエティ番組に出る芸人たちが、自分たちの立ち居振る舞いを”テクニック”として語る企画が増えている印象がある。ダチョウ倶楽部がリアクション芸を解説付きで披露する、というネタをしていた時期があるけれど(熱湯風呂は3回目の「押すなよ」で押すとか、熱々おでんのコンニャクは大きめに切るとか)、それが番組でのパフォーマンス全体に広がった感じだ。
日中の帯番組やゴールデンタイムのバラエティ番組などに出演する芸人が、そこでの細かい技術や心構えを、深夜番組やネット番組などで語る。パフォーマンスを語るパフォーマンスが楽しまれる。そんな二重構造がある中で、リモート収録は早くも”リモートテクニック”や”リモートあるある”が披露される局面に入っている。目新しさが話題になる時期を過ぎ、この2カ月ほどで次のターンに移行している。
同番組の進行役であるオードリー・若林は、今回の企画の趣旨について、少し自嘲気味にこう語った。
「リモートを使ったさまざまなコーナーを実際にやってみて、みんなでどうやればいいのか、爪あとを残す方法を考えるという企画でございます。
2周目に入ったリモート収録。果たしてテレビの当たり前として定着していくのだろうか?
リモート出演の難しさに関しては、19日の『あちこちオードリー』(テレビ東京系)で若林が次のようにも語っていた。
「今このクイズはボケる感じなのか、当てにいく感じなのかが、人間が同じ場所にいないとわかんないね」
バラエティ番組でクイズが出た際、芸人たちが大喜利的なボケ回答を続ける場面はおなじみだ。早めに正解を出してしまった芸人に「もっと遊ばせろよー」と周囲がツッコむところまで含めてお約束。もちろん、いつまでもボケ続けるわけにはいかないので、ある程度の頃合いで誰かが正解を答えるのだけれど、若林いわく、そのタイミングがリモートだとわからない。空気が読めない。
「同じ現場だと空気ってあるわけじゃない。微妙な表情筋とか、目の輝きとかで、今この流れだなとか把握してんのかな? リモートだとわかんないじゃん」
これに春日が「リアクションがあるからじゃない?」と答えていた。番組内では「(お前が)リアクションを語るなよ!」と若林が春日にツッコんで笑いに変えていたのだけれど、なんだか本質的というか、日々のコミュニケーションがどうやって円滑に進んでいるかを言い当てているようにも感じる。私たちは他人の反応をその場で感じながら、自分が何を語るか(語らないか)をその都度選択している。このいつもの仕組みが、身体が別々のところにあるリモートでは働きにくいということなのだろう。
ところで、テレビでコロナ対応が図られてからよく見るのがフワちゃんだ。
たとえば、18日の『しゃべくり007』(日本テレビ系)はソーシャルディスタンス対応が図られ、一部の出演者は別室からのリモート出演になっていたのだけれど、フワちゃんはここでミキ・亜生が仲良くしている「亜生軍団」の一員としてスタジオに登場。くりぃむしちゅーの上田晋也の代わりにMCとして場を回し、そのうまくできなさや、強引に自分のペースに持っていく感じが面白がられていた。
その他、19日の『ウチのガヤがすみません!』(同)、21日の『ダウンタウンDX』(同)、23日の『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日系)、同日の『よなよなラボ』(NHK総合)などにも出演し、やはりインパクトを残していた。
フワちゃんがこのタイミングで引っ張りだこなのはなぜか? ひとつには、YouTuberでもある彼女は、自宅でリモート収録をする際、機材のセッティングなどに慣れている、ということがあるのだろう。
また、23日の『よなよなラボ』でフワちゃんは、自身のポジティブさの源泉を聞かれて語る。
「なんか最高なことがあったとき、女子ってさ、すぐにさ、『ちょっと聞いてくんない?』って言うじゃん、みんなに。『みんな聞いて』の心を忘れないことがすごい大事で」
フワちゃんはその「ちょっと聞いてくんない?」マインドで、人との距離を一気に詰める。バイクに乗っていて車にハネられても、「みんな聞いて」と病院のベッドの上で笑う自分の写真をSNSに載せる。
そんな、いい意味で空気を読まないパーソナリティが、リモート収録などで空気が読みづらいコロナ対応下の番組では生きているのかもしれない。
昨年、突如私たちの前に登場したフワちゃん。新型コロナウイルスの蔓延と前後してテレビ出演は2周目に入ったのではないかと思うけれど、なんだかテレビの当たり前として定着していきそうだ。