だがすでに業界では、この平均世帯視聴率というものから離れようとしている。いま重視されているのは“個人視聴率”だ。
これは2020年4月からビデオリサーチ社が始めた調査方法で、世帯内の4歳以上の家族全員の中で、誰がどのくらいテレビを視聴したかを示す割合。つまり、これまでは世帯というくくりだけで、どんな性別・年齢の人が見ているかあやふやだったところを、さらに細かく、どんな個人が、“視聴ボタン”を設置し、押すことでどれだけ視聴しているのかを調べられるようになったのだ。例えば、ある番組の視聴率を10軒の家で調査したとする。そのうち5軒で見られていれば世帯視聴率は50%となるが、同じ10軒に住む30人という個人の合計で見たときに、そのうち6人しか見ていなければ個人視聴率は20%になるというわけだ。
これまでの世帯視聴率では、人口が多く、テレビを見る割合も高いとされる高齢者層にターゲットを絞れば、高い視聴率を取ることができた。そのため、高齢者向けに懇切丁寧でわかりやすい番組が増えていたのだ。
ところがデータのリサーチと分析が当たり前になった昨今。スポンサー側からすれば、個人視聴率のほうがより、売りたい商品のターゲットに合わせた広告を打つことができる。そのためテレビ局も、ビデオリサーチの新たな調査に乗っかり、個人視聴率を重んじるようになった。
“半沢直樹の記事”も、よくよく中身を見てみると、申し訳程度に個人視聴率に言及しているものがある。最終の世帯平均視聴率が32・7%に対して、関東地区の個人視聴率は21・5%と、この開きを見ても、いかにこれまでの世帯視聴率が曖昧なものだったかがわかる。(ビデオリサーチ調べ)