写真/GettyImagesより

 新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動の停滞と雇用の悪化により、給与の減少など家計に大きな影響が現れているのか。そうかと思えば、その半面で2人以上の世帯では収入が増加し、貯蓄額も増加しているという“意外”な調査結果が、総務省の家計調査報告で明らかになった。

 6月2日に当サイトで配信した「厚生労働省、国民の給与8年ぶり減少の統計結果―コロナ禍の労働時間が反映か」では、新型コロナが賃金に大きな影響を与えていることをお伝えした。

 厚生労働省が5月28日に発表した2020年度の毎月勤労統計調査によると、新型コロナ感染拡大の影響が本格化した20年度の1人あたりの現金給与総額は、月平均で前年度比1.5%減の31万8081円と8年ぶりに減少したという。

 ところが、総務省の家計調査報告では、2人以上世帯の平均では、年間収入は634万円で前年比5万円(0.8%)の増加となった。

 世帯当たりの平均の貯蓄現在高は1791万円で前年比36万円(2.1%)増加となり、2年連続で増加。貯蓄現在高の中央値は1061万円と前年の1033万円から28万円(2.7%)増加している。年間収入に対する貯蓄現在高の比率は、282.5%と前年比で3.5%ポイント上昇した。

 年間収入は16年から5年間連続して増加、貯蓄現在残高も18年から3年連続して増加となった。

厚生労働省「新型コロナ禍で2人以上世帯が収入、貯蓄増加」発表の裏側 広がる格差と高齢者の実情

 2人以上世帯の54.4%を占める勤労者世帯は、年間収入が740万円で前年比4万円(0.5%)増加した。平均の貯蓄現在高は1378万円で前年比2万円(0.1%)の増加となり、中央値は826万円と前年801万円から25万円(3.1%)増加した。

 だが、2人以上の世帯の貯蓄現在高を階級別の世帯分布をみると、貯蓄現在高の平均値1791万円を下回る世帯が67.2%と約3分の2を占めており、貯蓄現在高では約3分の1を占める高額貯蓄残高の保有者が平均値を引き上げていることから、大きな格差があることがわかる。

 一方、世帯当たりの平均の負債現在高は572万円で前年比べ2万円(0.4%)増加した。年間収入に対する負債現在高の比率は90.2%と前年比0.4%ポイント低下した。

2人以上の世帯に占める負債保有世帯の割合は38.5%で前年比0.8%ポイントの低下だった。

 2人以上の世帯のうち勤労者世帯についてみると、負債現在高は851万円で前年比べ4万円(0.5%)減少した。年間収入に対する負債現在高の比率は115.0%と前年比1.2%ポイントの低下している。

 負債保有世帯の割合は54.3%で前年比1.0%ポイントの低下、 負債を保有している世帯に限ってみると、負債現在高は1569万円で平均値を下回る世帯が51.9%を占めた。

 では、負債の内容はどのようなものかを種類別にみると、負債現在高の90.6%を占める住宅・土地のための負債は518万円で前年と同水準だった。このうち勤労者世帯の住宅・土地のための負債は791万円で前年比7万円(0.9%)減少した。

 世帯主の年齢階級別に貯蓄現在高をみると、40歳未満の世帯が708万円と最も少なく、60歳以上の各年齢階級では2000万円を超える貯蓄現在高を保有していた。

 半面、負債現在高をみると、40歳未満の世帯が1244万円と最も多く、年齢階級が高くなるに従って負債現在高が少なくなっている。

 貯蓄現在高から負債現在高を引いた純貯蓄額をみると、50歳以上の各年齢階級では貯蓄現在高が負債現在高を上回っており、70歳以上の世帯の純貯蓄額は2173万円と最も多くなっている。一方、50歳未満の世帯では負債現在高が貯蓄現在高を上回っており、負債超過となっている。

厚生労働省「新型コロナ禍で2人以上世帯が収入、貯蓄増加」発表の裏側 広がる格差と高齢者の実情

 これをみると、高齢者家庭は十分な貯蓄を持ち非常に裕福に見えるが、一方で生活保護受給家庭の55.8%(91万1167世帯)も高齢者世帯だ。

 若い世代だけではなく、高齢者世代にも格差は広がっている。