片寄涼太(写真/永峰拓也)

――サイゾーでは過去に小林直己さん(EXILE/三代目 J SOUL BROTHERS)に村上春樹の小説について語っていただいたり、橘ケンチさん(EXILE/EXILE THE SECOND)に好きな本をうかがったりと、EXILE TRIBEの読書家の方に何度か登場していただいているんです。

 片寄さんも今回出された初の著書『ラウンドトリップ 往復書簡』(新潮社/小竹正人と共著)で、本はよく読むようにしていると書かれていました。

どんな本を読むんですか?

片寄涼太(以下、片寄) 昔は小説が多かったんですけど、ちょっと哲学的なものだったり、知識になるような話題の本も読むようになりました。最近だと『FACTFULNESS』(日経BP)なんかも読みましたね。勉強になって面白いなと思います。

 

片寄涼太純度100%! どこにも忖度なしに言葉を編み上げた「往復書簡」

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――『ラウンドトリップ』では、アドラーの心理学を説いた『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)に影響を受けたと引用もされていましたね。そういった硬めの本を読むようになったのはいつ頃からですか?

片寄 いつだろう……この仕事を始めて、二十歳超えてからかな? ちょっと興味が湧いて。自己啓発のジャンルにくくられるんですかね。そこに書いてあることをそのまま受け止めるというよりは、生きる術のヒントというか、「そういう考え方をする人もいるんだな」という安心感につながるなと思っています。型にハマらなきゃいけないとか普通でいなきゃいけないとか、そういう感覚を「そんなこともないんじゃない?」とちょっと楽にさせてくれるところがあると思っています。

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――かつてのインタビューを拝読すると、片寄さん自身、デビューしたての頃は「EXILE TRIBEっぽくない」「LDHっぽくない」と言われることがあって悩んだけれど、ある時から「それがいいんじゃないか」と思えるようになったそうですね。

片寄 そうですね。LDHという場所はある種の“一族感””軍団感”みたいなもので売っていて、その中で自分がどう個性を出していくのか20代前半の頃すごく考えていました。そういう部分を否定するわけではまったくなくて、でも人や作品との出会いによって自分自身の世界が広がっていったと思います。

「こういう世界もあっていいんだな」と、ひとつの価値観だけにこだわらずにやれるようになっていった部分がありました。

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ーー『ラウンドトリップ』の執筆についても聞かせてください。自分で文章を書いてみてどうでしたか?

片寄 ブログを書くくらいしか執筆ということをしてこなかったので、実質初挑戦です。最初は言葉が出てくるのにも時間がかかりました。でも最終的に本になる段階で、「まえがき」を書いたときはあっという間に書けるようになっていて。難しさも楽しさも感じられる貴重な経験でした。

――まえがきで「最初の頃の文章はなんかぎこちなくて、ちょっと固い印象で、いま読むのは少し恥ずかしい」と書かれていましたね。

片寄 読み返すと、最初のほうはいろんな部分でためらいがあったなと思います。気恥ずかしさもあったりして。でも書いていくうちにその気恥ずかしさがクセになっていきました。往復書簡の相手が信頼する小竹さんだったからこそ、やりとりの中で見えてくる自分自身があったんだと思います。さらけ出していく感覚があるというか。

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――書きながら悩んだ部分はありましたか?

片寄 単純に慣れていないので言葉が重複したり「これでちゃんと伝わってるのかな?」と思ったり、表現に悩まされましたね。

――書けないときは諦めていったん書くのをやめていたそうですね。

片寄 やめてました。文字数がわかるアプリで書いてたんですけど、1200字書かないといけないところを「まだ800文字か!」みたいになったりして。最初の頃は、膨らませるのは作業として苦労しました。でも書いていく中で、自分自身から出てくる言葉だったり喩えだったりに、自分で驚くこともあって。

――それは具体的にはどんな表現ですか?

片寄 この連載のことを「ちょっとした未来へのタイムカプセル」と表現している箇所があるんですけど、これを書いたときは自分で「そういう言葉が出てくるんだ」ってちょっと驚きました。そういうふうに覚えた表現の感覚から、歌詞だったり曲にできたらいいなと思ったりしましたね。

片寄涼太純度100%! どこにも忖度なしに言葉を編み上げた「往復書簡」

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――ネタで苦労した部分もありましたか?

片寄 コロナ禍の初期に始まった連載だったのでネタが少ない時期ではあって、「奇跡よ、起きろ」みたいに待っていたときもありました。そうやって待ってる感覚から生まれる何かを受け取るとか、発想の転換は必要でしたね。目の向け方によって、身の回りでもたくさん面白いことが起きてるんだと思えました。

片寄涼太純度100%! どこにも忖度なしに言葉を編み上げた「往復書簡」

――タクシーのエピソードが何個かありますよね。

運転手さんから区役所に行くんだと思われて、雰囲気を壊したくなくて話を合わせたせいで降りる場所を本来の目的地からちょっとずらしたというエピソードが、私は特に好きでした。

片寄 あー! 本当に、あれを表せる言葉ってないんですかね? あの現象をなんというのか、言葉が欲しい……。

――心理学用語で何かしらありそうですね。そのエピソードに続けて、「空気を読んでしまうところがあって、それがいいのか悪いのか迷ってしまう。ずっと悩んできたことだし、後悔はないですが」というようなことを書かれていたのも良いなぁと。

片寄 どっちやねんって感じですよね(笑)。

――そうやってぐるぐるするところが片寄さんらしいのかな、と1冊通して読んで思いました。

片寄 うーん、たしかに、なんか反芻して悩んでますよね。この本は、そうした葛藤みたいなものも赤裸々に感じとってもらいやすいものになったのかなと思います。僕自身も、そういうところを隠したいわけではないですし。むしろ、なんだろうな、テレビに出てライブでド派手な衣装を着てステージに立ってパフォーマンスしている人も“人”なんだな、って感じてもらえたらすごくうれしいなって思ってます。

 

片寄涼太純度100%! どこにも忖度なしに言葉を編み上げた「往復書簡」

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――たしかにそこはすごく感じました。

別のエピソードで、大通りでタクシーを待っていたら後から来た人に割り込み乗車された話がありましたが、「東京ドームで見たアーティストでもそういうことはあるんだなぁ」と。

片寄 そうなんですよ、「俺、東京ドーム立ってるのにタクシーとられるんかい! ちょいちょいちょい!」っていう。

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――もともとすごく言葉に興味があって、その選び方だったりそこから生まれる感情だったりに考えをめぐらせるタイプだ、と本書で書かれていました。その感覚は昔からですか?

片寄 ちっちゃい頃の男の子って、好きな女の子に思ってないことを言ったりして意地悪することがあるじゃないですか。それが「なんでなんだろう」って僕は理解できなかったんですよね。「好きならなんで好きって言わないの?」って。多分そこから「人は結構、思ってないことを言ってるぞ」って考え始めたんですよね。僕自身はあんまりそういうことをしないタイプなんだと思います。

 言葉に別の意味を含みたくない、すべて嘘なく、勘違いされないように言いたい。そう意識するようになりました。この業界に入ってからもそこは変わってなくて、その積み重ねがこういう文章になったのかなと思ったりしますね。今さらながら、その話も書けばよかったなって。

片寄涼太純度100%! どこにも忖度なしに言葉を編み上げた「往復書簡」

――お仕事においては、演技や歌で人が書いた言葉を口にすることもあれば、バラエティやライブのMCなど自分の言葉でしゃべる場面もあります。今回、自分で書くという経験をしたことで、言葉というものへのとらえ方が変わる部分はありましたか?

片寄 文章では比較的空気を読まなくてよかったからこそ、忖度なしにいろんなことを書けたんだろうなと思います。普段自分の言葉でしゃべる場面でも、たとえばライブのMCは流れもあるしファンのみなさんの雰囲気もあるし、そこで空気を読む部分があります。それは絶対必要なことなんですよね。バラエティも、短くしゃべらないとコメントとして使われなかったり、自分のテンポで話すことは難しい。今回、自分で考えて自分の言葉を組み上げるのはすごく楽しかったです。

――本書は小竹さんとの往復書簡という形式でしたが、完全にテーマがフリーのエッセイとなるとまた違った経験になりそうですよね。何か書いてみたいという思いはありますか?

片寄 サイゾーさんでありますか、可能性は?

編集 ……あります。

片寄 なんですか、今の間は(笑)。

片寄涼太純度100%! どこにも忖度なしに言葉を編み上げた「往復書簡」

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<プロフィール>
GENERATIONS from EXILE TRIBEのボーカル。2012年にデビュー。14年にドラマ『GTO』(カンテレ制作)で俳優デビュー。

ドラマ/映画『兄に愛されすぎて困ってます』『PRINCE OF LEGEND』映画『午前0時、キスしに来てよ』ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日テレ系)『病室で念仏を唱えないでください』(TBS系)などに出演し、俳優としても活躍の場を広げている。GENERATIONS、26枚目のシングル「Unchained World」が発売中。

『ラウンドトリップ 往復書簡』(新潮社)
片寄涼太・小竹正人/1650円(税込)/発売中

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