『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)公式Twitter(@kanjam_tvasahi)より

 
 11月28日の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)が放送したのは、RADWIMPS・野田洋次郎直撃インタビューだった。

 ネガティブなことを言うと、最近のRADにはいろいろなことがあった。

野田は7月のまん防発令中に“泥酔誕生日会”を開いていたし、8月には優生思想を思わせるツイートが炎上に発展した。9月には“お泊り不倫”が発覚したギター・桑原彰の活動休止処分が発表されている。

 今回のインタビューは11月23日発売のニューアルバム『FOREVER DAZE』の宣伝を兼ねた特集だろう。しかし、世の興味が音楽以外のところに注がれがちなタイミングで、RADの音楽のみにフォーカスする『関ジャム』に良心を感じる。ヒップホップ系野外フェス「NAMIMONOGATARI」の騒動が記憶に新しい時期にCreepy Nuts特集を組んだときもそうだった。

野田洋次郎、『RADWIMPS 4』以前と以後の違いを告白

 野田といえば、ファンや識者から“天才”と呼ばれるミュージシャンだ。しかし、余程の支持者でないとその実態を掴みそびれているのは事実。今回のゲストは福岡晃子、佐藤千亜妃、社長(SOIL&”PIMP”SESSIONS)の3人で、全員が野田の才能に敬意を評している。この特集を見れば、もしかしたら彼が天才と呼ばれる所以がわかるのかもしれない。

 まず最初に、番組はRADWIMPSを紹介するVTRを流した。その中にこんなナレーションがあったのだ。

「2016年、社会現象にもなった映画『君の名は。

』主題歌『前前前世』で一躍その名が日本中に知れ渡ることに」

 正確には、RADはそれ以前から有名。2006年リリース「有心論」は『COUNT DOWN TV』(TBS系)等で紹介されていたし、BANK BANDがカバーした。あと、彼らの出世作は2008年にオリコン1位を獲得した「オーダーメイド」と言われている。何にせよ、「前前前世」が5年も前という事実から時の速さに驚愕した。

 さて、今回のインタビューはスタジオにいるゲストのみならず、音楽プロデューサー・いしわたり淳治や川谷絵音から挙がった質問を野田にぶつけるという形式のようだ。例えば、こんな質問が。

「『前前前世』のような今までになかったワードはどこから生まれてくるのか?」
「数字の歌詞(『25コ目の染色体』『05410-(ん)』など)は一体どうやって思いつくんですか?」
「歌詞の発想はどこから生まれるのか?」

 これらの問いに一つひとつ答えた野田は、ふとこんな心境を漏らした。

「みんなすごい歌詞聴きますよね。俺、全然聴かないから(苦笑)。バンド始めたときはライブやりたいし、歌わなきゃいけないから、しょうがなくレコーディング直前に書いて歌うみたいな感じでした」(野田)

 思い出すのは、昨年11月21日放送『まつもtoなかい~マッチングな夜~』(フジテレビ系)に出演した甲本ヒロトの発言だ。

「若い人は歌詞を聴きすぎ。僕らアナログ世代は音で全部聴いてた。

だから、洋楽だろうが何だろうが全部カッコ良かった。意味はどうでもよかった。ロックンロールはものすごく僕を元気にしてくれたけど、元気づけるような歌詞なんか1つもないんだよ。関係ないんだよ、そんなこと。“お前に未来はない”とか歌ってんだよ(笑)。“No future for you”(『God Save The Queen』セックス・ピストルズ)とか。それ聴いて『よし、今日も学校行こう!』って思ったの。だから、関係ない」(ヒロト)

 確かに、歌詞の掘り下げ方、向き合い方は若い世代の側から強いこだわりを感じる。もちろん歌詞を軽視するわけではないし、特にロックミュージックはメッセージ性が大きな魅力の1つだ。でも、ミュージシャンが最も伝えたいのは曲であって文章じゃないはずだ。

 野田が作詞に悩み始めたのは、2006年リリースのアルバム『RADWIMPS 4 ~おかずのごはん~』以降だという。

「1枚目を出すとそれについてみんながいろいろ反応してくれたので、『わっ、歌詞ってすごい意味があるんだ』と思い、逆に怖くもなったりもしました。

『おかずのごはん』辺りまでは即興的にただ楽しくて、がむしゃらで、あとそこまで世の中からのグワァ~ってもの(反響)がなく、『何書いたっていいじゃん。別に大したこと言わないし、俺』っていうくらいの気楽さがあったんだと思います。『歌詞がいい』とか言われるようになって、ものすごい書けなくなりました」(野田)

 RADファンに言わせると、『RADWIMPS 4』以前と以後では聴こえ方が全然違うらしい。中には「『RADWIMPS4』までは耳にタコができるほど聴いたが、それ以降は……」と言う人までいる。

「『アルトコロニーの定理』(『RADWIMPS 4』の次のアルバム)までの3年半にアルバムが出なかったのは、『何を書いても違う』みたいな強迫観念みたいな。『歌詞にそこまで意味があるんだ』っていう恐ろしさっていうか」(野田)

「何書いたっていいじゃん」と思っていた人が書く歌詞と、「そこまで歌詞に意味があるのか」と思い直して書いた歌詞では、テイストが変わるのは当然だ。とはいえ、ここまで生みの苦しみを抱えているとは意外だった。てっきり、作詞が得意な人と思っていたので。

 面白かったのは、野田が明かした言葉の響きに対する意識である。

「母音、子音に関しては、イ段とエ段は明るい響きをまとっているので、明るいほうに持っていきたいときはそこら辺の段を使う。あと、破裂音や濁音は効果的に使うようにしています。『前前前世』はまさに最たるもので、エ段の濁音なので。

zezezeの歌詞は人の意識の中にすごく残るな、とか」
「母音uのウ、ム、ク、ス、トゥ、ツ辺りはどうしても暗い雰囲気になるので、そういうのはそういう場所に意図的に持っていったりとか。で、そういう暗いものはサビの頭では使わなかったり」
「『どうしてもこのサビはこの歌詞で言いたいんだよな』と思っても、響きが曇るものだと、俺は歌詞よりも音を優先させるのでその歌詞は排除されますね」(野田)

 野田はメロディを優先しながら歌詞作りに向き合っている。過去に同じことを言っていたのは、いきものがかりの水野良樹だ。2015年11月7日放送『バズリズム』(日本テレビ系)で、水野は「サビ頭の母音を『あ』にする」と明かしていた。「路上ライブでは一言目でお客さんの心を掴まなければならないため、1番強い音にする」が理由だそうだ。確かに、いきものがかりのヒット曲「ありがとう」のサビの詞は「ありがとうって伝えたくて」、「SAKURA」のサビは「さくら ひらひら 舞い降りて」である。

 メディア露出が少ない人だけに、貴重な機会だった今回の野田洋次郎インタビュー。野田もかなり丁寧に回答してくれたと思う。しかし、今回の企画形式だと突っ込みが少し足りなくなる印象。深く分析するわけでもなく、支持者がただただ“天才”野田洋次郎を褒め称える問答になった感があったのだ。「RADWIMPSはこういうバンドだ」と再確認するような内容に終始したというか。

 今夜放送『関ジャム』では、野田インタビューの続きが放送されるらしい。

予告映像を見ると野田が「小室哲哉」の名前を口にしており、そこからどんな話題へ発展していくのか注目したい。

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