どの町にもある昭和な町中華へ、町飲み大好きな玉袋筋太郎がブラリと訪れる『町中華で飲ろうぜ』(BS‐TBS)。3月19日、同番組にTOKIOの松岡昌宏がゲスト出演した。
これは、民放BS5局(BS日テレ、BS朝日、BS‐TBS、BSテレ東、BSフジ)が局の垣根を超えて共同制作する特別企画の一環。今年、同企画がコラボしたのはTOKIOだった。流れとしては、BS各局が誇る人気番組がTOKIOのメンバー1人に出演を打診。オファーを受けた側のTOKIOがその中から出演番組を選ぶというシステムである。
BS-TBSからコラボが提案されたのは、『吉田類の酒場放浪記』『町中華で飲ろうぜ』の2番組だった。注目は、番組側がTOKIOの3人のうち誰にラブコールを送るかだ。
「いろんなお店に行くと『松岡君来てたよ』っていう話を聞いたりするんで、すごい身近に感じてたんですね。松岡君、一緒に行ってもらえませんかね? 案内してほしいなと思います。一緒に乾杯したいですね」(吉田類)
「さあ、松岡君! 四の五の言わねえで俺と飲ろうじゃねえか。結構、飲ってるらしいじゃん? どっちが飲ってる野郎か、会って決めようじゃねえか。飲ってるって話なんだよ、噂は聞いてんだよ。あんたも俺の噂聞いてんだろ? よろしく、どうぞ」(玉袋)
酒界の2大巨頭からラブコールを受ける松岡。
結果、TOKIOが選んだのは『町中華で飲ろうぜ』であった。両方出てもよかった気がするが、エンタメ要素を重視しこちらを選んだのだろう。というわけで、番組スタッフと打ち合わせする松岡。
松岡 「(玉袋に)NGとかないんですよね? オフィス北野の話とかはしないほうがいいですか」
スタッフ 「OKです。逆にジャニーズの話はしないほうがいいですか?」
松岡 「全然大丈夫ですよ。ジャニーズの話でも株式会社TOKIOでも、何でも言っていただければ」
お互いを拾いすぎてうるさい玉袋と松岡
2人の待ち合わせ場所は東上野の下谷神社。ジャニーズVSたけし軍団の代理戦争というか、異種格闘技戦ならぬ“異酒格闘技戦”というか。先に到着した玉袋がワンショットでオープニングトークをしていると、後から小走りで松岡が登場。玉袋を素通りし、そのまま拝殿で手を合わせるという小ボケを披露した。このときのランニングフォームが若干“たけし走り”になっていて、さすがのきめ細かさである。
実は、両者は初対面ではない。
今回のロケでは三軒の町中華をはしごする予定のよう。番組に備え松岡は事前にサウナに30分入り、ちゃんと整えてきたというのだ。言うまでもなく、サウナと町中華の相性は抜群。さらに当日は京都へ行く予定だったが、酒飲みロケがあるため京都入りの日程を明日へずらしたそうなのだ。番組に出る以上はきっちり飲む、という心意気である。松岡がガチ勢すぎる。
というわけで、一軒目の町中華へ到着。なのに、2人がなかなか店に入ろうとしないのだ。貼り出されたメニュー表を見て「(マジックが)ホワイトボード用じゃない。
お店に入ると、当然まずはビールだ。瓶ビールを注文した2人は、グッと1杯。そして、玉袋はグラスを置いて一言、「Be AMBITIOUS」である。
玉袋 「やっぱ、新幹線が乗ってあの曲が流れないと。『いい日旅立ち』より、俺はあっちだから」
松岡 「山陰じゃなくて東海道のほうで。ありがとうございます。九州まで行かないバージョンで」
文字にすれば話が弾んでいるように見えるが、決してそんなことはない。初対面でお互いが気を使い、無言の間を避けようと矢継ぎ早の会話が続いてるだけである。特に、気を使っているのは玉袋のほうだった。
玉袋 「ジャニーズの人とたけし軍団は絶対交わらないと思ってて……」
松岡 「そんなことないですよ!」
そう、そんなことはない。TOKIOはビートたけしとたけし軍団がレギュラーの『スーパージョッキー』(日本テレビ系)に数度出演したし、伝説の「熱湯コマーシャル」にもチャレンジしている。
松岡 「我々が『スーパージョッキー』でお世話になったのは、光GENJIのバックでですよ。光GENJIのバックのほうが出てたと思います」
玉袋 「光GENJIと本番前にトイレでバッタリ会っちゃって。ローラースケート履いたままションベンしてんだ、あいつら」
松岡 「そうだ、脱げないんです」
玉袋 「あの頃さ、センサーで離れたら水が流れるシステムじゃなくて、ボタンを押さなきゃいけないんだよ。押したらスーって後ろに下がって(笑)」
ローラーを履いたまま小便して、水洗ボタンの反動で車輪が後ろに滑っていく“ローラースケートあるある”。素晴らしい鉄板ネタである。
ようやく一品目を注文した2人。松岡が頼んだのはメンマとウーロンハイだった。やたらメンマを食う松岡。『二軒目どうする?』を見るとわかるが、この人はいつもメンマを行く。
玉袋 「(女将に向かって)ちょっとカタめで」
松岡 「『カタい』って言うんですか!? 僕、(博多)大吉先生との番組で昔から『カッテぇ』って言ってたんです」
この番組では、度数が高いチューハイのことを「カタい」と言うのが常だ。元は内山信二がチューハイを飲んだ直後に「カテぇ」と口にし、それが玉袋に伝わり、番組おなじみのフレーズとなる……という流れであった。
松岡 「ごめんなさい、じゃあ俺です。俺の舎弟なんで、あいつ。だって、『兄貴、“カテェ”って言うんですか?』って(内山が)俺に聞いてきたんで」
玉袋 「ウソ! カテェ!? 孫だよ、俺(笑)。逆転したよ!」
衝撃の事実が発覚! まさかのルーツが判明だ。「カタい」と言い始めたのは松岡で、松岡→内山→玉袋の流れで「カタい」が伝承されていたらしい。ここで繋がるだなんて、世間は狭い。元祖「カタい」がゲストだった今回。まさに、酒呑みの輪である。
2人の繋がりはこれだけじゃない。
玉袋 「会社内独立というか、スゴいじゃない」
松岡 「先代のジャニー(喜多川)が生きてれば『それぞれで(ソロを)やります』って説明できたんだけど、先代がいなくなったんで。で、TOKIOって名前をつけてくれたのは先代なんです。だから、抜けて何かやるっていうのもあるけど、国分(太一)と城島(茂)に『屋号残そうかなって思うんだけどどうかなあ?』って話をしたら、国分が『じゃあ、会社作ろう』って」
自分語りを好まない玉袋だが、オフィス北野騒動のすったもんだから距離を取った彼も、一昨年4月30日に「TAP」(旧・オフィス北野)を退社した。互いに独立した者同士なのだ。あと、前社長を「先代」と呼ぶ松岡の言葉選びが、まるで石原軍団みたいだ。
それにしても、早々からのディープな話題。まだ一軒目なのに、飛ばしすぎではないか?
玉袋 「早ぇーよ!」
松岡 「僕、サイレンススズカなんです。逃げ馬。僕の1番好きな馬です」
玉袋 「俺も意外と吉岡稔真的な。『逃げるぜ』っていう(笑)」
サイレンススズカ(競馬)と吉岡稔真(競輪)で、“先行逃げ切り型”を自認し合う2人。競馬と競輪でわかり合えるのは素晴らしいけど、初っ端から酔いすぎだ。さらに、松岡が行った。梅チューハイを飲みながらコメントしたのだ。
「俺たちは、なんて素晴らしい日本人でしょうかねえ? 天皇陛下の誕生日の日(ロケが行われたのは2月23日)に、こんな日の丸のお酒をいただくなんて。石原(慎太郎)さんが喜んじゃって喜んじゃって、あの世で」(松岡)
いきなり際どい話題をぶっ込む松岡。やはり、酔っているのか? でも、顔色はほとんど変わっていない。ヤバいのは玉袋だ。明らかに、普段の一軒目のペースを越えている。彼だけニ軒目の酔い方をしているのだ。あともう二軒残っているのに、理性は保てるのか?
松岡「炒めものの汁が好き」レバニラ炒めの汁を飲み、玉袋を引かせる
次に2人が訪れたのは、浅草にある町中華だった。この店で松岡が注文したのはピータン。彼の好物だそうだが、そんな人はなかなかいない。ピータンをつまんで飲むのは、相当な呑兵衛である。
さらに、松岡は餃子も注文する。「町中華は町中華の食い方でいいんですよ」と、たっぷりのタレに餃子をジャブジャブ浸すのだ。
「僕は餃子に穴を開けて、ここに(タレを)吸わせるんです。猫舌なんで。そうすると熱いのもちょうど緩和されるし、この中にエキスが入るんです」(松岡)
餃子の穴にタレを吸わせるスタイルは、キムタク流である。それと同じ食べ方をしていた松岡。なんだかんだ、彼もジャニーズなのだ。そんな松岡が飲み会を開くとすれば、そこにいるのは生田斗真、風間俊介、相葉雅紀の3人だそう。
玉袋 「やっぱ、気を使う人が1番いいよね。チャチャチャチャって動ける若い子がいるじゃない。たぶん動いてたと思うの、俺も」
松岡 「自分もそうですね。だから、自分みたいな奴が1人いたら楽なんですよ。自分、先輩が好きなんですよね。『ウィッス!』って、僕は最高の子分だと思ってるんで」
両者とも、組織の中で鍛えられた苦労人だ。さて、この店の締めとして2人が注文したのは“伝家の宝刀”レバニラ炒めだった。また、これが美味しそうなのだ。レバーの色を見ただけで旨いのがわかる。54歳で少食の玉袋に比べ、まだ45歳の松岡はバクバクいく。それだけでなく、レバニラの汁まで飲む。
玉袋 「おっ、吸うねえ、また!」
松岡 「僕、炒めものの汁が好きなんです」
玉袋 「やるねえ。こりゃ、参ったよ」
レバニラの汁を飲むだけで爆上がりした松岡の好感度。ただ、冷静に考えるとヤバい。一日分の塩分を摂っている。もう若くないのに血圧が心配だし、見てる玉袋が引いている。
さあ、残るはあと一軒。だが、見るからに限界が来ている玉袋。もう解散したさそうだ。『町中華で~』が始まって以来、他人に飲酒のペースを握られたのは今回がおそらく初めてだろう。ガチの酒豪が相手だからヤバい。
最後の店は、またしても浅草の町中華。ここで松岡がとんでもないセリフを吐いた。
「もう、移動ないっすよね? じゃあ、飲みますよ。いいっすね?」(松岡)
ようやく、リミッターを解除する松岡。今まで本気を出してなかったのか、この人は! いわゆる「ビールは酒に入らない」というやつか? 酒の強さが圧倒的だ。
一方の玉袋は、ダウン寸前。顔面が青くなりかけている。目が据わり、口数が減り、進行が面倒くさそう。というか、それ以前に眠そうなのだ。“黒帯”を自称する玉袋が、アイドルの松岡に潰されるとは。思うに、彼は『町中華で~』通常バージョンの二軒までが限界なのだろう。シメではワンタン麺(麺抜き)を頼んでいたし、胃袋も酒量も限界である。
「(松岡は)やっぱ、引き出しが圧倒的。いやあ、スゲえやあ。やっぱ、お笑いなんかしょっぺえやなあ。しょっぺえ、しょっぺえ」(玉袋)
酔いすぎて自虐に走る玉袋。ベロンベロンにやさぐれている。ほとんど放送事故だ。こうなると、番組の締めの担当は松岡になる。
「スゴいと思ったのは、玉さんがどの店に行っても愛されていたことです。我々もそうなりたいし、俺みたいな呑兵衛はそうあるべきだし。勉強になりました」(松岡)
すっかり番組が乗っ取られてしまった。ベロベロだから玉袋に締めは任せられなかっただろうし、何か言ったとしても聞き取り不能でカットだろう。
というわけで、ロケは終了。なのに、まだ飲み続けている2人。玉袋に関しては、もはやただの酔っ払いだ。
玉袋 「俺はもう、ずっと(松岡を)若旦那だと思ってたの。ずっと若旦那なのね。それを全うしてる……若旦那だよね」
松岡 「城島だってもうちょいうまいこと言いますよ(笑)」
玉袋 「あのなあ、もう2度とテメエとは会いたくねえよ、この野郎」
松岡 「最高の褒め言葉いただきました」
玉袋 「やってられっか! 乾杯」
仲が良くて笑う。玉袋が言った「2度と会いたくない」とは「また飲ろうぜ」という意味なのだろう。
正直、普段の『町中華で飲ろうぜ』が持つゆるい雰囲気はなく、語りが多い松岡のスタイルは番組の趣と違ったように思う。でも、『町中華で~』と思って見なければ、これはこれで十分にアリ。あと、酔ってぶっ壊れていたものの聞き役に徹した玉袋も立派だった。18日放送『たまむすび』(TBSラジオ)で「どんな醜態を晒しているか、怖くて見られない」と彼は言ったが、そんな姿もBSならセーフである。
最後に交わした乾杯は、『二軒目どうする?』へ玉袋が出るフラグになるだろうか?