暢子(黒島結菜)は今回はバスから降りず、そのまま東京に行くようですね。でも東京のどこに行くの? どこで働くの? どこに住むの? それが語られないまま今週分が終わり、次週予告では「ここで働かせてください!」のセリフ。
第1週からの謎はそのままに、暢子は東京のどこへ向かっているのか?などの新たな謎がその上に積み重なり、とうとう沖縄編が一旦終わってしまいました。特に気になっていた、どこにいくら借りていてどう大変なのかわからなかった比嘉家の借金問題は、賢秀(竜星涼)が60万円=約1666ドルを送ってきたことで全部返せて終了、という扱いに。賢秀がどうやって東京まで行ったのか、喧嘩は強いけど素人だった彼が、数カ月でプロボクサーになってお金をそんなに稼げるのか、どうしてその大金を家ではなくて善一さん(山路和弘)に送ってきたのかなどがまた謎として増えてしまいましたが……。
今週良かったのは、石垣島の学校へ異動するという下地先生(片桐はいり)から歌子(上白石萌歌)への、音楽室での言葉。誰に何を言われても、自分の人生は自分のものだという教え。一見エキセントリック、けれど美しい所作に本質が見える下地先生だからこそ、とても説得力がありました。彼女は他の人にどう見られようとも、自分の芸術をなにより大事にしている。「あなたは、いつでもどこでもどうなっても、歌うことをやめてはいけません」――この言葉は、これからの歌子の支えになるんでしょうね。でも、こんないい話ができる下地先生が、賢秀の行為の償いとして歌子に歌わせたのは、納得いかなかったです。例えばあれが、彼女が自分から「私が歌うから、ニーニーを許してください!」と勇気を振り絞って頼んだのならわかるんですが。
先生に無理に歌わされる歌子のように、登場人物が自分から何かをするのではなく、他の人にやらされるとか、状況的にそうするしかないことが多いのが、ちょっと気になります。
とあるマスには「料理クラブの助っ人を頼まれ優勝、東京に行くと宣言、3つ進む」とあり、またサイコロ振ったら「おじさんに反対された、6つ戻る」みたいな感じ。他にも「好きな人が結婚すると聞かされた、スタートへ戻る」「詐欺師に騙される、900ドル失う」「ワープのマスに止まった、東京へ行く」など。「誰かに何かされる」「突然大きく話が飛ぶ」の連続で、登場人物がこつこつと自分の足で歩いていない、あるいは歩いている様子が見えないのが、すごろくっぽさなのかも。
東京でシェフになると暢子が決めて、その障害がおじさんたちの反対なんだとしたら、自分のやりたいことを見てもらうために、彼らを招待してフーチャンプルーを食べてもらったらよかったのでは。東京に、遊びでもいいから行きたいなら、働いてお金を貯めてからでもいいのでは。というか、彼女の東京へのあこがれって、そんなにたびたび語られていましたっけ? そういう「やりたいことを思いつく→その気持ちがふくらむ→努力する→できた」という流れがなくて、「やりたい→(サイコロ)→できた」のショートカットに思えてしまうのが、もったいない。
そして、沖縄の復帰前後の人々の暮らしについて、ほとんど語られなかったのももったいないなあと思います。教科書に載らないような生活者の様子を、ドラマでゆっくり見たかった……。
しかしサイコロは振られ、もう暢子は「東京」というマスに飛んでしまいました。幼い頃に東京から来ていた和彦くんとはあのあと文通くらいしていたのか、暢子を引き取るはずだった親戚とはどういう付き合いになっているのかなど、東京でも待っている謎は山積みです。
周囲は魅力的だけど…なかなか主人公に「ちむどんどん」できない『ちむどんどん』(第4週) 今週、見ていた人がいちばん「ちむどんどん」したのは、良子(川口春奈)の恋でも、下地先生(片桐はいり)と歌子(上白石萌歌)の追いかけっこでも、ニーニー(竜星涼)の寅さん...
■番組情報
NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス
出演:黒島結菜、仲間由紀恵、大森南朋、竜星涼、川口春奈、上白石萌歌ほか
作:羽原大介
音楽:岡部啓一、高田龍一、帆足圭吾
主題歌:三浦大知「燦燦」
語り:ジョン・カビラ
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:高橋優香子、松田恭典
広報プロデューサー:川口俊介、鈴木 葵
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/chimudondon