土屋太鳳が主演するフジテレビ系木曜劇場『やんごとなき一族』がSNSを中心にネット上で人気を集めている。視聴率面では苦戦が伝えられる一方で、「昼ドラみたいなドロドロがたまらない」と熱烈な支持者を増やしており、こうしたドロドロ路線が「フジドラマ復活」の鍵になるとの見方も生まれているようだ。
こやまゆかり氏のコミックを原作にしたこの連続ドラマは、下町育ちのヒロイン・佐都(土屋)が大富豪一家の次男・健太(松下洸平)と結婚し、健太の実家での猛烈ないびりに立ち向かうという“アフター・シンデレラストーリー”。
平均世帯視聴率は初回が7.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、第2話が6.1%、第3話が5.7%、12日に放送された第4話が5.3%と完全に右肩下がりで、かなり厳しい状況だ。
しかし、その一方で回を増すごとにネット支持は急伸。「予想より何倍も面白い! 昼ドラみたいなツッコミどころあって楽しくて好き」「ドロドロ具合にハマりそう」「ここまでぶっ飛んでると面白い!」などと評価する声が増加し、放送のたびにネット上での「実況」が盛り上がっているのだ。
視聴者を惹きつけているのは、往年の「昼ドラ」を彷彿とさせる女同士のドロドロのバトルだ。
セレブ一族の華やかな生活の裏では、マウントの取り合いや後継者をめぐる醜い争いが繰り広げられており、新参者で庶民出身の佐都は格好の標的に。そのいじめられ方が、水をかけられる、ホールケーキを頭に見舞われれる、スムージーをぶっかけられる……と、昼ドラ感全開なのだ。
特に一族の長男の妻・美保子を演じる松本若菜は「怪演」と呼びたくなるほどの強烈な演技を見せ、佐都へのクセが強すぎるいびりや態度の豹変ぶりは「松本劇場」として番組の見せ場となっている。さらに、一家の父・圭一(石橋凌)の愛人役にドロドロ系昼ドラの代表格『牡丹と薔薇』(同)で知られる小沢真珠が配され、これも「神キャスト!」と話題を呼んだ。
「視聴率的には苦戦しているものの、こうしたドロドロ展開は視聴者がTwitterなどでツッコミを入れながら楽しめるので、ネットとの相性がいい。昼ドラや大映ドラマのようなぶっ飛んだ演技、わかりやすい展開はフィクションとして割り切れるため、後味よく素直に楽しめるのも好印象です。また、土屋が演じる佐都は、サウナ室に閉じ込められても『庶民なめんなよ!』とハンマーで扉をぶち壊して脱出するなど、いじめに負けない気の強さがあり、彼女の“脱・優等生ヒロイン”的な演技も高評価につながったのかもしれません」(ドラマウォッチャー)
この木曜よる10時枠では、次クールの7月からはHey! Say! JUMP・中島裕翔が主演する『純愛ディソナンス』がスタート予定。
さらに、先述した『牡丹と薔薇』の再放送が土曜深夜の「フジバラナイト」枠で始まったり、昼ドラ枠の復活案が一部で報じられたりと、フジテレビがドロドロ系作品に活路を見出しそうとしているかのような動きが感じられる。
「フジは“昼ドラ”以外でも、沢尻エリカの主演で女たちがマウントを取り合う『ファーストクラス』や、上戸彩が不倫妻役に挑戦した木曜劇場『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』など、ドロドロ系ドラマに定評があった。最近はかつてフジが得意としていた王道ラブストーリーのウケが悪く、月9枠はミステリー路線へと切り替えつつありますが、一方でもうひとつの得意分野であるドロドロ系に力を入れているのでは。Netflixグローバルトップ10で非英語シリーズの中で世界7位にランクインするなど反響のあった篠原涼子主演の不倫ドラマ『金魚妻』も、Netflixとフジテレビの共同制作・企画でした」(前出)
フジがドロドロ路線に舵を切った背景には、日本でも大ブームになっている韓国ドラマの影響もありそうだという。
「韓国では『愛の不時着』などのロマンス系がヒットした一方、不倫や復讐を描いたドロドロ系ドラマがトレンドになっています。常軌を逸したいじめや復讐、突然の記憶喪失、禁断の愛、急に明かされる出生の秘密など、あり得ない展開が頻発するドロドロ系作品は“マクチャンドラマ”と呼ばれ、タワマンを舞台にした愛憎劇『ペントハウス』や夫に不倫された妻の壮絶な復讐を描く『夫婦の世界』などは社会現象となった。こうした韓国ドラマの流行を意識している可能性もありそう。また、『金魚妻』の好調もそうですが、Netflixでは韓ドラはもちろんのこと、『テレノベラ』と呼ばれるラテンアメリカ圏のメロドラマも台頭、注目を集めている。2015年からNetflixと組んでのコンテンツ作りを進めてきたフジだけに、そうした潮流を掴み、他局に先駆けて押し出そうとしているのかもしれません」(前出)
暗い世相をぶち壊すかのようなインパクトの強い「ドロドロ路線」はフジドラマ再興の起爆剤となるだろうか。
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