『CDTVライブ!ライブ!』番組公式サイトより

 先日、「LINEリサーチ」が高校生の好きな音楽番組を調査した結果を発表し、業界関係者から注目を集めている。

 LINE株式会社が運営するスマートフォン専用のリサーチプラットフォーム「LINEリサーチ」は、日本全国の高校1年生~3年生の男女に、音楽を聴く頻度や、音楽番組の視聴習慣について調査。

それによると、「音楽をほぼ毎日聴く」という高校生は全体の7割を超え、「週4~5日聴く」(15%)と合わせると、週に4日以上音楽を聴く高校生は全体の8割以上となった。

 特番をのぞく、レギュラーの音楽番組を見るかどうかについては、「まったく見ない」は全体の35%。見ている音楽番組については『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)が1位で女子高生が50%、男子高生が33%。続く2位は『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で女子高生が47%、男子高生が25%で、3位以下の番組はそれぞれ2割を切っており、この2番組が圧倒的に支持されていることがわかる。

「35年以上続く『Mステ』は日本の音楽番組の代表的な存在ですが、1993年から始まったランキング番組『COUNT DOWN TV』から派生して2020年から始まった新興の『ライブ!ライブ!』にすっかりお株を奪われてしまった。同じ生放送の音楽番組ですが、『ライブ!ライブ!』は、いわゆる“TVサイズ”ではないフル尺でのパフォーマンスや、特定のアーティストに30~90分ほどパフォーマンスさせる『フェス』を目玉として定期的に打ち出しており、アーティストの魅力を引き出すことに注力する姿勢が評価されています。

一方、放送時間帯を変えるなどここ数年いろいろと動きを見せている『Mステ』ですが、VTRを見るコーナーの尺が増えてきていたり、あまりリニューアルの方向性が支持されていない印象です」(テレビ誌記者)

  さらに注目すべきは「音楽番組を見る理由」の回答結果だという。

「男女ともに『好きなアーティストがよく出ているから』が1位で、特に女子高生は5割以上がこう回答している。ファンの多い人を引っ張り出せるかどうかがカギなのは音楽番組に限った話ではありませんが、『LINEリサーチ』によれば『音楽をほぼ毎日聴く』高校生も、音楽番組を定期的に見ている高校生も、いずれも女子のほうが多いという結果。つまり、『ライブ!ライブ!』のほうが10代女性が好むアーティストが多く出演している傾向にあると言えます」(同上)

 加えて、今の音楽番組はTwitterでの「バズ」を意識している面が強いのもポイントだ。

「『Mステ』にしろ『ライブ!ライブ!』にしろ、音楽番組の視聴率はどこもかなり厳しい状況にあるが、特に音楽特番はSNSでバズりやすく、トレンド入りすることも珍しくない。ツイート数などを調査する『ついラン』によれば、音楽特番は大抵の場合、関連ツイート数は10万を超え、その週のランキング1位となるほどの反響があります。

 そして、中でも“バズりやすいアーティスト”のキャスティングに力を入れる傾向は通常放送回でも強まっており、特にそうした傾向が顕著なのが『MUSIC BLOOD』(日本テレビ系)。毎回1組のアーティストにフォーカスする番組ですが、昨年10月頃からボーイズグループを中心にアイドルの出演が明らかに増えた。スマホに特化した短尺動画アプリ『smash.』がスポンサーに付いた番組で、番組と連動した『smash.』限定コンテンツなども展開されているので、有料の会員登録が期待できる、熱心なファンの多いアーティストをキャスティングしたいのでしょう」(同上)

 日本テレビは、2015年から『HiGH&LOW』シリーズなどでタッグを組んでいるLDHと共同で番組作りやイベント企画を行っているほか、深夜帯の音楽番組『バズリズム』(現『バズリズム02』)では『バズリズムLIVE』と題した音楽フェスも行なうなど、多角的なアプローチも目立つ。

「TBSも昨年9月、『ライブ!ライブ!』がLDHとのタッグで初のライブイベントを開催し、EXILEら出演のライブが東京ガーデンシアターで2日間にわたって行われた。今後音楽番組を続けていくには、こうした形で目に見える収益を上げていくことも求められるでしょう」(芸能事務所関係者)

 こうした中、「LINEリサーチ」のアンケート結果における『ミュージックステーション』の“凋落”は、キャスティングの“縛り”が遠因になっているのではないかと見られているという。(1/2 P2はこちら

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テレ朝は、ジャニーズJr.が出演する毎夏恒例のイベント『SUMMER STATION』を主催したり、『Mステ』とジャニーズJr.のコラボDVDを制作したりと、がっつりジャニーズ事務所と組んで稼いでいることもあって、『Mステ』ではジャニーズと競合となるボーイズグループは軒並み排除されてしまう。

『CITRUS』が日本人男性ダンス&ボーカルグループでは史上初のストリーミング累計1億回再生を記録したDa-iCEなどもいまだに出演できておらず、エイベックス側は熱心に売り込んでいるようだが、テレ朝上層部がジャニーズ事務所に気を遣って首を縦に振らないのが障壁になっているという話。

 そうした中で『ライブ!ライブ!』は、こうしたボーイズグループが活躍できる数少ないゴールデン帯の音楽番組となっている。JO1、INI、BE:FIRSTなど勢いのあるグループは増える一方で、自然と『ライブ!ライブ!』のほうをチェックするという若い層が増えているのでは。ジャニーズ絡みの部分を除くと、両者で出演者の顔ぶれにさほど違いはないですから。まぁ、それはそれで問題なのだが……」(前出・芸能事務所関係者)

 こうした“ジャニーズ縛り”のある番組作りが続いていることに『ミュージックステーション』内部でも“異変”が起こっているという話も……。

「『Mステ』スタッフ、特に若いスタッフのモチベーションは下がる一方だと聞く。

司会のタモリさんはこの8月に喜寿を迎えるが、いずれタモリさんが降板となれば、『関ジャム∞完全燃SHOW』進行の関ジャニ∞村上信五か、元ジャニーズの中居正広あたりを司会に据えて、よりジャニーズ色の強い音楽番組にリニューアルされるのでは、と揶揄されるほど」(同上)

 まだまだ視聴率面では『ミュージックステーション』のほうに分があるようだが、今後こちらも勝負がついていくのだろうか。

「ポイントとなるのは、YouTubeでのコンテンツ化や見逃し配信に対応していけるかどうか。権利処理の問題もあって日本の音楽番組はとにかく後ろ向きでしたが、『プレミアMelodiX!』(テレビ東京系)がTVerで、NHKの音楽番組がNHKプラスで見逃し配信されていることからもわかるとおり、別に不可能なことではない。『ライブ!ライブ!』は、K-POP系を中心にNiziUなどもパフォーマンス映像をYouTubeに上げているが、これはアーティスト公式チャンネルでの展開で、番組側のメリットは少ない。一方、『Mステ』は昨年9月からLDHのアーティストのパフォーマンス映像を『Mステ』公式YouTubeチャンネルにアップする動きを見せている。YouTubeを通して番組名を知ってもらえば、動画にないトーク部分などを見るために番組自体を見てもらうことも期待できます。

実際、話題のパフォーマンスなどはSNSなどで違法動画がかなりの再生数を稼いでいるし、配信まわりの対応がもっと進めば、音楽番組が生き残っていく道はまだまだ増えると思いますけどね。この部分に先に着手できたほうが“勝者”となるかもしれませんよ」(前出・テレビ誌記者)

 “ストリーミング1億回超え”や“TikTokで話題”のアーティストが音楽番組に出演する例は珍しくなくなってきたが、音楽番組そのものが時代の流れに沿ってアップデートしていけるのか。今後が注目だ。