ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)Twitter(@londonhearts_sp)より

 6月28日と7月5日の2週にまたがって『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)が放送したのは、「ダイアン津田・とろサーモン久保田のマジ喧嘩を仲裁」なる企画であった。


 津田と久保田は同期で、昔から仲が良い2人だった。だからこそ、吉本の先輩は2人の仲違いについて余計気を遣っていたと聞く。昨年末の時点で、極楽とんぼ山本圭壱が両者を和解させたい旨をYouTubeで口にしていたのだが、どうやら『ロンハー』が仲裁を買って出たようだ。

「津田 VS 久保田」は“ビジネス不仲”じゃないガチ

 両者ともに、クセの強いタイプだ。いくつかのトラブルの噂を、今まで耳にした。津田は平子祐希(アルコ&ピース)と会った際の印象について、「挨拶が雑だった。あいつ、後輩やんな?」とラジオで発言。しかし、後に平子のほうが先輩とわかり、さらに平子から「そんな挨拶はしていなかったと思うけど、そう受け取られたのなら申し訳ないです」とLINEで謝罪され、逆に津田が気まずくなるという出来事があった。一方の久保田は、オール巨人の著作への批判が記憶に新しいし、『M-1グランプリ2018』での上沼恵美子とのすったもんだも忘れられない。

 津田と久保田は、芸人としてほぼ同格である。とろサーモンは「M-1グランプリ2017」に優勝したタイトルホルダーだが、現在のメディア露出はダイアンが幾分勝っている印象。イーブンな関係性のため、両者の仲は余計にこじれている。

 2人の関係がこじれた発端は、YouTubeだ。まず最初に、久保田が自身のYouTubeチャンネル撮影のため津田の楽屋を突撃し、2人でトークを展開。このときの動画が高い再生数を記録したため、冗談半分で津田は久保田にギャラを要求した。その件は久保田が津田のYouTubeチャンネルに出演することで話はいったん落ち着き、ダイアンのゲーム配信番組にとろサーモンが出演。後日、自身のチャンネルで久保田はダイアンのゲーム配信番組のギャラの低さをネタにする動画をアップし、これを見た津田は「動画の内容にキレて久保田に電話する」というドッキリを敢行、その模様をYouTubeに流して相殺しようとした。しかし、久保田から「あれはアップするな」と連絡が入り、以来、2人は冷戦状態に突入……という顛末だ。

“芸能界とYouTube”のあれこれが、今回のすったもんだには凝縮されている。久保田の動画に津田が凸撃して抗議したくだりは、アンジャッシュ児嶋一哉のYouTubeチャンネルを揶揄した有吉弘行に児嶋がTwitterで抗議した件を想起させるし、YouTubeのコラボやギャランティーで揉める流れは「今まで広告なしでやってきたけど、勝手に広告が付くようになったのでYouTubeをやめる」と発表した所ジョージとは正反対の態度である。

 津田と久保田の仲違いに手を差し伸べようとしたのは、『ロンハー』が初めてではない。

「この前、『FANY』って番組で仲直りする企画やったんです。小杉(竜一)さんと麒麟の川島(明)さんがMCで、僕とあいつ(津田)がゲスト。川島さんに『仲悪いんやろ?』って言われたから、僕は“プロレス”でワーッとしゃべったらバッとウケたんですよ。でも、あいつ何も言わへんのですよ」(久保田)

 久保田の言い分は置いといて、注目は『ロンハー』より先に別の番組が同じ企画を行っていた事実だ。

水曜日のダウンタウン』(TBS系)における、おぼんこぼんの仲直り企画はひとつの究極だった。今年3月に彼らが上梓した自伝『東京漫才』(飛鳥新社)では、こぼんが国の指定難病「全身性アミロイドーシス」を3年前から患い、余命10年の宣告を受けていたことが明かされた。だから、余計にコンビ仲が修復されてよかったと思ったのだ。

『ロンハー』は、一昨年に狩野英孝と村上健志(フルーツポンチ)を取り持つ仲裁企画を行い、反響を呼んだ成功体験がある。2016年には、『にけつッ!!』(日本テレビ系)も田中卓志アンガールズ)VS中岡創一ロッチ)の公開仲裁放送を行った。

 役者界隈やミュージシャン界隈のトピックだと洒落になりにくいが、芸人間の仲違いは笑い話になりがちである。ヒコロヒーは「キンタロー。紺野ぶるまは信じられないほど仲が悪い」とネタにしていた。昨日、永野とお見送り芸人しんいちの共演を告知した『マルコポロリ!』(関西テレビ)の放送は、好事家から注目を集めている。

 ただ、洒落にできる程度の和解企画だと、結局はなあなあに収束する物足りなさも感じてしまう。おぼんこぼんの仲直り企画は、普遍的な“漫才コンビ問題”や娘同士の亀裂も含む、壮大な人間ドラマだった。狩野VS村上の対峙にしても、根底には互いの譲れない感情があった。

 今回の「津田 VS 久保田」は、平静を装っているものの収録中に大量の汗をかいていた久保田の様子から、“ビジネス不仲”ではなかったことが推測できる。そして、最終的には津田と久保田が歩み寄り、両者は仲直りをした。中堅芸人のテレビ対応として、その形に落ち着いたように見えたのだ。彼らの仲違いは、洒落にできるレベルだったということ。逆説的に、この程度の溝だからこそバラエティに昇華できたとも言えるのだが。

 特におぼんこぼん以降、芸人の和解企画で二匹目のドジョウを狙う番組が増えた気がする。でも、やるならなあなあで終わらせず、ガチンコでいかないと意味がない。芸人同士の不仲にイッチョカミしても、それは視聴者にすぐに見透かされる。最初から茶番を狙った、『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)の「お見送り芸人しんいち VS ZAZY」のほうがよっぽど潔い。何しろ、我々はおぼんこぼんの奇跡を見てしまったのだから。

 現在の“仲違い”の代表的な例を挙げると、「藤本敏史 VS バッファロー吾郎A」がお馴染みだし、最近は「竹若元博 VS バッファロー吾郎A」間の亀裂も囁かれている。あと、「千原せいじ VS なだぎ武」の共演NGも有名だ。

 どういう人選で各番組の「仲直り企画」が後に続くかは不明だが、この手の“仲裁もの”はバックナンバーが増えただけに、ハードルが高くなった事実を踏まえる必要があるように思う。仲違いし合う当人たちにテレビ対応させず、バッドエンドも厭わず、人間の抜き身の感情に迫る。今までの成功例は、それらのハードルを超えてきていたと思うのだ。

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