金曜ロードショー『キングダム』日本テレビ 公式サイトより

 今週の金曜ロードショーは放送当日7月15日に最新作が公開される映画の第一作『キングダム』を放送。本編は134分もあるのですが、なんと放送枠を45分も拡大して完全ノーカットでの放送です。

 連載16年を超える人気漫画の実写化作品。紀元前古代中国の春秋時代を舞台に貧しい奴隷の身分から、ひとかどの将軍として成り上がろうとする若者と弟に国を奪われた若き王、彼らに導かれ結ばれた者たちが目指す「夢」のために立ち上がる物語だ。

 原作漫画自体が(なにしろ中国の歴史ものなので)壮大なスケールの作品であり、スケールの小ささでは右に出るものがない邦画で実写化なんてできるのか? と疑問でしたよ。

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映画『キングダム』山崎賢人の「大声出して突っ込めばすべて解決」演技
映画『キングダム』山崎賢人の「大声出して突っ込めばすべて解決」演技
日刊サイゾー2022.07.15

 邦画ではこの手の史劇もの作品の映画化は大昔からあり、『日蓮と蒙古大襲来』(1958)『秦・始皇帝』(1962)といった、モチーフに作品が負けていないケースもあれば、『敦煌』(1989)『天と地と』(1990)などは大量の前売り券をさばいた宣伝の力によって半ば強引にヒットに結び付けたものの、出来も評価もさんざんで『蒼き狼 ~地果て海尽きるまで~』(2007)に至っては150円にまで下がったチケットがショップで大量に叩き売られ、それでも見向きもされないという地獄に陥っていた。

 そんな歴史を目の当たりにしてきた筆者は「せっかくの人気漫画も邦画で成功させるのは無理なのでは?」「中国や韓国で映像化した方がマシじゃない?」と思ったりしたのだが……。

 さて映画の舞台は紀元前245年、中国(当時はまだその国名ではない)の西のはずれ、秦国。孤児の信は奴隷として売られ、同じ身分の少年、漂と出会う。二人は貧しい身分に落とされながらも、長く続く戦乱の世では剣の腕ひとつで天下の大将軍として成り上がることができる、という大望を抱き修行を続けていた。成長した二人の前に秦国の王に使える武将、昌文君(高嶋政宏)が現れ漂(吉沢亮)に仕官の話を持ってくる。信(山崎賢人)も共にと願うも、仕官として採用するのは漂だけだといわれ、「お前もいつか王宮に来い」と言い残し二人は別れる。

 一月後、信の元に深手を負った漂が現れ、地図の元にいるある人物に会えと告げ、「お前と一緒に天下を取りたかった」と言い残し事切れる。

地図が示す場所に居たのは漂と瓜二つの秦王・嬴政(吉沢亮・二役)だった。王は弟の成蟜(本郷奏多)の裏切りにあい王位の座を奪われ、漂は王の影武者として命を落としたのだった。

 配下であった漂が命を落としたことに涙のひとつも流さない秦王に激昂する信は「共に天下の大将軍になろう」と誓った漂がなぜ、弟に裏切られるような秦王に忠義を誓ったのかわからず、流浪の旅に付き合う中で仇を討とうと企む。だが、再会した昌文君とその配下に、成蟜の手下に追われながらも兵を鼓舞し、自らが犠牲になって兵と秦王を救ったことに、漂は天下の大将軍になったのだと悟り、自分の夢を追いかけるべく秦王の下で成蟜と戦い、天下の大将軍にならんとする。

 物語の舞台が中国ということもあるが、日本だけの撮影ではこのスケールが出せないと判断したのか、中国ロケや向こうに巨大セットをつくって撮影されており、原作の雰囲気を再現することに成功している。

 監督の佐藤信介は『GANTZ』『図書館戦争』『アイアムアヒーロー』といった原作付きの実写化に多く挑んでおり、いずれもかつての邦画ではありえないような壮大なスケール感のある絵作りを成功させている。『キングダム』の監督に抜擢されたのも頷ける話だ。

 大平原をバックに大人数が激突する合戦シーンや、緻密に作り込まれたセットでの群闘シーンなどもかなりの迫力であり、橋本環奈や長澤まさみといったアクションの経験がそれほどなさそうな役者もそれなりに見えるのだから、大したものだ。

 撮影および役者陣もかなりの高水準のものを見せつけているのだが、それらのクオリティをひとりで下げているのが主演の山崎賢人で、これって「漫画のキャラがそういうものなんだからしょうがないよ」って言われるかも知れないんだけど、彼の演技は邦画にありがちな、一番よくない「登場人物がなんか大声で騒ぎながら突っ込んでいったらすべてが解決する」というやつ。山崎が演じる信はのちに秦の始皇帝を支える武将、李信になるという設定だから、こんな安っぽい描かれ方でいいの? 彼が大声で何かを叫べば叫ぶほど、画面がうすら寒くなっていくのだった。

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番...
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日刊サイゾー2022.07.15

 映画にはのちに重要人物となる将軍、王騎が出てくるのだが、演じた大沢たかおが漫画からそのまま抜け出てきたような演技で、この役をやるために役者になったのではないかと思わせるほどのなりきりぶりで出番こそ少なかれ、山崎賢人と並ぶと役作りの差が克明になるばかり。

 王騎は今回ゲスト的な扱いだったけど、次回の『キングダム2』では出番も多いはずなので……このままでいいのか山崎? 主役が脇に食われてどうする?

 一作目の映画は約56億円の興行収入で2019年の邦画実写ナンバー1の記録(全体では3位)で、15日公開のパート2は一作目を上回るヒットを目指し、予告編では物語の説明を一切放棄してミスチルの主題歌のサビ「生きろ」を延々と流して歌のイメージだけを刷り込ませようとしていて、映画の方向性がよくわかろうというもの。あとは山崎賢人が何かを叫びながら突っ込んでいる(やっぱり)。

 山崎賢人も頑張って「生きろ」と言いたい。

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