『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)公式Twitter(@kanjam_tvasahi)より

 9月18日放送の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)は、「ミュージカル特集」。6年前、2016年に同様の企画が行われた際のゲストは、山崎育三郎、井上芳雄、浦井健治の3人だったらしい。今振り返ると、めちゃくちゃ豪華な面々だ。

 そして今回のゲストは、竹内將人唯月ふうか、森崎ウィンの3人である。『関ジャム』がミュージカルを扱いながら新妻聖子が出演しないのはめずらしいが、意識的に若手俳優からゲストを選出したのだろう。

「急に踊ったり歌ったりする様を見ると、こっちが恥ずかしくなる」という理由で、タモリが“ミュージカル嫌い”を公言しているのは有名な話だ。筆者もそのクチだったが、映画『天使にラブソングを』を見てから、音楽と芝居の融合について少し考え方が変わった気がする。

井上芳雄に初舞台を踏ませたのは古田新太

 最初に紹介されたのは、井上芳雄に「ミュージカル俳優として最高のエリート街道を歩んでいる」と評価された竹内將人であった。英国留学中の時期のウエンツ瑛士と舞台で共演した俳優としても有名な存在だ。

 中学3年の頃、ミュージカル俳優の道に進むことを決意した竹内。それを父親に相談したら、「ミュージカル俳優をやるなら、東京藝術大学に行け」と言われたそう。しかし、東京藝大はそんな簡単に入れる学校ではない。

「でも、同じ福岡出身の井上芳雄さんも(東京)藝大出身ですし、芳雄さんのお父様が僕の幼稚園の副園長だったんです。なんとなく縁を感じて、『じゃあ、僕も藝大行きたい』となって」(竹内)

 竹内が、見るからに育ちが良さそうだ。さらに、こんな縁もあったという。『関ジャム』レギュラーの古田新太が、知られざるエピソードを明かした。

「芳雄が藝大のときに、舞台に乗せたのは俺やからね。『ピーター・パン』を新国立でやってて、芳雄が劇場係やってて。俺はフック船長で、海賊に『アイツをさらってこい!』って言って、芳雄を無理やりステージに引きずり上げて。それが井上芳雄やってん」(古田)

 古田の先見の明に驚くし、世界が繋がりまくっていてスゴい。なにしろ、古田は竹内が所属する事務所「キューブ」の重鎮なのだ。

 その後、東京藝大に現役合格した竹内は、さらに英国王立音楽院(大学院)へと進学した。

 ミュージカルの演出家は欧米からやってくることも多く、「英語を直接聞きたい」という欲求が生まれた竹内は、英語を習得するために語学留学を決意。その留学中にボイスレッスンを受けた講師が、なんと英国王立音楽院にミュージカル科を作った人物だった。

「『將人、頑張ってるからロイヤル(英国王立音楽院)受ける?』みたいなことをボソッと言われて。ちょうどその後、父がイギリスに来たんで『どう思う?』って言ったら『じゃあ、受ければ』みたいな感じですね」(竹内)

 正直、普通の人では彼のような人生は歩めないと思う。団地住まいから東京藝大に進んだ葉加瀬太郎の人生とも、竹内はまた違う。エリートのレベルが、まるで異なるのだ。ここまで環境に差があると、物語を見ている心境になってしまう。ミュージカル俳優を目指す若者が聞いてもあまり参考にならないだろうし、気が遠くなるような話だ。

 竹内が英国王立音楽院に進んだ頃、そこに同じ日本人はいなかった。もちろん、日本語を話す者もいなかった。そう考えると、竹内のガッツもスゴい。「ミュージカル俳優として成功したい!」という思いが、彼に多くの縁を引き寄せたとも言える。

 引っかかったのは、放送時間は実質45分しかない『関ジャム』の約25分間を竹内の半生の紹介に費やしたこの日の構成だ。ミュージカル作品の素晴らしさや技術論を聞けると思いきや、俳優の生い立ちだったり名門学校の指導法ばかりが紹介され、興味がいまいちかき立てられなかったのだ。

 続いては、唯月ふうかの紹介。彼女の芸能界入りのきっかけは、15歳の頃に受けたホリプロスカウトキャラバンだ。2012年の同オーディションで、彼女は審査員特別賞を受賞。この日のゲストであり、唯月にとってはホリプロの先輩にあたる足立梨花が、2012年のスカウトキャラバンを振り返った。

「ふうかちゃんの回はすごい覚えてて。『グランプリしか選ばれない』ってずっと言われてたのに、裏がざわざわしてて。なんだろうと思ったら、急に『審査員特別賞を作る』って言って。そもそも、『ふうかちゃんを(ホリプロに)入れてピーター・パンにしたい』って」(足立)

 ホリプロからデビューし、ミュージカルの道に進むのは、榊原郁恵の時代からの同事務所の王道パターン。後に、高畑充希や笹本玲奈もこのルートを辿った。唯月は9代目ピーター・パンを務めた2016年、稽古中に3メートルの高さから宙吊りの状態で落下する事故に遭っており、そういったさまざまを乗り越えてきた根性の人でもあるのだ。

 ここで、またしても古田が知られざるエピソードを明かした。

「またおっさん、ちょっとねじ込むけど。笹本玲奈を選んだのは俺やで、オーディションで。『ピーター・パン』オーディションやってん、そのときは。新しいピーター・パンを探せっていう全国オーディションで、そのときに笹本玲奈がおって。もう、抜群に歌が上手くて。みんなはちょっと高校生ぐらいのイメージだったんだけど、俺はそのオーディションにおって『いや、もうあの子やろ』って言うて、それで獲ったの」(古田)

“フック船長”古田新太による、若い才能のフックアップ。素直にしびれる逸話だ。こんな風貌だけれど、古田はミュージカル界の重鎮である。

古田 「(俺は)ミュージカルの人やねんて!」
ザキヤマ 「アルコール業界の人かと思ってたからね(笑)」

 最後は、森崎ウィンについて。スティーブン・スピルバーグ監督の映画『レディ・プレイヤー1』で準主役に抜擢された快挙が有名だが、現在、彼はミュージカル俳優として活動中だ。その転機は、宇多田ヒカル「First Love」の歌唱だった。

「僕が勝手に思ってることなんですけど……。NHKの歌番組でMay J.さんと歌う機会がありまして。正直、生放送でしたし、『どうしよう』と思ったんですけど『ぜひ、やらせてください』ということでそれを歌って。そしたら、『ウィン、歌えるんじゃないか』みたいになった……というふうに願いたいですけど(笑)。それで、『(ミュージカルの)オーディションを受けてみないか?』という話をいただきまして」(森崎)

 実際に番組では、森崎とMay J.の「First Love」デュエット映像が紹介された。おそらく、これは『うたコン』(NHK)でのパフォーマンスだろう。率直に、森崎は歌がうまい。キーが高く、ハイトーンが映える歌い手だと思う。6月12日放送『The Covers』(NHK BSプレミアム)で歌った竹内まりや「駅」も、森崎は素晴らしかった。

 そんな彼の歌唱の特徴について、竹内は「日本語で歌ってても英語のグルーヴ感がある」と評した。これには秘訣があるらしい。それを、森崎は「歌の地図を作る」と表現する。

「輸入もののミュージカルをやることが多いので、『英語の曲の良さを日本語で出せないか?』ということで起承転結をつけて。『ここは声を抜いて』『ここは声が出るけどあえてファルセットで歌おう』とか、そういうことを『地図を作る』という意味で、僕は“マッピング”って呼んでるんですけど」(森崎)

 まだ、経験したミュージカルは2本のみ。専門の勉強をしてきたわけでもない。なのに、“マッピング”というやり方を考案したのは偉い。計算づくの歌唱法で、彼は英語に近いグルーヴを出していたわけだ。

 さて、今夜の『関ジャム』が楽しみである。驚きの「松任谷由実特集」が放送されるのだ。山下達郎、玉置浩二、小田和正と、『関ジャム』の独占インタビュー企画はどれも最高だった。しかも、今回のユーミン特集はなんと2週にわたって続くらしい。次回予告の際には「YUMING SPECTACLE SHANGRILA」(ユーミンのコンサートツアー)の映像も流れていたし、期待は大きい。

 実は、10月4日放送『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)の「空耳アワーSP」に出演することも発表されたユーミン。タモリとは29年ぶりの共演だそう。そういえば、彼女は『ミュージックステーション』(同)にも出たことがない気がする。果たして今後、『Mステ』出演の可能性はあるのだろうか……?

山下達郎→玉置浩二→小田和正→松任谷由実と、レジェンドの独占インタビュー企画が続く『関ジャム』。この勢いのまま、いつか同じ趣旨で桑田佳祐についても掘り下げてほしいと願っている。

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