無事に航空学校を卒業した舞ちゃん(福原遥)。就職活動で苦戦するも、なんとか内定が出て、よかったよかった……となるはずが。
あの頃、景気があんなに悪くなるなんて、現実の私たちも思いもしなかったんだし、仕方ない……と思っていたら、悠人お兄ちゃん(横山裕)はすべて予測して、経済誌でろくろを回すポーズでインタビューされるような、時代の寵児になっていた! 私、彼はこの不況で大損して、渋々実家に戻ってくるんだとばかり思ってました。でもそれって、彼の失敗を望んでいたということなのかも。「大手の会社を辞めて投資家になるなんて、アリとキリギリスのキリギリスみたいなもんだ。冬の寒さにやられて泣きついてくればいい」と、コツコツ働く普通の会社員の道を自ら外れたお兄ちゃんが失敗するのを見ることで「ほらやっぱり」とスッキリしたかったのかもしれない……と、自分の偏見を映像にして見せられたような気がして、割とショックでした。
岩倉家がどんよりしている中、思いがけず時間ができた舞ちゃんは、足をくじいたばんば(高畑淳子)の手伝いのために五島を訪れ、ばんばの家には、移住体験のお客さんとして美知留さん(辻本みず希)と朝陽くん(又野暁仁)の親子がやってくる。お友達とうまく遊べず、学校にも行きたがらない朝陽くんからちょっと離れて縁側に座る舞ちゃん。朝陽くんは黙って赤い実を並べ続け、舞ちゃんは呪文のようにパイロットのルーティーンを声に出してイメージトレーニングし続ける。このちょっと離れているところが、いつも相手のことを考えて行動する舞ちゃんらしくてよかった。お互いの気配は感じるし声も聞こえるくらいの位置をキープして、べったり隣に座ったりせず、ジロジロ見たりしない。五島に滞在中の貴司くん(赤楚衛二)も加わって、3人の体の距離は毎日ほんの少しずつ縮まり、すぐ隣に座るまでになるけれど、お互いが大事にしてる心の範囲には踏み込まない。
その結果、縁側に集った「変人」たちは、それぞれの「好き」を自分勝手に追いかけ続ける。赤い実を並べて昼の星のことを考える朝陽くん。呪文のような言葉を唱えながら操縦のイメトレをする舞ちゃん。短歌のための言葉探しをしている貴司くん。ばんばの言葉「変わりもんは変わりもんで、堂々と生きたらよか」を大事に生きている3人。ああ、この縁側は今はない古本屋・デラシネですね。誰かをジャッジすることなく、距離を詰めすぎることなく、他の人の「好き」を尊重する場所。店長の八木さん(又吉直樹)が去りデラシネが無くなった時、とてもさみしかったけれど、デラシネとは決まった場所ではなくて、「私がここをデラシネとする」とみんなが思えば、ばんばの縁側も、他のどこでもデラシネにできるのかもしれない。いわばポータブルデラシネ。そして心に重い荷物を抱えている人が眠れないようなら「嵐の日にしかできないこともある」と静かに一緒にお酒を飲む時間を持てたら、私もばんばになれる……かどうかはわからないけど、それを目指すことはできる、かも。
と、ばんば・ばんばの縁側・舞ちゃんと貴司くんの良さをしみじみと味わえば味わうほど「柏木ぃ~」と言いたくなるのが困る。舞ちゃんからの電話には出ないけど自分からはかけて、相手が出るのが当たり前だと思ってるところとか。
『舞いあがれ!』柏木学生よりも大河内教官のほうが魅力的に映る…(第11週) 強風のため帯広空港に着陸できず、釧路空港へ飛ぶように指示された舞ちゃん(福原遥)。着陸の特訓を受けたり、熱で倒れていたために授業が遅れていたから、まだ2度目の単独飛行...
■番組情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス
出演:福原遥、高橋克典、永作博美、横山裕、高畑淳子、赤楚衛二、山下美月、山口智充、くわばたりえほか
作:桑原亮⼦、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number「アイラブユー」
語り:さだまさし
制作統括:熊野律時、管原浩
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐
プロデューサー:上杉忠嗣、三鬼一希、結城崇史
広報プロデューサー:堀之内礼二郎、齋藤明日香
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/maiagare