2022年12月28日に、『ローカル路線バスVSローカル路線鉄道 乗り継ぎ対決旅』(テレビ東京系)の第14弾が放送された。
路線バスだけを乗り継ぐ太川陽介率いるバスチームと、鉄道だけを乗り継ぐ“軍曹”こと村井美樹率いる鉄道チームが対決。
今回は、なんと4時間スペシャルという長丁場だった。というか、年末年始のテレ東が4時間特番の連続だった。
12月26日:『YOUは何しに日本へ?』4時間SP
12月27日:『ありえへん∞世界』4時間SP
12月28日:『ローカルバスVS鉄道乗り継ぎ対決旅』4時間SP
12月30日:『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ』4時間SP
1月1日 :『THEカラオケ☆バトル』4時間SP
1月2日 :『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』4時間SP
1月3日 :『家、ついて行ってイイですか?』4時間SP
相変わらず、無茶なテレビ局である。中でも、筆者が注目したのは『バスVS鉄道乗り継ぎ対決旅』だった。というのも、ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』に神父役で出演していた太川は、体調不良を理由に昨年12月24~25日の出演を取りやめているのだ。さらに、最近の対決旅シリーズで凡ミスを連発しており、一部からは老化も指摘されている。
ちなみに、今回のスタート地点は東大寺(奈良県)で、ゴールは彦根城(滋賀県)だった。都会と呼ぶほど栄えているわけじゃないが、決して辺鄙な場所でもない。つまり、“軍曹”こと村井美樹率いる鉄道チームのほうが有利だと予想できるわけだ。
今回のバスチームのメンバーは、太川、宇賀なつみ、岩尾望(フットボールアワー)の3人で、鉄道チームは、村井、貴島明日香、原西孝幸(FUJIWARA)の3人という顔ぶれであった。4時間SPだけあって、第14弾はゲストが豪華。
ただ、両チームともリーダーが暴走して変な空気になるのが、この番組の常のはず。賑やかしタイプの芸人を呼べばいいのに、岩尾&原西と根暗なタイプを呼んだのはなにか意図があるのだろうか? あと、宇賀以外の5人が関西出身という事実も見逃せない。
スタート地点である東大寺でオープニングトークを撮る両チーム。そんな6人を、大勢の修学旅行生と可愛い鹿が囲んでいるのはほっこりした。どうやら、修学旅行も復活してきているらしい。
フット岩尾は“蛭子能収の後継者”として適任か?
まず取り上げたいのは、両チームが擁する“足引っ張り枠”の仕事ぶりだ。
バスチームでいえば、岩尾である。おそらく彼は、『ローカル路線バスの旅』の太川の相棒・蛭子能収の後継者的存在として呼ばれていたはずだ。
序盤から、足引っ張り要員として岩尾はちゃんと仕事している。バスチームは地図を見ないと策が立てられないのに、いきなり「最近は小さい字が読めないので地図を読めない」と老眼をカミングアウトし、地図係を堂々と遠慮する無能っぷりだ。つまらない意地を張らず、老眼鏡を作ればいいのに……。
各チェックポイントでは与えられたミッションをクリアする必要があるのだが、第1チェックポイントが「奈良県大和郡山市豆腐町」にあると判明すると、「豆腐に関するミッションか?」と岩尾は予測。そして、「僕、(豆腐が)ちょっと苦手で……」と、驚くような偏食ぶりを告白するのだ。
結果、このチェックポイントで課せられたミッションは金魚すくいであった。しかし、それはそれで金魚をまったくすくうことができない岩尾。太川から、「目を見張るほど下手」とパワハラされる始末だった。いや、太川も太川で、そういうとこだぞ……。
続く第2チェックポイントのミッションは、日本茶カフェ「山本園」(滋賀県)で行う、抹茶グルメ(抹茶、抹茶のソフトクリーム、茶そばなど)の値段当てクイズだ。
これも、なかなかクリアできないバスチーム。結果、6品をはずして7品目でようやく太川が正解した。店を出た直後、意を決して岩尾は告白する。
岩尾 「ここだけの話ですけど、2カ月前くらいにあの店、ロケ行ってるんですよ、僕」
太川 「ウソ!?」
岩尾 「スイーツとかちょっと食べたんですけど、抹茶がこんな値段とかまでは全然覚えてなくて」
太川 「そうだったの!? 2カ月前に行ってたのに、役に立たねえ奴だねえ」
たしかに、昨年12月17日放送『フットマップ』(カンテレ)でフットボールアワーは山本園を訪れている。いよいよ、使えなさすぎる岩尾。ひょっとして、蛭子以上の役立たずぶりなのでは……。
第5チェックポイントのミッションは、高さ17メートルを誇る巨大アスレチックの制覇であった。
「僕、あれならできないと思います。時間かかってもダメかもしれないです。あそこに上がることが無理かもしれない。高さ17メートル言うてるやん。無理やって、そんなん」(岩尾)
芸人のわりに、仕事内容にNGを出しまくる岩尾。結局、このミッションでは御年63歳の太川が体を張った。一体、岩尾は何をしに来たのか……。
しかも、1秒でも早くゴールを目指したい終盤で、「膝がだいぶきてます。痛い」と、脚を痛がり始めた岩尾。「岩尾を置いていくわけにはいかない」と太川の気遣いでチームは岩尾を先頭に据え、岩尾の徒歩ペースでゴールを目指すことに。これがまた、牛歩みたいな遅さなのだ。
おそらく、芸人枠で歴代ワーストの働きぶりだった岩尾。大チョンボを犯すなど芸人として劇的展開を招くわけでもなく、地味な佇まいのまま密かにワースト……という存在感だったのだ。蛭子枠として、彼は少し弱いか?
FUJIWARA原西を「原口」と間違え続けるリーダー
一方、鉄道チームの“足引っ張り要員”は、何を隠そうリーダーの村井だ。
近鉄奈良駅に着いた一行は、「近鉄郡山駅」を目指すことに。なのに、切符売り場で「大和郡山駅」行きの切符を買おうとし、ずっと見つけられない村井。鉄道好きの“鉄子”としても活動する彼女が郡山を探せないのはポンコツすぎるし、関西人3人が「近鉄郡山駅」を知らないというのもスゴい話である。
リーダー・村井の迷走は続く。第1チェックポイントの金魚すくいで、「人魚すくい」とよくわからない言い間違えをしたのはご愛嬌。しかし、原西に声を掛ける際、「原口さん!」と名前間違いを連発するのは看過できなかった。原口はFUJIWARAではなく、モノマネ芸人のほうである。しかも、原西がいちいち修正しないので、エンディングまで原口呼ばわりが続いたのは悲劇だった。アンジャッシュ・児嶋一哉でおなじみ、名前を間違えるギャグみたいになっていたのだ。
名前を間違えている時点でチームワークなんて望めないし、「大和郡山」「人魚すくい」「原口さん」と、村井の口は滑りまくりだ。こんな感じで天然を連発しておきながら、張り切って仕切ろうとメンバーに発破をかけまくるから、チームは瓦解寸前。
第2チェックポイントの山本園と最寄りの信楽駅の間には8キロメートルの距離があり、往復すると16キロメートルもの距離がある。往路か復路、どちらかをタクシー移動にするのも手なのだが……。
村井 「16キロ全部歩きはしんどいですか?」
原西 「いや、任せます。でも、その……」
貴島 「……」
また、始まった。“軍曹”村井の暴走が、である。タクシー代の出費を気にする彼女の気持ちもわかるが、16キロなんてほとんどハーフマラソンだ。「お任せします」と言いながら「何を言ってるんや?」と、心の声が顔に書いてある原西。そして、内心ではキレていそうな貴島。このあたりで、原西は村井を見限っていそうな雰囲気さえあった。
結果、やはり徒歩で往復することを決めた村井。
貴島 「歩きのペースが速すぎて、ちょっとびっくりしてるんですけど(苦笑)。これで、(チェックポイントまで)2時間歩くんですもんね」
原西 「2時間半かかって、帰りも2時間半って言うけど、(合計で)5時間や! 普通に言ってはるけど。たぶん、タクシーやったら15~20分や」
貴島 「でも結局、(村井は復路も)『歩こう』って言い張ると思います」
鬼の居ぬ間に愚痴が止まらない2人。どうも、鉄道チームは軍曹以外の2人の結束が強くなる傾向がある。村井は村井で、“やる気だけある無能な上司”というキャラを確立してしまっているし。
さらに見ものは、各ミッションにおける鉄道チームの激弱っぷりだった。第2チェックポイントの抹茶グルメ値段当てクイズでは、あまりに正解を当てることができず、ついにはシンプルに「食べたい」という理由で「茶そば」を注文し始めた村井。開き直って晩飯モードに入り、ミッションに苦戦しながらご飯も食べるという裏技を仕掛けたのだ。
結局、3人はミッションクリアまで1時間40分も山本園に滞在した。晩飯モードを隠さない鉄道チームだったが、普通に夕飯をいただくノリでもそこまで長時間にはならないはずである。
鉄道チームの勝負弱さが最も表れたのは、2日目だった。
朝7時45分にホテルを出発し、猪突猛進でゴールを目指そうとする村井。そろそろ10時になろうかというタイミングで、原西が尋ねた。
「頭の中で、お食事ってあります?」(原西)
ブラック企業に勤める社員のように、朝食のタイミングを懇願する原西。
村井 「(次の)ミッションがもしかしたら食べ物ミッションの可能性かあるから」
原西 「わかりました。我々も人間なので、お腹も減りますので」
食事しない村井の判断は正しかった。第4チェックポイントは、琵琶湖のほとりに佇む高級焼肉店だったのだ。ここでのミッションは、それぞれが出された焼肉を食べ、食べた肉がどの部位かを当てるクイズである。
ここで、ことごとくバカ舌っぷりを露呈する鉄道チームの3人。ハラミを出されて「カルビ」と答えたり、ヒレを出されて「ロース」と答えるのは、まだ理解できる。問題は、カルビを出されたときの3人の回答だ。
原西 「カルビ」
村井 「ザブトン」
貴島 「ヒレ」
回答がひどすぎる。さすがに、「ザブトン」はないだろう。あまりのボケ回答に、筆者は村井に座布団1枚あげたくなった。
こんなふうに不正解を連発し、バスチームとの先頭争いに焦った村井は、我を忘れて店員さんに圧を掛ける。
「ドンドン、ドンドン焼きましょう! 次、焼いてます? ドンドン持ってきてくださいね。スピードアップしてドンドン」(村井)
「次、焼いてます?」と質問しているが、焼くのは村井の役目のはずだ。支離滅裂になり、彼女の悪いところが出てしまっている。
3人の迷走は止まらず、このチェックポイントで鉄道チームはバスチームに追い抜かれてしまった。それどころか、傍から見ていて一生当たらなさそうなのだ。金魚すくい、抹茶、焼肉と、ミッションがダメダメな鉄道チーム。いや、ここまでポンコツチームだとは思わなかった……。
スタッフも見るに見かねたのだろう。あまりに当たらないため、レバー、タン、シャトーブリアンと、露骨にサービス問題を出し始めるのだ。急にやさしい問題になる焼肉クイズ。これでも当たらなかったら、しまいにはミノあたりが出てきそう勢いである。
事実、レバーを前に微妙なリアクションを見せる貴島。どうやら、彼女は悩んでいるようだ。
村井 「これは、よく見るアレですよ」
原西 「中華でもメジャーなのありますよね」
村井 「なんか、ニラなんかとねえ(笑)」
やりたい放題の村井。連想ゲームだったら違反と判断されるようなアウトなヒントを出す彼女であった。
ミッションといい、乗り継ぎといい、グダグダの極みを見せた鉄道チーム。チームワークの弱さも見ていられない。道中、貴島がチームからはぐれるトラブルがあった際、村井はこんな弱音を吐いた。
「こんなにひどい回はなかなかないですね(苦笑)。すべてが思い通りに、何もうまくいってないですね、今回は」(村井)
自らを棚に上げ、メンバー批判をし始める村井。貴島が横にいるのに、言ってはいけないセリフだ。というか、旅の不調を人のせいみたいに愚痴っているけれど、軍曹本人だってかなりやらかしてるんだけど……。
そんなズンドコの末、ついにゴールである彦根城に到着した鉄道チーム。ここで3人を出迎えたのは、ご当地キャラだった。
「あっ、せんとくん!」(村井)
せんとくんではなく、ひこにゃんだ。城好きタレントとしても活動しているはずが、ひこにゃんを間違うという失態を犯す村井。
こんなグダグダ旅だったのに、なんと第14弾は鉄道チームの勝利に終わった。ほぼノーミスで、あんなスムーズだったバスチームが敗北を喫した理由は、今回のルートそのものである。ズバリ、鉄道チームに有利だったのだ。
そりゃそうだ。そもそも、ゴールの彦根城近くには彦根駅という最寄りの駅がある。このエリアで鉄道チームが本気を出せば、バスチームにはハナっから勝てない勝負だった。ミッション失敗しまくりの鉄道チームが勝つというのも、また無情だが……。
岩尾にとっても無情だった。この番組で彼が使える人材なのか試す目的があったはずの、今回のキャスティング。なのに、ギャガー・原西がボケを封印するほど村井が天然を出しまくり、相対的に岩尾のキャラが弱く見えるというコントラストに陥ってしまっていた。たしかに岩尾は蛭子っぽいが、先代と比べたらやっぱり弱いか。
まだまだ太川のリーダーシップと、蛭子の幻影から脱することはできず。そろそろ蛭子だけでなく、太川の後継者的存在も見つけなければならない頃合いなのだけど……。