しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)Twitter(@shikuzirit)より

 1月3日の『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)であるが、放送前から神回を確信していた。今回、講師として登場したのは峯岸みなみである。

 ワクワクしかしない人選だ。まず、彼女は頭の回転が速い。加えて、AKB48の卒業メンバーがゴチャゴチャしているタイミングで、峯岸が『しくじり先生』に出るというのも申し訳ないが面白すぎる。さらに、生徒側には元AKBの横山由依とHKT48の矢吹奈子がいるという座組。直の後輩の前で事の顛末を話すというのも、ヒリヒリするシチュエーションである。

 峯岸が姿を現すと、レギュラー陣から歓声が起こった。

吉村 「ついに!」

澤部 「最終回だ!」

若林 「しくじってるっけ?」

「しくじってるっけ?」は無理がありすぎる。ハライチ澤部佑が言ったとおり、本当に最終回でもおかしくないキャスティングだ。ある意味、ラスボス的存在というか。

「実はですね、『しくじり先生』の先生側のオファーはかれこれ10年ほど前から幾度となくいただいていたんですけど、当時はAKB48というアイドルグループに属していましたので、まだ語るには早いのではないかということで、延びに延びてこの日を迎えました」(峯岸)

 AKB在籍中にオファーを出した番組側もどうかしている。というか、あれから10年という事実に震えた。今回の『しくじり先生』が、この時点でもう面白い。

峯岸の飲み歩きエピソード「バーで居合わせた方が後日逮捕された」

 峯岸が振り返るのは、2013年1月に起こしたしくじりである。

「スキャンダルが報道され、坊主頭で号泣謝罪」

 繰り返すが、もう10年も前の出来事だ。わざわざ、掘り起こす必要はない。でも、本人は「10年いろいろあって、ここに笑って立てている自分が、どう頑張って今こうやって過ごせているのかを皆様にお伝えしたい」というモチベーションを持っているらしい。

澤部 「ご主人(東海オンエア・てつや)に言ってるの?」

峯岸 「はい。“『しくじり先生』やってくる”って話はしました。“ついに?”って言ってました」

「しくじり先生やってくる」(峯岸)「ついに?」(てつや)という夫婦の会話。夫もわかってるリアクションだ。

 しかも、彼女のしくじりは1つだけではない。現役アイドル時代、夜の街での遊びはたびたび報じられていた。

「例えば、六本木のクラブで誕生日会が行われたVIPルームに顔を出してスクープされたりとか、バーで居合わせた方とその場で話しただけなのに、その方が後日逮捕されたりとか」(峯岸)

 なんて、エピソードなのだろう。というか、そんなことあったっけ? こっちはすっかり忘れているし、坊主頭の衝撃でかき消されていたはずが、自分で蒸し返していく峯岸のスタイル。しかも、どちらも2019年の出来事だ。号泣謝罪(2013年)より後にやらかしていたという事実が注目に値する。完全に悪癖を絶つのは、やはり難しかったか。

峯岸 「よくあることですよね? 飲んでた方が逮捕されるって」

澤部 「ないないないない!」

 そんなに頻繁にはないと思う。さっきから、峯岸が予想より深く踏み込んでいる。

オードリー若林がアイドル番組で行う“格差いじり”は、是か非か?

 ここから、峯岸は“しくじり坊主”になるまでの経緯を振り返った。13歳のときにAKBの1期生オーディションで合格した彼女。しかし、デビューから2~3年は「まったく陽の当たらないバックダンサー生活」だったという。

 とはいえ、2008年には小嶋陽菜高橋みなみとユニット「ノースリーブス」のメンバーに選ばれた彼女。ここから少しずつバラエティ番組に呼ばれるようになったが、そこで峯岸は“ブスいじり”を受けるようになってしまった。

「バラエティ番組に出ると、毒舌な方に『お前はブスだ』って言われたり、私を雑に扱った後に人気メンバーを丁重に扱うような“格差いじり”をやられたり。『これが求められていることなのか』と自分に言い聞かせてはいたものの、心の中では泣いていました」(峯岸)

 このへんは、モーニング娘。のバラエティ番組の出方の名残りを感じる。今、例えば乃木坂46には絶対やらないやつだろう。「これはおいしいポジションなんだ」と思い、嬉しく思った時期もあったが、数年後に彼女はこんなことに気付かされた。

「若い頃に受けた『ブスいじり』は、じわじわとボディブローのように効いてくる」

 当時は「テレビに映れた」「笑ってもらえた」という嬉しさから自分を保てていたが、数年後、彼女は自分のことを「私ってブサイクだな」「自分はアイドルに向いてないんじゃないかな」と思うようになっていた。その根源にあったのは、かつて受けた“ブスいじり”である。

 これがまだ20代前半の経験だったら割り切れたかもしれないが、峯岸がノースリーブスでデビューしたのは16歳の頃。自我がまだしっかりしていない10代の子が、演出とはいえ自分の存在を軽視され続けたら、心にダメージを負うのは当然だ。貶されているのに「おいしいと思わなきゃ」とスイッチを変えようとするのも、余計につらかったと思う。

峯岸 「ちなみに、若林さんや澤部さんはアイドルグループの番組のMCをやられていますが、メンバーを特別扱いしたり、そういう笑いはやってませんか?」

若林 「メチャメチャやってるよ、俺。メチャメチャひいきしてるもん」

峯岸 「それはよくないです。それは数年後、効いてきます」

若林 「いや、『数年後、効いてこいや』って思ってんのよ。だって、視聴者に向けてやってんだもん、こっちは。それでギャラもらってんだから。だから、ひいきはするけど『君は退がってて』とかやりますよ」

峯岸 「それは、『退がってて』って言われた子は、港区で薬漬けになっちゃいます」

「ブスいじりはボディーブローのように効いてくる」はわかるが、「ひいきされなかった子は薬漬けになる」の切り返しがすごすぎる。なぜ、急に港区で薬漬けになるのか? 言葉のチョイスがエグすぎるし、あたかも自分が薬漬けになったみたいな言い分だ。

 あと、峯岸と若林の討論(?)について。ひいきする若林の現行犯が見つかったような展開であり、「テレビに映れているから」を大義名分に“ブスいじり”を肯定する若林がパッと見はズレているように見える。

 ただ、日向坂46の冠番組『日向坂で会いましょう』(テレビ東京系)での若林の司会術を見るとわかるが、彼はひいきはすれども容姿いじりをしたことはなかったはずだ。「君は退がってて」と言われるメンバーも「退がってて」と言われたくて若林と絡んでいるし、峯岸の言う「ひいき」と若林の言う「ひいき」は内容が別物と把握する必要がある。若林に関しては、まさに彼が言ったとおり、全員にシュートを打たせるための「ひいき」だ。それどころか、正味の話、MC・若林は“富田鈴花びいき”とも言えるはず。逆もまた真なりというか。

 あと、“ひいきされないポジション”にいた峯岸がショックを受けた要因は、「AKBでは自分が1番」と思っていたバラエティのシマに、後輩の中から指原莉乃という存在が出現、ブレイクしてしまった事実が大きい気がする。

 つまり、語るには一筋縄ではいかない問題なのだ。

峯岸みなみは本当に人気がなかったのか?

 峯岸が17歳の頃、AKBは「ヘビーローテション」を大ヒットさせた。この曲のMVで、峯岸はソロショットが0秒だったそう。こう言うと散々な扱いだったように受け取られがちだが、彼女はそもそも選抜に選ばれているのだ。非選抜から比べると、雲の上の存在。ソロショット0秒のメンバーなんて、他にも山ほどいたし。

 注目は、HKTのセンター・矢吹と峯岸の絡みである。

峯岸 「奈子ちゃんはわからないのか、この気持ちが」

矢吹 「ちょっとごめんなさい、わからなかった……」

 矢吹が峯岸をエグり、格差を見せつけたようなやり取りだが、正味の話、世間的な認知度や需要は圧倒的に峯岸のほうが上だろう。

 でも、それが峯岸にとってはジレンマだった。彼女を苦しめていた要因として、「知名度の割に人気がない」という境遇があったようだ。

「名前は知られてるのに握手会にあんまり列ができなかったり、それがリアルに見えるのが日々つらかったですね。『私のバラエティでの頑張りって何になってるんだろう?』って」(峯岸)

 正直、握手会人気は握手会人気でしかなく、芸能界で生き残れるか否かとは別の話なのだが、当事者・峯岸はこの現実に食らってしまった。その流れの最たるものは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』の映画化だ。そもそも、作者の岩崎夏海は「この作品のヒロインのモデルは峯岸みなみ」と公言していたのに、映画化するにあたり主役に選ばれたのは前田敦子だった。

 生徒側にいる宇垣美里に、峯岸は質問した。

峯岸 「宇垣さんは、『知名度があるのに、私意外とモテないな』という思いをされたことはありますか?」

宇垣 「あ~、でも、モテようと思ったことがないので」

峯岸 「……」

澤部 「モテちゃうから」

宇垣 「そうですね」

峯岸 「ちょっと、生徒って今から替えたりできますか? 共感してくれる人が少なくて」

 ルッキズムやアイドルビジネスの構造について踏み込んでいる、今回の『しくじり先生』。しかし、生徒役にルッキズムをものともしないエリートを配したことで、番組そのものにメタ的な“ブスいじり”が発生しており、見ていてなんとも言えない気持ちになった。

 というか、峯岸は本当に人気がなかったのだろうか? 2012年のAKBは、まさに絶頂期。同年にリリースした「フライングゲット」のヒットにより、総売上枚数は1315.5万枚に到達。この時点で、モー娘。の総売上枚数1180.8万枚を抜き去り、女性グループ初の2年連続レコード大賞受賞という偉業も成し遂げた。しかし、当時の峯岸は「私は何も貢献していない」と感じていたらしい。

「神7と呼ばれるメンバーたちがAKB48を引っ張ってくれているのを中にいると強く実感していて、『自分1人いなくても、AKBはレコード大賞を獲れたんだろうな』って。『私って貢献できてないな』と思うようになっていました」

「この人たちに食わせてもらってるんだって思いもありました」(峯岸)

「自分がいなくてもグループは回る」は、まさに一般の企業に務めるサラリーマンと同じ心境だ。

 ちなみに、「フライングゲット」の頃に開催された総選挙の順位を確認すると、峯岸は松井珠理奈の次に位置する15位にランクイン。神7には入れずとも、実は人気のあるメンバーだった。そもそも、ノースリーブスに抜擢された事実がすごいことだ。さらに、峯岸のファンであった東海オンエア・てつやと結婚しておきながら、「人気がなかった」と言うのも自虐しすぎな気もする。

「神7のメンバーがソロの仕事で大活躍していたとき、20歳になった私にはこんなオファーが増えていきました。六本木・西麻布界隈の怪しい夜のお誘い」(峯岸)

 どんなオファーなんだ、それは。話の展開が一気にキナ臭くなってきた。

若林 「1番最初の西麻布・六本木は、どういうふうに行ったの? 誰かに誘われたの?」

峯岸 「そうです。今はもう(タレントを)やめちゃってる、ちょっと芸能の女の子の友だちに。西麻布のバーに行ったとき、見た目はすごい若いけど意外と年齢いってるようなお兄さんがいらっしゃって。『港区のわかんないことをこの人に聞いたら、全部教えてもらえるから』的な、“みんなのお兄ちゃん”みたいな」

若林 「そんな、インフォメーションみたいな人がいるの!?」

峯岸 「いるんですよ。その人と連絡先を交換すれば、毎日『今日、飲んでるよ』みたいなお誘いがきて、行くと芸能人に会えたり」

 リアルな話である。つまりガーシー的な人がいたのだろう。というか、周辺人物から勝手に暴露されるのではなく、自ら言いにいく峯岸のスタイルが心配だ。ガーシー的な人と連絡先を交換していたとバラしているし、別に時効でもないような気がするのだが……。

 悲しみのステージは続く。飲みの場で峯岸はチヤホヤされるわけでもなく、“飲みの席を盛り上げるピエロ”的な役割を担わされていたそうなのだ。

「アイドルだし、芸能界じゃないところに行けばチヤホヤされるのではないかなと思って行ったんですけど、六本木・西麻布には一般の名の知れない綺麗な女子がいっぱいいるんです! これは、私も盲点だったんですよ。どんな職業をしているのかわからない、綺麗で可愛い子が飲みの席にはたくさんいました。結果、私はチヤホヤされませんでした」(峯岸)

 すごい現実だし、峯岸が自ら“ブスいじり”をしているようにも受け取れた。そりゃあ、金持ちの集まりなら相応の美人は周りにいるだろう。というか、その人たちは一般というよりギャラ飲みを生業にしている女子たちという気がする。まさに、闇の天下一武道会だ。

 では、峯岸はどんなふうにピエロを演じていたのか?

澤部 「ピエロっぷりはどういう感じなの?」

峯岸 「歌ってましたねえ。AKB48ヒットソングメドレー、歌ってましたね(笑)」

吉村 「営業じゃん!」

 プライベートでも、AKB48を背負って歌っていた峯岸。「港区からの夜の誘い=タダの闇営業」という、逆キャバ嬢みたいな現実があったわけだ。

「私は『飲み歩いていい思いをしている』と思われてるかもしれませんが、特にいい思いはしてないです」(峯岸)

「神7に食わせてもらってる」という認識もつらかったが、西麻布で遊ぶようになってからの話はもっとキツい。じゃあ、もう行かなければいいのに……。

「結局、(西麻布では)楽しいこともないし、別にチヤホヤもしてもらえないし、『違うな』と思うんですけど、不思議と夜は足が港区に向かってるんですよ」(峯岸)

 中毒患者のようになっていた峯岸。今回の『しくじり先生』が、ほとんど「芸能界の闇の入り口講座」になってしまっている。

坊主頭での号泣謝罪でアイドル界の流れは変わったか?

 生徒側のメンバーも、この話に無関係ではない。峯岸が飲み歩いていた頃、港区ではノブコブ吉村に、渋谷では澤部とよく遭遇していたそうだ。

澤部 「渋谷の居酒屋で(峯岸を)よく見て。ベロベロでそのまま寝ちゃって、居酒屋で泊まるみたいな」

峯岸 「そうですよ。モテてたら店で目が覚めることなんてないんですから」

澤部 「たしかにね! いわゆる、お持ち帰りみたいなのがないわけだもんね」

峯岸 「みんな帰っていくんですから、モテる子は。私はいっつも起きたら居酒屋で」

澤部 「本当、掘りごたつの下のところに入っちゃって寝てるみたいな」

 現役アイドルだったのに、起きたらいつも居酒屋だった峯岸。そりゃあ、自己肯定感が下がるってものだ。でも、お持ち帰りされていなかったら坊主にはならなかったはずだが……。

 そして、2013年1月。彼女が20歳のときに、峯岸のスキャンダルは報じられた。

「スキャンダルが出るとグループを辞めるメンバーがほとんどでしたが、私は心の底からこう思いました。『絶対にAKB48を辞めたくない!』」

「『AKB48のメンバーじゃない自分には価値がないのではないか』という思いから、AKB48を絶対に辞めたくないと思いました」(峯岸)

 そして、峯岸は坊主頭になって号泣謝罪する動画を公開した。「神7に食わせてもらってる」という思いで自己肯定感を下げ続け、そのメンタルが契機となり、夜遊びを繰り返していたら、ついにはこういうことになってしまった悪循環が、見ていて不憫だ。

 峯岸の坊主姿を見たときはドン引きしたし、なにより秋元系のアイドルグループに怖さをしみじみ感じたものだ。今の坂道系メンバーに関する報道と比べると、たいしたスキャンダルでもない。独身の若者同士が恋愛していただけなのに、当時のAKBにはそこまでしなきゃいけない空気感が確実にあった。「スキャンダルを起こしたらクビ」、それがあの頃の処遇のデフォルトだったからだ。つくづく、閉ざされた世界である。

峯岸 「私が気がおかしくなってああいう行動に出たと思われる方もいると思うんですけど、私はいたって冷静に自分で頭を剃りました」

横山 「相談とかしなかったんですか、誰にも?」

峯岸 「相談はしなかったですね」

 あくまで独断で勝手に取った行動、自分1人の範囲の責任……という彼女の口ぶりだが、件の謝罪動画はAKB48の公式YouTubeチャンネルで発信されている。メンバー1人の意思で勝手にYouTubeを更新できるわけがなく、そこには大人も絡んでいたはずだ。個人的には、かなりモヤっとくる説明だった。

矢吹 「私はグループ(HKT48)に入る前だったので、小学校で『あの動画、見た?』みたいに話題になってて。ずっとAKBのファンだったので、『そこまでしなきゃいけないの?』という気持ちで見ていました」

峯岸 「そういうふうに思わせたかったわけじゃなかった、っていうのが正直なところで。『そんな(坊主)にしなくていいのに』みたいな、すぐ明るい方向に持っていけるのかなと。そういう思いがあったので、あんなにたくさんの人を泣かせてしまったり、悲しませたり、ショッキングな出来事として報道されたりっていうのは、正直、想定外の出来事でした」

 あの動画に映る峯岸の雰囲気は、軽く受け止められるようなものではなかった。明らかに傷ついていたから、我々は引いてしまったのだ。

 さらに、ここから事態は大きくなる。なんと、世界中のメディアが大騒ぎしたのだ。「武士道の精神?」(アメリカ CNN)「おぞましい」(イギリス BBC)「セックススキャンダルに巻き込まれている」(中国 環球時報)などなど、件の動画について各国の媒体は騒ぎ立てた。

峯岸 「まさか、こんなことになるとは思っていなくて。自分だけの問題ではなくなってしまって」

若林 「でも、峯岸さん1人のせいじゃないよね。坊主もあり得る空気ではあったじゃん。やっぱり変なんだよ、海外から見たら。やっぱ、変なんだと思うよ」

 当時のAKBに異様な空気感があったのは間違いない。そして、この出来事を経てアイドル界は少し変わったと思う。今もまだ運営がうやむやにしている「恋愛禁止」問題へのカウンターの芽はわずかに生まれ、世間と業界の流れは演者を守る方向に少しずつ動いた気がするのだ。

 騒動後、峯岸はAKB48研究生へ降格処分を受けた。

峯岸 「10代のフレッシュな、『これからアイドル、頑張るぞ!』という研究生たちの中に、坊主になった大先輩が降ってきたわけですから。研究生としても、研究生を応援してくれているファンの方にとっても、かなり重大なニュースになってしまいました」

横山 「私は、みぃちゃんがウィッグを被ったりとか、研究生公演のために演目を覚えたりとか、今までの活動の仕方が変わっても頑張っているのを見てたので、『AKB48に対する思いがあるんだな』っていうふうに見てました」

峯岸 「本当、研究生のファンからしたら、野に咲く花畑の中にゴミがあるみたいな」

澤部 「誰も言ってないよ、そこまで(笑)!」

峯岸 「それぐらいのことだったんです! スキャンダルの女がいるっていうことは、本当にそれぐらいのことで」

 この期に及んで自虐がすごい峯岸。横山がフォローしたのに、それを上回る自己肯定感の低さがつらい。もともと低かったのだろうけど、あのスキャンダルが決定打となり、彼女の自己肯定感は本当に低くなってしまった。
 
 しかし、昇格するために一緒に頑張っていた後輩たちといつしか絆が芽生えた峯岸。2019年、27歳になった峯岸は「楽しいと思えるうちにAKB48を卒業しよう」と決意、卒業を発表した。同時に、彼女はこんなことを自らに課した。

「卒業公演まで、夜の街に行かない!」

若林 「これは、坊主の後も西麻布・六本木には行ってるの(笑)?」

峯岸 「まあ、『後』と言うと語弊があるんですけど、(坊主にした)直後は行ってないです」

若林 「そこ、重要だよね(笑)」

吉村 「だって、2013年に坊主でしょ? で、2019年の卒業までの間だよね、若様が聞いてるのは。6年間」

峯岸 「あ~、鋭い質問ですね」

 鋭くないよ! 

峯岸 「え~と……そうですね。やっぱりですね、“港区の魔力”はそんな簡単には」

若林 (爆笑)

峯岸 「本当に怖いことなんですよ! これはもう、笑わずに」

若林 「いや、笑うって!」

峯岸 「こんなことがあったら、二度と行かないって思うじゃないですか? 私も思ってたんですけど、髪の毛って生えてくるじゃないですか。徐々に生えてきて、普通にいそうなショートカットの女の子になったときに……ちょっと、行っちゃったんですよね」

若林 「行ってんじゃん!」

 謝罪したあと、あまり間を開けず、結構早い時期に西麻布へ繰り出していた峯岸。髪が戻り、またしても港区の魔力にやられてしまったらしい。楽しくなかったはずの港区に足が向いてしまうのだから、「魔力」とは言い得て妙だ。まるで、ドラッグをやめられない人の話を聞いてるみたいな。一時、峯岸について週刊誌が「会いに行けるアイドル」ならぬ「呼べば来る女」呼ばわりしていたことを、ふと思い出してしまった。

「あの、誤解しちゃいけないのは、六本木・西麻布のすべてが悪いわけじゃないじゃないですか? 私も、坊主後の港区はそんなに荒れてなかった自負があるんですよ。ちゃんと、席について飲んでましたし」(峯岸)

「席について飲んでた」って、なんなの!? “坊主前”の飲み方がどれだけ荒れていたか、逆に窺い知れる。

 卒業を決めてからの彼女は「卒業公演までは港区に行かない!」と心に決め、いわゆる禁酒宣言をブチ上げた。そして、ここでコロナ禍が訪れる。自動的に、卒業公演の日程は1年2カ月延期となった。

 つまり、彼女は1年5カ月もお酒を飲めなくなったのだ。ちょっとの間、禁酒すればよかっただけなのに可哀想に……。そういえばこの頃、峯岸が『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー2020』(フジテレビ系)で「卒業公演が延びてお酒が飲めない」と生電話していた肉声を、筆者はしっかり覚えている。あれはまさに、峯岸みなみのハイライトだった。

 そんな日々のなか、峯岸はTwitterで「今日はお酒を飲みませんでした」と毎日ツイートし続けるようになった。当時、筆者は峯岸のツイートを見ながら「そういうことじゃなくない?」と首をひねったものだ。なるほど、彼女の「お酒を飲みませんでした」は「今日は西麻布に行きませんでした」の意味だったわけか。

「それをやっていたら、アルコール中毒患者の方からフォローされるようになりました。『峯岸が頑張ってるぞ!』という感じで、『僕も頑張ります!』みたいな」(峯岸)

 AKBファンに向けていたつもりが、なぜかアル中の希望になっていた峯岸。彼女の禁酒ツイートを見ながら「これは、どこに需要があるのか?」と筆者は懐疑的だったが、しっかり需要があったわけだ。

若林 「このとき、ストレス大丈夫だった? 禁酒期間にバラエティで2日連続うまくいかないとかだったら、どうやってストレス解消してたの?」

峯岸 「禁酒の時期はダメだったことにもちゃんと向き合って、反省を生かして、次の準備もできるという。『人生においてとても大事な時間を私はすべて港区に溶かしていたんだな』っていうことに、禁酒期間で気付けるようになりました」

「人生を港区に溶かしていた」、なかなかのパンチラインだ。いや、「溶かす」ってギャンブラーじゃないんだから。というか、峯岸みなみの『しくじり先生』の後半部分が、ほとんど断酒会みたいな内容になってしまっている。

 

 そんなこんなで、峯岸の授業は終了した。

若林 「峯岸先生、何か言い残したことはありますか? やっぱり、つらい時期と六本木・西麻布っていうのはバチッとはまっちゃうんですかね?」

峯岸 「そうだと思います。弱ってるときに抱きしめてくれるような幻想があるんですね、あの街にはね」

若林 「ちょっと待って、魅力を語っちゃってんじゃん(笑)」

『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系)の西麻布編みたいな締めコメントで幕を閉じた、今回の授業。正直、面白すぎた。

 神7と言われた面々の今の活動は、全員が順調というわけではない。芸能界から消えた人がいれば、トラブルに巻き込まれ泥沼に陥った人もいる。峯岸のように、バラエティにメインで呼ばれているほうがすごいと思うのだ。卒業後もピンで出られている時点で、なんだかんだ需要はあるし。いろいろ揉まれたからこその、峯岸の良さが今回は出ていた気がする。

 

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