舞ちゃん(福原遥)の家でよく出てくる、ダイニングのテーブル。おいしそうなごはんを囲んで、いつも笑顔の家族が座っている場所……のはずだけど、そこに悠人(横山裕)はいただろうか。
あの4人がけのテーブルに、お兄ちゃんの席はあったのかな。病弱な妹のことや工場のあれこれで忙しいあまり、頭が良くてしっかりした兄の手をつい離しがちになった両親の気持ちもわかる。でも、熱を出して苦しんでいる舞ちゃんだけでなく、お兄ちゃんだって不安で寂しい子どもだったのに。テーブルで舞ちゃんについて話し合う両親の様子を見て、自分も話したい気持ちを飲み込んで立ち去る後ろ姿を、お父ちゃんもお母ちゃんも知らない。成長した悠人とめぐみさん(永作博美)が向かい合って座ったのは、あの家族のダイニングテーブルではなく、悠人の家の、大きくて高そうな、でもなんだか触ると冷たそうなテーブルだった。そして親子としてではなく、投資家と経営者として、だった。お母ちゃんを助けてと情に訴えてお金を出してもらうのではなく、経営を勉強した社長として、投資家の悠人にビジネスの話をするめぐみさんはかっこいい。だけどいつか、あのダイニングテーブルで、家族3人が冗談を言ったり後悔を伝えあったりお父ちゃんの思い出話をしたりする姿が見られたらいいな、悠人がちゃんと「子ども」としてお母ちゃんと向き合う日がくるといいなと思ってます。
このドラマは「その人の居場所」の話がたくさん出てきますよね。朝陽くん(又野暁仁)とお母さん(辻本みず希)が居場所を見つけた、五島。そして子どもの頃の舞ちゃんと久留美ちゃん(山下美月)と貴司くん(赤楚衛二)が集まっていた、古本屋デラシネ。特に貴司くんにとってデラシネは、大人になっても、会社での辛さを癒すための大切な場所だった。店主の八木のおっちゃん(又吉直樹)が店を閉めると言った時「おっちゃんがデラシネを貴司くんに譲ったら、彼は居場所と仕事をどちらも手に入れられてハッピーなのに、どうしてそうしてくれないんだろう」と不思議に思っていた。その意味が、今ならわかる。あの時の貴司くんにデラシネが託されたら、彼は鍵をしめて誰も入れず、ひとりでとじこもるだけだっただろうなあ。おっちゃんはデラシネを、いつでも開かれている「誰かの居場所」にしたかったし、つらい時期を超えて、人の心にしみる短歌が作れるようになった今の貴司くんならそれができると思って、鍵を渡しにやってきた。おっちゃんありがとう。今もいい風に吹かれて放浪しながら、詩をつくっているのかな。
と、登場人物たちがゆっくりと居場所を探している物語の中、主人公の舞ちゃんの居場所はこのままネジ工場となるの?空の上じゃなくていいの?……とやきもきしてたら、予告がいきなり「4年後」となっていてびっくりです。
『舞いあがれ!』“人生の主役”を諦めたかのような主人公と、悲しみの連鎖(第15週) 「柏木学生」「岩倉学生」。そう呼び合った、航空学校時代。制服を着てしまえばどこで生まれて育ったかなどの違いは見えなくなり、「パイロットになりたい」という目標も同じ、学...
■番組情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス
出演:福原遥、高橋克典、永作博美、横山裕、高畑淳子、赤楚衛二、山下美月、山口智充、くわばたりえほか
作:桑原亮⼦、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number「アイラブユー」
語り:さだまさし
制作統括:熊野律時、管原浩
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐
プロデューサー:上杉忠嗣、三鬼一希、結城崇史
広報プロデューサー:堀之内礼二郎、齋藤明日香
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/maiagare