イラスト/渡辺裕子
週を超えたらそこは2013年だった。4年後の舞ちゃん(福原遥)はもう「お嬢さん」ではなく、IWAKURAの営業のエースになっている。
ふんわり毛先が
カールしたヘアスタイルの彼女をまだ「舞ちゃん」とちゃん付けして呼んでいいのか、ちょっと迷うほど大人びているけど、小さい頃から見てきた親戚のおばちゃん的ポジションの視聴者としては、やっぱりいくつになっても舞ちゃんは舞ちゃん。ヘアスタイルといえば、先週までは、髪を染める余裕(時間も、お金も、気持ちも)がない様子で、生え際の白髪が目立っていためぐみさん(
永作博美)も、きちんと髪を整え、社長として堂々と振る舞っている。母子が奮闘した結果、IWAKURAは業績が上向き、一度はリストラで辞めてもらった人たちをまた呼び戻せるほどになった。
すべてうまくいっているからこのまま逸れずにまっすぐ進めばいいのだけれど、まだ舞ちゃんは「お父ちゃんの夢」、浩太さん(高橋克典)の、飛行機の部品を作りたいという夢を諦めていない。挑戦するリスクの高さにためらうめぐみさんを説き伏せる舞ちゃんを見て思い出す。そうだこの子、しつこいんだった。一度決めたら絶対引かない、相手が根負けするまで何度も説得にやってくる性格だった。その性格のおかげで、戻らないと言っていたリストラされたパートさんたちも説き伏せてもう一度呼び戻せたし、部品のサンプルもなんとか作れた。でもこのまましつこく「やる気にさえなれば不可能な話やありません」と言い続けて、すべてが成功するのか。そしていつも誰かの夢の成功を願うけど、舞ちゃん自身の夢は叶わなくていいのかな。大丈夫なの舞ちゃん?
そしてその彼女の持ち味・ぐいぐい距離を詰めてくる「しつこさ」がなぜか発揮されないのが、恋愛方面。恋に関してはなぜか「待ち」ですよね、舞ちゃん。
それも、あざとい餌的なものをあらかじめ撒いて、相手が食いついてから「え、私、そんなつもりじゃないのに……(がぶり)」とする、待ち伏せて狩る恋愛。すでにもう懐かしい柏木学生(
目黒蓮)との初恋はそんな感じでしつこさ皆無。なんだか、本来の舞ちゃんらしくないなあと思っているうちに終わってしまいましたが。放浪の時期が終わり、デラシネの店主となったことで東大阪に落ち着いた貴司くん(
赤楚衛二)。彼と舞ちゃんはこの4年でなんだか距離を縮めているようだけど、「貴司くんの短歌が賞をとりますようにお祈りうふふ」「うっかり手を握っちゃったうふふ」みたいなのは、前回の恋と同じく恋の餌をばら撒いているようで、なんか違和感あるんですよねえ。貴司くんと恋愛関係になるのかどうかわからないけれど、もし好きになったのなら今度は本来のしつこさを発揮してほしい。逃げる貴司くんに「私たち、いい
相棒になれると思わない?(ニコニコ)」「2人で、山の頂上目指そう?(ニコニコ)」と何度もアタックするしつこい舞ちゃんを見てみたい……でも正直なところ、2人は恋愛ではなくて、愛と理解で結ばれた生涯の友人でもいいんじゃない?と思ってます。恋をせずに幸せな
朝ドラ主人公も、いてもいいんじゃないかしら。
他の工場との助け合いで部品作りはうまくいき、IWAKURAの従業員たちとも良好な関係となり、貴司くんの短歌は舞ちゃんの助けもあって賞を取り、久留美ちゃん(山下美月)は恋人からプロポーズされる。人々のつながりによって何もかもうまくいくハッピーな週だったから、ラストシーンの悠人(横山裕)の孤独さがより際立つ。めぐみさんとは仕事の話だけで親子の会話ではない。街中でファンに声をかけられるほどの有名人となっても、いちばん話したい人とつながれない。
親戚のおばちゃん的に、今この
ドラマでいちばん心配でいちばん気になる、なんか甘いものでも差し入れたくなるのはお兄ちゃんです。
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■番組情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス
出演:福原遥、高橋克典、永作博美、横山裕、高畑淳子、赤楚衛二、山下美月、山口智充、くわばたりえほか
作:桑原亮⼦、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number「アイラブユー」
語り:さだまさし
制作統括:熊野律時、管原浩
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐
プロデューサー:上杉忠嗣、三鬼一希、結城崇史
広報プロデューサー:堀之内礼二郎、齋藤明日香
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/maiagare