1月29日の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)にて、恒例企画「プロが選ぶ2022年マイベスト10」の後半戦が放送された。
正直、ここからがやっと本編という感じ。
水曜日のカンパネラは、今が売り出しのタイミング!
作詞家・いしわたり淳治が選んだ1~4位は、以下であった。
1位:水曜日のカンパネラ「エジソン」
2位:wacci「恋だろ」
3位:Lucky Kilimanjaro「ファジーサマー」
4位:asmi「PAKU」
4位にランクインしたのは、asmi「PAKU」である。TikTokでは130万本以上の動画で使用され、総再生数は29億回に達した楽曲だ。率直に、29億回という数字に驚愕する。海外では国防的に使用不可の場所が増えてきたTikTokだけに、逆に数字の価値が増した感がある。
前編でもそうだったが、とにかく今回のランキングは「TikTok発」「SNS発」という楽曲が例年にも増して多い印象。数字に裏打ちされた瞬間最大風速の曲は短期で消費される傾向にあるが、それを良しとしているところがアーティスト側にもあるような気がする。
そしていしわたりの1位は、水曜日のカンパネラ「エジソン」だった。前編では、シンガーソングライター・佐藤千亜妃が5位に、音楽プロデューサー・蔦谷好位置は9位に選出した楽曲である。つまり、「エジソン」の3人被り! これはもう、初見でビビッときたし、確実に癖になる楽曲だ。
新生水カンは、ボーカル交代がうまくいった稀有な例。2代目ボーカリスト・詩羽みたいな子を、本当によく見つけてきたと思う。
あと、前編で2人の選者が「エジソン」をランクインさせた影響か? その後、各音楽番組が水カンを取り上げる機会は明らかに増えた気がするのだ。間違いなく、今が売り出しのタイミング。ここにきて水曜日のカンパネラ、再ブレイクだ。
ちなみに、「エジソン」もTikTokで火が点いたと言っていい。
「昨今、身の周りにはアニメ、ゲーム、SNS……身近なコンテンツはたくさん溢れていて、個人の時間の奪い合いです。音楽は、何かをしながらカジュアルに聴く、いわゆる『ながら聴き』の機会が増えた気がします」
「『ながら聴き』って言い方が合ってるかわからないですけど、そういうカジュアルな聴き方ってこの先、もっともっと増えてくると思うんですね。となったときに、果たして人生訓が必ずこの歌(の歌詞)にあるべきなのか? またちょっと、(音楽への)考え方が違うターム(時間)に入っていくのかなと思っています」
「2022年、1番軽やかに鳴り響いたのはこの歌だったのでは……と思います」(いしわたり)
ピークから10年、体を張って再ブレイクしたセカオワに感動
蔦谷好位置が選んだ1~4位は、以下であった。
1位:PEOPLE 1「紫陽花」
2位:Bialystocks「灯台」
3位:asmi「PAKU」
4位:SEKAI NO OWARI「Habit」
4位には、SEKAI NO OWARI「Habit」がランクインした。個人的には、決して好きなバンドでも好きな楽曲でもない。しかし、感慨深い。1度、人気を博したバンドの多くは一発屋で終わってしまう。なのに、ダンスまでして体を張り、そして盛り返し、再ブレイクへ至ったことに感動したのだ。
事実、この曲には確かにびっくりした。それまで、優しげな曲が続いていた彼ら。正直、あまり似合ってなかったように思う。少しキモくて、その上、「大人の俺が言っちゃいけないこと言っちゃうけど 説教するってぶっちゃけ快楽」と放った歌詞は、セカオワの新たな扉を開けたと思う。
「Habit」は、昨年のレコード大賞に輝いている。下世話なロビー活動が物を言うと囁かれる同賞だが、だからこそセカオワの受賞は際立った。ピークから10年が経ち、それでもちゃんとヒットを出し、さらにレコ大も受賞した。この状況でしっかり結果を出したのだから、素直にすごいと思う。
そして、2位にはBialystocks「灯台」がランクイン! これはいい。筆者にとっても推しのユニットだ。彼らの曲はFMでよく掛かり、耳にするたび「ん、良さげ?」と作業の手が止まるのが常だった。琴線に触れる未知のバンドがまだ残っていた感、というか。
「灯台」を聴くと、昔どこかで聴いたことのある気持ち(ポジティブな意味で)になる。少し、King Gnu「白日」やTempalayを想起させる曲展開だ。しかし、彼らは他の曲もいい。もし気になった方は、彼らの「日々の手触り」「Upon You」「はだかのゆめ」などもチェックしていただきたい。ビアリのルーツにはキリンジがいる気がする。
あと、「灯台」の終盤には「こんな声、生歌で出るのかよ!?」とツッコみたくなる高音ボーカルが出てくるが、実は彼らは生歌がうまかったりする。そういう意味でも、ビアリは実力派だ。
番組のエンディングで、蔦谷は総評した。
「2020年以降、コロナもあってもっと多様化していくかなと思ったら、より日本のガラパゴス化が進んでいると思って。でも、それは悪いことじゃないと思います。例えば、セカオワの『Habit』は世界中で再生されているんですよ。あんな音楽、世界中にないから! だから、誇りに思ったほうがいいと思います、J-POP」
「韓国の音楽が韓国語のままアメリカでヒットするように、日本の曲が日本のスタイルを変えないまま、海外でヒットするような時代もそう遠くはないんじゃないかなと思います」(蔦谷)
ガラパゴスであるがゆえ、他にはないユニークな音楽としてグローバルに通用する……ということだ。
さて。今年の結果を見ると、少し予想とは違うランキング内容だった。藤井風もVaundyも、ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(フジテレビ系)の主題歌だったMirage Collective「Mirage」もランクインしていない。
では、選者が有望株に唾を付けるべく、青田買い的なランキングになったかというと、そうでもなかった。各々が何を重視し、選出していたかというと、「バズった!」「何億回再生!」などである。それらの結果が先行する、SNSバズ(TikTok発)のアーティストばかり登場した印象。蔦谷やいしわたりといった目利きが、その手のミュージシャンを率先して選んでいたのだ。
「この企画で取り上げられる新人をチェックしたい!」「このランキングで取り上げられる前に、有望株をチェックしたい!と考える視聴者からすると、その傾向は少し肩透かしだった気がする。加えて、選者たちも多くの音楽を聴きすぎて、判断基準がブレてきた印象もある。それとも、2022年は不作だったか? 年始恒例のランキング企画だが、正直、今までで最も響いてこない内容だった。
身も蓋もないことを言えば、音楽は他人からレコメンドされるのではなく、自分でディグるのが1番楽しい。そんな基本中の基本を再認識させる、今回の『関ジャム』だった。
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