長谷川博己主演のTBS系日曜劇場『アンチヒーロー』の最終話が6月23日に放送され、平均世帯視聴率12.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)を記録した。全10話通しての平均視聴率は10.8%で、同枠前クール放送の『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』の10.7%と比較してほぼ横ばいという結果だった。
事前の情報解禁を最小限にするという『VIVANT』に近いプロモーションを展開したことでも話題になった『アンチヒーロー』。平均視聴率としては『VIVANT』の14.3%には及ばなかったものの、平均視聴率が2桁を超えればヒット作と評価される昨今のテレビ界の基準からすれば十分に合格。Netflixの視聴ランキング・国内ドラマ部門でも上位に食い込むなど、評判は上々だった。
法廷を中心に描かれる重厚なストーリーへの評価も高い。主人公・明墨弁護士(長谷川博己)は、難しい裁判で犯罪者を無罪に導くべく、いろいろなトラップを仕掛けていくわけだが、八方ふさがりの絶望的な局面でも冷静に形成逆転していくさまが痛快だと話題になった。
物語の軸となったのは、12年前に発生した糸井一家殺人事件。殺人犯として死刑判決を受けた志水(緒形直人)の無実を証明するために、伊達原検事正(野村萬斎)の不正を暴こうとする明墨を中心に話は展開していく。
最終的に伊達原の不正が認められ、志水の再審が決まるが、その過程で明墨は証拠隠匿の罪で逮捕され、拘置所の中にいる。その明墨に対し、明墨法律事務所のメンバーである赤峰弁護士(北村匠海)が「あなたを無罪にして差し上げます」と宣言したところで物語は終わる。
明墨の裁判が進行中であるほか、糸井一家殺人事件の真犯人に触れられていないなど、未消化な部分も多く、だからこそ続編を期待する声も多い。
「明墨の裁判の行方や糸井一家殺人事件の捜査はもちろんですが、実は登場人物たちのキャラクターもあまり掘り下げられていません。明墨についても検事時代の描写はそこまで丁寧なものではないですし、明墨法律事務所のメンバーであるパラリーガルの白木(大島優子)と青山(林泰文)については、過去の経歴などもしっかり描かれていない。
また予算的にも続編が作りやすいとの見方もある。テレビ局関係者はこう話す。
「たとえば『VIVANT』のように主演級を何人も出していればギャランティーだけで相当なものになりますが、『アンチヒーロー』はそこまででもないので、続編制作のハードルは低め。アクションや特殊効果が多い作品ではなく、法廷での展開が多いというのも、お金があまりかからない要素です。さらにオリジナル脚本で、話を自由に広げていけることも、シリーズ化に向いている」
続編制作が確定的とも言えそうな『アンチヒーロー』。出演者たちのスケジュール調整が大きな課題となるが――。
「今回の出演者の中で、今後もっともスケジュールの確保が難しくなりそうなのが、紫ノ宮を演じた堀田真由さんです。昨年あたりからドラマや映画、CMの出演数が一気に増えていて、近い将来国民的な俳優になっていくとも目されている。そうなると、スケジュールの確保は簡単ではない。優先的にスケジュールを割くでしょうが、『アンチヒーロー』は“若手枠”での出演なので、余計に難しくなるでしょう」(同)
ただ、最終話の時点で明墨は留置所内であり、続編ができたとしても出番は減りそう。そうなれば、明墨法律事務所の若手弁護士である赤峰や紫ノ宮が主人公にスライドするという可能性もありそうだ。
「北村匠海さんと堀田真由さんのダブル主演で続編を作るのはアリですね。日曜劇場は視聴者層が比較的高めなので、若い視聴者に強くアピールするという意味でも悪くない方策でしょう。ただ堀田さんが演じた紫ノ宮については、すでに父娘関係はじめキャラクターがしっかり描かれていたので、続編に絶対必要というわけでもない。そういう意味では堀田真由さん抜きで続編を作るという選択肢もあるはずです」(同)
期待が高まる『アンチヒーロー』の続編。登場人物がどう掘り下げられていくのかを含め、多くの視聴者が続編を待っているのは間違いない。