綾野剛(写真/Getty Imagesより)

 Netflixで7月25日から配信されている、綾野剛・豊川悦司主演のオリジナルドラマ『地面師たち』が好評だ。土地の所有者になりすまし、虚偽の売却をもちかけ金をだまし取る“地面師”と呼ばれる不動産詐欺集団の暗躍を描く本作。

主人公のひとりで地面師グループの交渉役・辻本拓海を演じた綾野剛にとっては、新たな代表作となりそうな勢いである。

 原作は、新庄耕による同名小説(集英社)。2017年に実際に発生した、積水ハウス地面師詐欺事件をモデルとしている。綾野が演じる拓海は、過去に不動産詐欺の被害に遭い、それをきっかけに家族を失った人物だ。その後、地面師グループのリーダーであるハリソン山中(豊川悦司)と出会い、自らも地面師となる。

 綾野といえば、2022年にガーシーこと東谷義和氏のYouTubeチャンネルでプライベートを暴露されたことで、俳優としてのキャリアが危ぶまれたこともあった。東谷氏のターゲットとなっていた綾野ら3人は、常習的に脅迫し名誉を毀損したとして東谷氏を刑事告訴。その後、東谷氏は、常習的脅迫、強要、名誉毀損、威力業務妨害の容疑で逮捕され、東京地裁による懲役3年・執行猶予5年の有罪判決が確定した。

「綾野さんは、ガーシー事件の被害者であるものの、暴露の対象となったことでスキャンダラスなイメージがついてしまった。ちょうどその頃、綾野さんは日曜劇場『オールドルーキー』で主演を務めていて、俳優として大きく飛躍するタイミングだったにもかかわらず、騒動が影響してか、仕事の方向性が少々変わったと見る業界関係者も多い。実際、『オールドルーキー』以降は、地上波ドラマではなく映画や配信ドラマ中心になっています」(ドラマ関係者)

 そうしたなか、今回の『地面師たち』で綾野は、影がある知的な雰囲気の詐欺師を見事に演じている。

「そもそも綾野さんは、ダークな存在感、あるいは邪悪な雰囲気が個性となっている俳優さんです。

人気が高まるにつれて明るい役も増えていたなかで、『地面師たち』では見事にダークな役を演じていて、本領発揮というところです。そもそも『地面師たち』のような犯罪集団にスポットを当てた作品は地上波では難しく、Netflixのようなネット配信向きだという背景もありますし、綾野さんは日曜劇場のような地上波のメジャー番組よりも、Netflix作品のほうがフィットしているのは間違いないでしょう。だからこそ、この『地面師たち』は綾野さんの代表作になっていくはずです」(同)

 この『地面師たち』には、綾野剛だけでなく、もうひとり地上波から避けられている俳優が出演している。それがピエール瀧だ。もともと映画を中心に俳優活動をしていた瀧だが、NHKを中心に地上波ドラマの出演も多かった。しかし、2019年に薬物で逮捕されてからは地上波の作品には出演していない。

「原則、スポンサーへの配慮が必要ないネット配信作品は、スキャンダルを起こした俳優の復帰場所となりやすいという事情は、よく指摘されることです。また、大手事務所所属の人気俳優はネット配信作品のオファーを断ることが多く、スキャンダラスなイメージの俳優にも仕事が回ってくる。というのも、特にNetflixの作品は撮影期間が長く、スケジュールを押さえるのが大変なんです。地上波ドラマに多く出演している俳優にしてみれば、Netflix作品に長時間拘束されてしまうと、ほかの仕事ができなくなる。まだまだ地上波ドラマ出演は俳優にとって重要な仕事ですから、大手事務所などはそちらを優先しがち。結果として、地上波向きではない俳優の配信ドラマ出演が増えるというわけです」(映画関係者)

 さらにネット配信ドラマでは、個人事務所所属の俳優が出演するケースも多い。

『地面師たち』では、地面師グループの手配師・稲葉麗子を演じる小池栄子、地面師グループのターゲットとなる大手デベロッパー・石洋ハウスの青柳部長を演じる山本耕史が、個人事務所の所属だ。

「大手事務所所属俳優に比べて、個人事務所の俳優はスケジュールを自己管理している分、とにかく融通が利きやすい。制作サイドの無茶な要求にも応えられるんです。

また、配信ドラマは地上波に比べて内容も過激だし、役柄のクセも強めです。大手事務所だと俳優のイメージを重視するがゆえに過激な役柄を避ける傾向がありますが、個人事務所の俳優であればそのあたりの基準が緩めになっていることが多い。配信側も個人事務所側も、お互いになくてはならない存在なんです」(同)

 スキャンダラスなイメージがついてしまった俳優や個人事務所の俳優など、芸能界の“弱い”立場の者たちが活躍する配信ドラマ。『地面師たち』という起死回生の主演作に巡り会えた綾野剛は、俳優としてさらなる飛躍を遂げるはずだ。

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