28日に『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系)が最終回を迎え、今年の夏ドラマも幕を閉じました。
今期、筆者がレビューを担当したのは、以下の7本。
日曜『降り積もれ孤独な死よ』(日本テレビ系)
月曜『海のはじまり』(フジテレビ系)
火曜『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)
水曜『新宿野戦病院』(フジテレビ系)
木曜『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ系)
金曜『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)
土曜『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系)
今回は、この7本に絞って独断と偏見に満ちた「アカデミー賞」風の表彰をしてみたいと思います。
それでは、いきましょう。
■作品賞/『降り積もれ孤独な死よ』
完成度でいえば『降り積もれ』と『海のはじまり』が双璧でした。13人の子どもが遺体で発見された『降り積もれ』と、死んだはず(堕ろしたはず)の子どもがいきなり現れて「パパ」にされてしまうという、対照的なグロさをはらんでスタートした両作でしたが、よりホラーみがあったのは『海のはじまり』のほうでした。やっぱり生きている人間のほうが怖いよね。
『降り積もれ』を作品賞にしたのは、連ドラとしての密度とメッセージの強さです。レビューにも書いたけど、毎回しっかり驚かせてくる手数の多さは連ドラでミステリーをやる上でのお手本になりうるというか、大きな謎をドラマの中心に置いていろいろな方向から少しずつその正体を剥がしていく作劇には興奮しましたし、原作から必要な要素だけを抽出しつつ「家庭内暴力は連鎖する」という悲劇に対して明確な回答をセリフとして示した最終回にはカタルシスもありました。
『海のはじまり』もよかったんだけど、よりドラマに「巻き込まれた感」があったのは『降り積もれ』のほうだったかな、という感じで。
■主演男優賞/目黒蓮
『海のはじまり』の目黒蓮と『降り積もれ』の成田凌、それに『ビリスク』の山田涼介の3人。より難役だったのは目黒だったという印象です。
『海のはじまり』というドラマは、「個性も情熱もない空っぽな男でもセックスしたら子どもができるよ」という現実をくっきりはっきり突き付けるという物語であって、終始、目黒が演じた夏くんという人物には「受動的であること」が求められたわけですが、そういう人に見えたもんね。大竹しのぶに「この子はあんたの子だ」って言われたり、池松壮亮に「おまえ」って言われたり、そのたびに鳩が豆鉄砲を食ったような顔になってたところ、夏くんというキャラクターを的確に表現していたと思います。
成田凌も山田涼介も持ち味が出ててよかったけど、今回の中でもっとも「代わりがいなそう」な役をやりきったのは目黒くんでした。
■主演女優賞/小池栄子
『新宿野戦病院』、ラスト2話の脚本の不出来で完全にテンション下がっちゃったけど、小池栄子の演じた無免許医ヨウコ・ニシ・フリーマンは印象に残るキャラクターになりました。
英語ネイティブの設定なのにネイティブっぽくないとかで最初のころはウダウダ言われてましたが、中盤以降はそこらへんも含めて味になっていましたし、目ん玉をカッ開いたときの顔面の迫力たるや、もうね。
後半に出てきた、いかにも女医然とした女医さんを演じたともさかりえとのコントラストもあって、ジェンダーレスな雰囲気も作風とよく合っていたと思います。
『南くん』の飯沼愛も超がんばってたし、かわいかった。新人賞。
■助演男優賞/小日向文世
助演男優賞は『降り積もれ』の小日向文世で間違いないでしょう。
この作品は小日向の灰川十三という役そのものが、イコールこのドラマの世界観といえる作品でした。どっからどう見ても圧倒的に「まともじゃない」人物なのに、出てくると画面がキュッと締まる感じ。
このドラマは謎そのものが主役になっていると何度も言ってますが、その謎をすべて背負い切るだけの懐を感じさせる佇まいだったと思います。キャラクターとして、不気味なのに頑丈という、ちょっと相反する要素を表現していました。
■助演女優賞/古川琴音
『降り積もれ』の小日向さん同様、ドラマそのものの世界観を背負っていたのが『海のはじまり』の古川琴音が演じた水季というキャラクター。
結局のところ、水季が堕ろすって言ったのに勝手に産んだことで話がややこしくなりましたし、早く死んだことでさらに話がややこしくなったわけですが、裏を返せば「堕ろすって言ったんだから堕ろせよ」「産んだならガンになってんじゃねえよ」「そんで死ぬならおとなしく黙って死ねよ」という批判を浴びてしまう立場なんですよね。実際、オブラートに包まれた上記のようなポストを放送中にはたくさん見かけました。世の中って怖いよね。
そういう立場の人物を「大切なものを大切にしてるだけです」というメッセージを明確に放出しながら演じていたと思うし、大学時代にあんな感じだった女の子ってママになるとこんな感じなんだ、というリアリティもありました。
■脚本賞/『ビリオン×スクール』
そりゃね、生方さんじゃないんかい、と思うんですけど、今回はこっちなんです。
学園ドラマの定番シチュエーションを丁寧になぞりながら、「AI教師」という現代的なテーマを持ったSFにしようというコンセプトがあって、学園ドラマとしてもSFとしても、言いたいことをちゃんとセリフにして、しかももっとも圧のかかる場面で役者に吐き出させるということを恐れずにやってきたな、と思うんですよ。アイディアとメッセージの両立というところで、全部が成功していたわけじゃないけど、目の覚めるような瞬間がいくつもありました。レビューの中でも何度か言ったけど、第2話のAIメガネでイジメを克服する場面ね、本当にすごいSFを見たと思ったんです。
それと、「夏休み」とか「文化祭」とか、学校におけるイベントについての扱いも、「素敵なものだ」というところから物語を組み上げているんですよね。まったくスカしてない。
何もスカしてないんですよね。なんか昨今、スカしてるやつ(ひろゆきとか)がチヤホヤされてるじゃないですか。そういう風潮に対するアンチテーゼみたいなものを感じられたのが、いちばんこのドラマが好きだった理由かもしれません。我人祥太さん、たくさんお仕事が入りますように。
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賞にはもれましたが、『南くんが恋人!?』は愛らしかったし岡田惠和先生の30年ぶりのセルフリメイクという贅沢も味わえました。『ギークス』も女の人3人が居酒屋で安楽椅子探偵をやるというコンセプトだけは好きでした。『GO HOME』は、マジでいいところがひとつもない。
というわけで、秋ドラマも1日1本、週7本を担当する予定です。楽しみ~。
(文=どらまっ子AKIちゃん)