『ベイビーわるきゅーれ 』Blu-ray

 殺しの腕前はピカイチだけど、共同生活は大の苦手な女の子たちを主人公にしたのが、髙石あかり&伊澤彩織が主演したガールズアクション映画『ベイビーわるきゅーれ』(2021年)です。好評オンエア中のTVドラマ版『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(テレビ東京系、毎週水曜深夜1時~)の第4話「大事な事は140字で伝わらない」を振り返ります。

 伝説の殺し屋・宮原(本田博太郎)の10年ぶりとなる仕事「風林火山」がついに始動します。女の子の殺し屋コンビ、杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)は、サポートメンバーに選ばれています。ちさと&まひろは嫌々ながらも、他のスタッフとの合宿生活を体験することになります。

 今回の「風林火山」はかなり大掛かりな仕事らしく、宮原の他にも、プロジェクトマネージャーの夏目(草川拓弥)、脚本・演出を担当する桑原(田島亮)、銃器プランナーの武井(天木じゅん)、専属スタイリストの秋間(新名基浩)が一緒に合宿します。

 ターゲットの情報を収集するため、ちさと&まひろは変装しての内偵を命じられます。脚本上では、まひろは仙台から上京してきた専門学生という設定らしく、まひろの金髪はおかしいとスタイリストの秋間から指摘されます。金髪を黒く染め直すように言われますが、まひろはこれを拒否。ちさとが「設定を変えればいいんじゃないですか」と言ったため、脚本を書いた桑原、間に入る夏目らは大騒ぎになります。

 第4話の演出は、第1話以来となる阪元裕吾監督です。「ベビわる」シリーズの生みの親である阪元監督はインディーズ映画でやってきただけに、まひろと同じように初対面の他人からあーだこーだ言われるのが嫌いなんだと思います。フリーランスのライターでもごくたまに大手出版社から仕事が来ると、文体やら何やらうるさく言ってくるわけですよ。大事なのはそこじゃないだろうと、うんざりします。

映画界でも、自由度の高いインディーズ映画と予算規模の大きなメジャー系の作品とでは隔たりがあることを感じさせるシーンでした。

 そして、宮原が主宰する晩餐会が始まります。宮原こだわりのローストポークをメインディッシュにした豪華ディナーなのですが、いちいち宮原のうんちくコメントが入り、ちさと&まひろはぐったりしてしまいます。自分の好きなものを、気の合う仲間と一緒に気を遣うことなく楽しみたいと考えている2人にとっては、最悪のシチュエーションです。おそらく、2人は食べた料理の味はまるで覚えていないことでしょう。飯テロ系ドラマとして親しまれていた『ベビエブ』ですが、第4話はこんな席にはいたくないという「地獄の食事会」が描かれています。

 それにしても、伝説の殺し屋・宮原を演じる本田博太郎の存在感はさすがです。さまざま作品に出演してきた大ベテランですが、若手時代は新劇出身の二枚目俳優として期待されていました。しかし、クセのある役を好んで演じてきたこともあって、今では映画やTVドラマに欠かせない名バイプレイヤーとなっています。工藤栄一監督が手掛けたテレビ時代劇『必殺仕舞人』(1981年)では、京マチ子ら女たちの旅回り一座に同行するビビリの元渡世人役でレギュラー出演していたことが思い出されます。

 本田博太郎の役者バカぶりをたっぷり堪能できるのは、佐藤純彌監督のSF大作『北京原人 Who are you?』(1997年)でしょう。3時間にわたる全身特殊メイクで、現代に甦った北京原人「フジ・タカシ」を熱演しています。

さらに那須博之監督の実写映画『デビルマン』(2004年)には、デーモン族復活の元凶となる飛鳥教授役で出演しています。超大コケした2大カルト映画に出演している稀有な俳優、それが本田博太郎です。ちさと&まひろにとって「よく分からないけど、えらい人」という宮原役は、まさに適役だと言えるでしょう。

 そんな本田博太郎演じる宮原は、SNSが大嫌いという設定です。スマホなしの生活は考えられないSNS世代のちさと&まひろは、世代の大きく異なる宮原とどう折り合いをつけるのか、それとも対立することになるのか。10月2日(水)放送の第5話以降の展開に注目です。

池松壮亮と伊澤彩織のバトルがものすごいことに

 9月27日からは、劇場版第3弾『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』の全国公開が始まりました。九州・宮崎に出張したちさと&まひろは、殺し屋協会に所属する「お局」的存在の入鹿みなみ(前田敦子)らと共闘し、苦手とするチームバトルに挑むことになります。「ベビわる」シリーズ史上最凶の殺し屋・冬村かえで(池松壮亮)のクレイジーぶりから目が離せません。

 まひろ役の伊澤彩織は現役の超売れっ子スタントパフォーマーでもあり、アクションスタントがハンパないことは周知のとおりです。記憶喪失の殺し屋を演じた『MOZU』(WOWOW、TBS系)で注目を集め、劇場版『宮本から君へ』(2019年)で元プロ格闘家の一ノ瀬ワタルと激闘した池松壮亮が、これまで以上にすごいバトルを伊澤と繰り広げています。共に日大芸術学部映画学科卒業の2人、常人離れした役者バカぶりを見せています。

 地元・宮崎への凱旋ロケとなる髙石あかりも、前作『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(2023年)からさらに進化したアクションを披露。ちさと&まひろのバディ感は、シリーズ最高のものとなっています。

 生きづらさを抱えながら殺し屋業を営んでいたちさと&まひろが、生きる喜びを見出す、生と死のドラマとなっています。映画を観た後は、「今日は最高のナイスデイだね」と思わず呟きたくなるアクション快作です。

 また、『ベビわる ナイスデイズ』の撮影現場を密着取材した映画『ドキュメンタリー・オブ・ベイビーわるきゅーれ』が10月4日(金)より池袋シネマ・ロサほか全国で劇場公開されます。ぜひ、映画館にも足を運んでみてください。悶々とした日々を送るあなたにとっても、最高の「ナイスデイ」になるはずです。

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