NHK朝の連続テレビ小説『おむすび』も第17回。昨日から始まった第4週のサブタイトルは「うちとお姉ちゃん」とのことで、昨日、主人公の結ちゃん(橋本環奈)が「大っ嫌い!!」と言い放ったお姉ちゃん・アユ(仲里依紗)との過去が紐解かれていくようです。
いかにして、結ちゃんはアユとギャルそのものを大嫌いになったのか。振り返りましょう。
■震災の3カ月前にトリップ
お姉ちゃんがハギャレンたちを口汚く罵ったことをきっかけに、ブチ切れてしまった結ちゃん。いつもの海辺で泣きじゃくっていると、神戸で過ごした遠い日々が思い出されます。
場面は平成6年の10月、阪神淡路大震災の3カ月前の神戸へ。
結ちゃんパパこと米田聖人(北村有起哉)は、糸島から神戸に来てもう17年がたっていました。師匠から独立し、商店街に自分の店を持ち、地元でも評判の散髪屋さんになっていました。
当時、結ちゃんはまだ5歳。高校生のアユとアユの親友であるマキちゃんとも仲良しで、セーラームーンに夢中です。
そんな折、商店街にアーケードを建設する計画が持ち上がります。商店街の面々に「住民側の代表になってくれ」と頼まれた聖人は、このころからすでに「人助け」がモットーですので、代表への就任を快諾。アーケード建設に反対する住人たちの取りまとめに奔走することになります。
中でも、強硬に反対しているのが靴屋をやっているマキのパパでした。
このあたり、靴屋のおっさんの偏屈さは度を越えており、こんなんでよく商売やってけてるなという感じなんですが、物語の要請として「聖人パパのせいでアユがマキと疎遠にされそう」という構図を作るためなので、とりあえず受け流しましょう。
場面は再び平成16年に。海辺で泣いている結ちゃんのもとに、意気消沈したハギャレンの4人がやってきます。現総代のルーリー(みりちゃむ)は、もうハギャレンはやめると言います。アユのためにハギャレンを守ると決めたけれど、当のアユがもうあんな感じなら、ハギャレンを続ける意味はないということです。その話を聞いて、また何も言わない結ちゃんなのでした。
一方、アユは荷物をまとめて糸島を後にし、天神へ。そこでギャル時代に敵対していたギャルと対面することになるのでした。
■なんか言え
ハギャレンをやめると言ったルーリー。結ちゃんに「アユとムスビン(結ちゃん)のこと何も知らなくて」と落ち込み、結ちゃんをハギャレンに誘ったことを謝罪します。
また結ちゃんは、いつものように何も言いません。
でも言わないんだよなぁ、結ちゃんて子は。何しろ、ハギャレンと友達になったことについて、アユに「お姉ちゃんのせいで、こうなった」って言っちゃうような人だもんな。ルーリーたちの目の前で。
それと、今回ね、すごく「ああ、このドラマはこういうところなんだよな」と感じた場面がありました。
5歳の結ちゃんが、アユの制服を着て、髪飾りを付けてセーラームーンのかっこうをして遊んでいる場面があったんですが、ここで5歳の結ちゃんはこう叫ぶんです。
「セーラームーンに変身だ!」
あのね、絶対に言わないよ、こんなこと。セーラームーンに変身する女の子は「セーラームーンに変身だ!」なんて絶対に言わないの。
そんな細かいことでって思われるかもしれないけど、これって全然細かいことじゃないんです。「セーラームーンが好きな子ども」というキャラクターに対する解像度の低さ、研究のしてなさが顕わになっているんです。子どものセリフを書くときに、子どもの気持ちになることを怠っている。
こういう「セーラームーンが好きな子ども」を描写するうえでの迂闊さを見るにつけ、ギャルについてもこの程度の適当なリサーチで描いてるんだろうなと思っちゃうし、それ以上にね、だいたいドラマなんてものは、誰が何をどう好きかを語るものなんですよ。その人が、何を大切にして生きているか、どれくらい大切で、どう愛しているかを語るものなんです。
そういう、根本の部分でこの脚本家を信用できなくなってきている。
結ちゃんも全然言わないしな、何が好きで、何が大切なのか。あれは嫌だ、これは嫌だばっかりで。
そういえば、この原稿も「おむすびのあれは嫌だ、これは嫌だ」ばっかりになってますね、すみません。
(文=どらまっ子AKIちゃん)