西田敏行さんが10月17日に急逝し、芸能界のみならず多くの人たちからも悲しみの声があがっている。
池中玄太に猪八戒、ハマちゃん、徳川吉宗、『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)の局長……その時々で多彩な顔を見せてきた不世出のスターは、とにかく誰からも愛される人だった。
「著名な芸能人が亡くなると共演者や交友があった有名人からお悔やみのコメントがあがるものですが、西田さんに関してはその量が尋常ではない。北野武や山田洋次、木村拓哉、泉ピン子、米倉涼子、佐藤浩市、上沼恵美子、サンドウィッチマンなど数え切れないほどの著名人がお悔やみのコメントを発表し、その内容も愛情にあふれるものばかりで、故人の人柄が偲ばれます。世間の注目度も高く、訃報が伝えられた日の報道番組は軒並み視聴率がアップ。西田さんの訃報をトップで伝えた『ニュースウオッチ9』(NHK)や『報道ステーション』(テレビ朝日系)は、前の週より大きく数字を上げました」(エンタメ誌記者)
大御所でありながらも親しみやすい雰囲気を漂わせて、スクリーンやテレビ画面に現れただけで観客に安心感を与える稀有の才能があった西田さん。
俳優としてはもちろん歌手、タレント、司会、ナレーションなど、どれをとっても一流だっただけに76歳で逝くのは早すぎる。
「西田さんは愛嬌あふれるルックスで知られていますが、子供の頃は近所でも有名な美少年で、本人は二枚目俳優になるつもりで福島から東京に出てきたそうです。ところが“どうやら二の線ではない”と途中で気付き、『二枚目のつもりが三枚目寄りになっちゃった』というのが持ちネタでした。重厚な演技も魅力でしたが、やはり真価を発揮するのは『釣りバカ日誌』シリーズのハマちゃんのようなお人好しで人情味あふれる役柄。長い芸能生活でスキャンダルの類とは無縁でしたし、東北弁という“武器”もありました。『ナイトスクープ』で見せた涙もろさにやられた人も多かったでしょう」(ベテラン芸能記者)
私生活では東日本大震災の後に故郷の福島のために尽力し、その姿を覚えている人も多いはず。
“国民的愛されキャラ”が旅立ってしまった喪失感は大きいが、芸能界を見回すと偉大なるエンターテイナーの系譜を受け継ぐ唯一無二の存在も浮かび上がってくる。
「テレビが娯楽の王様だった時代が終わり、老若男女が顔と名前を理解する芸能人は絶滅寸前ですが、数々のドラマや映画で主役を張り、『NHK紅白歌合戦』でも司会も務めた大泉洋は“西田敏行の後継者”の最有力候補と言ってもいいでしょう。
俳優としてはシリアスからコミカルまで幅広く演じ分け、歌手や司会者などさまざまな顔を持つ大泉には確かに西田さんと共通点する部分も多そうだが、芸能ジャーナリストの竹下光氏もこう語る。
「『TEAM NACS』の一員として地元の北海道で舞台を中心に活動し、タレントとしても深夜番組に出演する中、96年に放送スタートした『水曜どうでしょう』(北海道テレビ)で大ブレーク。東京進出後は全国ネットの連続ドラマ初出演となった05年放送の『救命病棟24時』(フジテレビ系)を皮切りに数多くのドラマや映画で活躍。篠原涼子さん主演の『ハケンの品格』(日本テレビ系)では主要な役を演じて同ドラマのヒットに貢献し、11年公開の札幌・すすきのを舞台にした主演映画『探偵はBARにいる』では日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞、22年放送のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では源頼朝を演じるなど俳優として存在感を放っています。他方、13年にはエッセイ本がベストセラーとなったり、紅白では司会を務めるほか、自身が作詞を手掛けた楽曲で歌手としても出場するなどマルチな活躍を見せています。輝かしいキャリアや実績を持ちながらも偉ぶるところがなく、時に自虐ネタまで披露したり、軽妙なトークで笑いを誘ったり、スキャンダルとも縁が薄く、高い好感度や親近感を誇る“愛されキャラ”というあたりは西田さんに通じるところがあるかもしれませんね」
誰からも愛された“国民的エンターテイナー”亡き後、大泉のさらなる活躍にも期待したい。