さて、今週の“始末屋・櫛田(フェルナンデス直行)”は出番少なめでしたが、最後の最後で潜入兄妹の妹・ユキ(八木莉可子)をさらうために超おっかない顔で走ってきたので満足です。やっぱいいよねー、櫛田。
というわけで、毎回くるくるとピンチが訪れては切り抜ける急展開と香港ノワールの風味漂う演出で楽しませてくれるドラマ『潜入兄妹 特殊詐欺匿名捜査官』(日本テレビ系)も第3話。今回は「おねだり女子」のお話でした。しかも「AI版おねだり女子プログラム」を巡るサスペンス。現代的ですな。
振り返りましょう。
■ヤサバレからの急展開
前回、家に帰ったら「幻獣」幹部のひとりである白虎(黒谷友香)に待ち伏せされていた潜入兄妹。ヤサには幻獣の組織図やら幹部の特徴やらが壁にたくさん貼ってあるので早くも万事休すですが、どうやらカーテンに隠れていて大丈夫だったようです。このへんの白虎の詰めの甘さというか、ご都合主義感を画面の圧で押し切ってくる感じも、いかにもノワールしてて素敵です。
白虎は、下っ端にパクられたプログラムを取り戻すことを兄妹に命じます。そのプログラムはAIによってターゲットとなる「おぢ」を誘惑する文面を送付し、おねだりして金を引っ張るという、とても優秀なもの。白虎いわく、年間20億を稼ぎ出す目論見だといいます。
そのプログラムのマスターデータが入ったUSBメモリか何かを白虎から盗んだのは、「まりか」率いる「おねだり女子」集団。
キイチは今回も潜入作戦の絵を描き、ハコの仲間とともに作戦を練りますが、どうやらハコメンバーのひとりである若菜ちゃん(岡井みおん)の様子が変です。後にわかるのですが、若菜ちゃんの父親はこの「おねだり女子」集団に引っかかり闇金から500万円も借金をしたうえ、会社もクビになってしまったのだとか。若菜ちゃんがこの闇バイトに応募したきっかけも、父親の借金を返すためでした。
「おねだり女子」集団は「まりな」を中心にプレイヤーの女の子が5~6人、用心棒が2人、それに小間使いのフミヤというメンツ。フミヤは左脚を引きずりながら「まりな」にコキ使われており、その扱いに不満そうです。
キイチはフミヤを仲間に引き入れ、プログラムの奪還を目論見ますが、寸前でフミヤの裏切りが発動。実はフミヤは小間使いではなく、このプログラムを設計製作した張本人。白虎に買いたたかれそうになったところ、自分の手に取り戻すことに成功していたのでした。
左脚はやっぱり悪くなかったフミヤに銃口を向けられ、この日何度目かの万事休すに陥ったキイチでしたが、今回もいろいろあってピンチを切り抜け、「おねだり女子」集団を出し抜くことに成功しました。
これにて一件落着かと思いきや、無駄におっかない幹部の青龍(桐山漣)が前述の通り櫛田を使って妹・ユキを拉致。拘束されたユキの目の前には、青龍にボコにされたチンピラが転がっていましたとさ。
■左脚を引きずる男には気を付けろ
ドラマや映画に左脚を引きずる男が現れたら、気を付けなければなりません。映画『ユージュアル・サスぺクツ』(95)に伝説の“左脚引きずり男”ことカイザー・ソゼが登場して以来、左脚が不自由な男は、まず疑われる運命にあります。
ですので、今回のフミヤの寝返りにも特に意外性はないわけですが、『潜入兄妹』は、とにかくすごく真面目に世界観を作り込んでいる作品なので、こういうオマージュが全然安っぽくならない。むしろ、ナイスなサービスとして受け止めることができる気がしました。
それと、今回は若菜ちゃんが個人的な恨みで作戦を台無しにする暴走をしかけた場面がありましたが、ハコメンバーの背景もまだまだ語られていない部分が多いんですよね。特に、潜入兄妹が潜入する以前からメンバーだった美波(入山杏奈)、泰造(徳井優)、賢太(伊藤あさひ)の3人については、掘りしろがいくらでも残っていますし、潜入兄妹を潜入させた警察の入間(及川光博)は、今回の潜入には「幻獣を探る」以外の目的もあることをほのめかしていた。
まだまだやることはたくさんあるし、今回の「まりな」のキャラクター造形を見るにつけ、現代犯罪への解像度も高そうに見える。これからもおもしろくなる要素しかないですよ。楽しい週末をありがとう『潜入兄妹』。来週も見るよ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)