先日、グラミー歌手のエイミー・ワインハウスが27歳で急死したが、今年も多くの大物スターが亡くなっている。往年の大女優ジェーン・ラッセルにエリザベス・テイラー、刑事コロンボ役で知られる名俳優ピーター・フォーク。

 大物スターが亡くなると注目されるのが、遺産額と相続をめぐり繰り広げられる裁判劇。セレブの場合、亡くなった後も著作権などで大金が舞い込むため、大いにもめるのである。今回は、莫大な遺産をめぐり裁判で故人や身内の恥をさらして注目を集めた「セレブの泥沼遺産相続トップ5」を、ランキングしてみた。

■第5位 J・ハワード・マーシャル&アンナ・ニコル・スミス

 プレイメイトで、リアリティー番組のスターとしても人気を集めたアンナ・ニコル・スミスが、鎮静剤や抗鬱剤の過剰摂取のため39歳の若さで永眠したのは2007年のこと。アンナはストリッパー時代に客として知り合った63歳年上の石油大富豪J・ハワード・マーシャルと94年に結婚したが、マーシャルは翌年あっけなく死亡。直後から28歳年上の義理の息子と16億ドル(約1,240億円)の遺産をめぐる裁判を繰り広げ、アンナの死後も一人娘ダニエリンが引き継ぐ形で続行された。義理の息子も06年に病死して相続権はその妻が引き継いでおり、アンナの主張通り3億ドル(約230億円)相続できるのかどうか、世間は注目。最新判決でアンナは敗訴しているが、15年間に渡りあの手この手を使ってきたアンナ側が諦めるはずはなく裁判所に新たな申し立てを出している。

 ちなみにアンナは亡くなる数年前から遺言を更新していなかったため、ダニエリンの後見人を誰が務めるかで裁判沙汰に。マーシャルの遺産相続人になるであろうダニエリンの後見人となれば大金が舞い込むため、誰が本当の父親なのかDNA鑑定まで行われ、恥を捨てて金を得ようとする男たちの醜態に全米が釘付けとなった。

■第4位 ジェームズ・ブラウン 

 ファンクの帝王ことジェームス・ブラウンは06年に73歳でこの世を去ったが、遺言書には未亡人と息子の名はなく、ほかにつくった6人の子どもたちの名が記されていた。死後、自宅に入ることが禁じられた未亡人は、裁判所に「遺産相続の異議申し立て」を申請。

遺言執行人は、彼女が前夫との離婚成立前にジェームスと結婚したため、主張している遺産の半分を受け取る権利はないと断言。裁判は泥沼化した。その一方で6人の子どもたちは、遺産・資産管理人が信用ならないためクビにしたいと起訴。

 09年、裁判所の命令により、遺産の半分を慈善事業に寄付し、4分の1は未亡人と息子に、残りは6人の子どもたちが相続することで一件落着。ジェームズの楽曲著作権は毎年、莫大な収益を生み出しており、相続人たちは生涯お金に困らず暮らしていけるだろうと伝えられている。

■第3位 マーロン・ブランド

 『波止場』『ゴッドファーザー』でオスカーを受賞した俳優マーロン・ブランドが80年の生涯に幕を下ろしたのは04年。その直後から2,160万ドル(約16億円)の遺産を巡る長い争いが幕を上げた。遺言状では10歳~46歳までの10人の子どもがいると明記されてあった。しかし、金銭問題でブランドを訴えていた母を持つ養女と、95年に首吊り自殺した元モデルの娘シャイアンの息子は遺産相続から除外。8人の子どもたちで遺産を分け合うことになった。だが、遺産のうち1,860万ドル(約14億円)は世界中に所持する不動産。何もしなくても毎年50万ドル(約3,800万円)もの収入があるとされるブランドの遺産だが、手数料を差し引いて8人で割ると、一人あたりが得る額は小さくなり、不動産をどうにかしろと子どもたちは激怒。

 遺言執行者に指定された映画プロデューサーのマイク・メダヴォイらは、ロサンゼルスの豪邸を約4億3,000万円でジャック・ニコルソンに売却したり、タヒチのティティアロアという美しいサンゴ礁に囲まれた無人島をエコ・リゾートにし収益を得ようとしたり、可能な努力はしているとのこと。しかし、スムーズにお金は行き渡らず、長男が2008年に病死したとき葬式をあげられぬほど貧しく、母親は彼の不幸な生涯話をタブロイドに売り、葬儀代に当てたほどであった。

 そんな状況の中、遺産目当てにマーロンにセクハラされていたと訴訟を起こすメイド、肉体関係にあり口約束してもらったと訴訟を起こすメイドが登場。08年に亡くなった長男の元妻も遺産相続を主張し、最期を看取った交際相手はマーロンの遺灰の一部を人質にするなど、誰もが金目当てに裁判を起こした。

 遺産執行者たちは、今年5月にもハーレーダビッドソン社がブーツにブランドの名を勝手につけて販売していると訴訟を起こしており、著作権の名のもと、お金を得ようと奮闘している。

■第2位 ハワード・ヒューズ

 「地球上の富の半分を持つ億万長者」と言われた、実業家で映画制作者のハワード・ヒューズ。子どもがなく遺書もないとされたが、死後約3週間後に、ソルトレイクシティにある末日聖徒イエス・キリスト教会の本部で、ハワードの手書きの遺言書が発見された。遺書には「15億ドル(約1,160億円)をチャリティーに寄付、4億7,000万ドル(約365億円)をヒューズが所持する会社の重役たちに、1億5,000万ドル(約116億円)をいとこのウィリアム・ラミスに、1億5,000万ドル(約116億円)を2人の元妻で平等に分ける、放浪の旅をし無一文になったとき1ドルを恵んでくれたガソリンスタンド経営者にも1億5,000万ドルを与える」と記されていた。

 しかし、「法的に有効ではない」「一ガソリンスタンド経営者が偽造したものだ」と7カ月に渡り裁判で争われ、結果、偽造されたものだと判決が下った。

 その後、親族内でどのように分配するかで紛糾し、死後7年経った83年25億ドル(約2,000億円)の遺産は、22人のいとこたちで分けられることで決着。しかし、その後も末日聖徒イエス・キリスト教会で発見された遺書は本物だったとガソリンスタンド経営者が裁判に訴えたり、ヒューズの会社が売却されたりする度に遺族が分け前を求める裁判を起こしたりと、今なおゴタゴタは続いている。

■第1位 ジミ・ヘンドリックス

 27歳で他界したカリスマギタリスト、ジミ・ヘンドリックス。

遺書は残しておらず、相続の権利があるのは、実子とされる2人の子ども、父親アル、兄レオン、同居していた彼女、婚約していたと主張する彼女、腹違いの姉の7人だとされた。しかし、アルは「子どもはジミーの子じゃない。法に従うと自分が唯一の相続人になる」と主張。弁護士を雇い、ジミーの肖像権や音楽の著作権を管理する会社を立ち上げ、8,000万ドル(約62億円)まで資産を増やしていった。

 02年にアルが亡くなった後、会社はアルが再婚した際に養子縁組した娘ジェイミーが相続。これに激怒したジミーの兄レオンは「ジェイミーは資産を独り占めするため、自分や他の相続人の名前を父の遺書から消した」と裁判所に訴えた。レオンによると、96年にアリが作成した遺書には、資産の24%をレオンに、38%をジェイミーに、残りを他の親族に受け継がせると明記してあったとのこと。それをジェイミーが自分一人で相続するために、レオンたちの名前を違法に消したのだと主張した。

 どこへ行くにもファーストクラスで、資産を食い散らかし贅沢三昧していると暴露されたジェイミーは「経費で落とせないものは、払い戻す」と弁解した上で、「父は私一人で資産を管理して欲しいと願っていた」と説明。レオンが薬物依存症であることなども暴露され、裁判は泥沼化した。最終的にジェイミーのみが会社を運営できることになったが、資産を使うことはできなくなり、笑ったのは何百万ドルもの費用を得た弁護士だと囁かれている。

 遺言書があっても、セレブの遺産分配は大いにもめる。

遺産額が何十億、何百億単位になる上、著作権の関係上、資産が増え続けていくので、誰もが金の亡者になってしまうのだろう。亡くなったセレブたちは、家族たちが醜い相続争いを繰り広げ、関係が崩壊してしまう様子を、あの世から一体どのような気持ちで眺めているのだろうか......。


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あんまり外に子ども作らない方がいいんじゃ......



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