1993年5月にアーカンソー州ウエスト・メンフィスで、3人の8歳男児がむごたらしい残虐遺体となって発見された「ウエスト・メンフィス3事件」。この事件の犯人だとされ18年間刑務所に服役していたダミアン・エコールズ、ジェイソン・ボールドウィン、ジェシー・ミスケリーJr.の3人が、19日、司法取引に応じ釈放された。

事件当時10代だった3人は、今や30代半ば。実はこの事件、オカルトよりも怖い冤罪事件だと言われており、ジョニー・デップやウィノナ・ライダーらセレブスターたちが長年釈放を求めて活動を行っていることでも注目されてきた。

 「ウエスト・メンフィス3事件」の被害者となった男児たちの遺体は、両手首と両足首をひとつに縛り上げられたホグタイの状態で発見された。みな裸で激しく殴られた痕があり、性器を切り落とされていた男児もいた。司法解剖の結果、1人は失血死、2人は溺死だったとされている。

 この事件の犯人として警察が逮捕したのは、ウエスト・メンフィスの問題児として浮いた存在だった18歳のダミアン、16歳のジェイソン、17歳のジェシーだった。ジェイソンとジェシーは万引きなどで逮捕された過去があったため、警察から何かと目を付けられていた。事件の主格だとされたダミアンは、黒い服ばかり着ているヘヴィ・メタル好きな青年。「へヴィ・メタルを聞きながら、悪魔を崇拝していそうだ」「悪魔崇拝儀式のために、ジェイソンとジェシーを誘い、男児3人を生贄に殺したに違いない」と、証拠ひとつないのに逮捕したのだ。3人は無罪を主張したが、警察や検事の言葉に耐えられなくなったジェシーが思わず自白。その自白は辻褄が合わない点が多かったが無視され、彼らが犯人ではないという証拠も出てきたが警察はなぜか紛失。こうして、3人はあっさりと有罪になり、ダミアンは死刑、ジェイソン、ジェシーは終身刑が言い渡された。

 これは、ターゲットにしやすい弱い立場の3人を犯人に仕立て上げた冤罪であると信じる者は多く、96年に彼らの無罪を訴える『Paradise Lost: The Child Murders at Robin Hood Hills』というドキュメンタリー映画が制作され、世間の大きな注目を集めた。セレブたちも3人をサポートするようになり、チャリティーコンサートも開催されるようになった。ジョニー・デップは昨年米CBSで放送された『48 Hours Mystery』で、「自分も若いころ、地元で人と違う服装をしていて浮いた存在だった。見た目だけで判断される悲しさ、悔しさはよく分かる」と語り、これは恐ろしい冤罪だと訴えた。

 その後出てきたDNAを含む証拠すべてが3人の無罪を証明することになり、再審が可能か否かを決定するための公判が行われることが決まった矢先、3人は有罪を認めることで極刑を回避する司法取引に応じ、釈放された。なお、司法取引の内容には、彼らを長年刑務所に放り込んだアーカンソー州を訴えない、という項目が入っていたとされている。

 3人は釈放直後、改めて無罪を主張。カントリーグループ「ディクシー・チックス」のナタリー・メインズと、ロックバンド「パール・ジャム」のフロントマン、エディ・ヴェダーが裁判所に駆けつけ、彼らをサポートした。今後、3人がメディアに登場する可能性は高く、米3大ネットワークのニュース特番や、オプラ・ウィンフリーなど大物司会者による独占インタビューが行われるのではないかと注目されている。

 なお、ダミアンとジェイソンは釈放されたその足で運転免許申請に向かい、ジェシーは家族の元へ直行したとのこと。ダミアンは彼の無実を訴えてきた女性活動家と99年に獄中結婚しており、晴れて新婚生活をスタートさせることになったが、当分の間、マスコミに追い掛け回される騒がしい生活を強いられそうである。


『平気で冤罪をつくる人たち』


確かな証拠がなかったのに、「州を訴えるな」という姿勢が怖い。



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