羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の芸能人>
「私にもよくしてくれました」神田うの
『日曜ファミリア 芸能人つまずきビッグデータ』(フジテレビ系、12月13日放送)
神田うのは、本当にカネにしか興味がないなぁ。テレビを見ていると、そう感じることが多々ある。
例えば、うのは『ノンストップ!』(フジテレビ系)にてレギュラーコメンテーターを務めるが、連絡せずに家を訪れる迷惑な姑や、限りなくクロな夫の浮気疑惑など視聴者のお悩みに「やられたら、やり返せばいいじゃん」と身もふたもない解答で、お隣に座る博多大吉を苦笑いさせる。また『解決!ナイナイアンサー!』(日本テレビ系)は、時に「夫婦のすれちがい」をテーマに取り上げるが、うのは特にコメントしない。夫の浮気疑惑が浮上したり、本人が言うところの“行ったり来たり婚”という名の別居をしつつも離婚をしない、そんなうのならではのコメントが聞きたいものだが、まるで興味を示さないのだ。うのが本気を見せたのは、最近出てきたセレブ妻タレント・大沢ケイミに、「プライベートジェットを持っていないの?」と聞かれ、「持ってないんじゃない、持たないんです」と目を見開いて、答えた時くらいである。
写真週刊誌に、夫とキャバ嬢の旅行の様子が掲載されることや、常に離婚がうわさされる不名誉より、「プライベートジェットを買えない」と言われることの方が、うのにとっては屈辱らしい。ここまでカネが好きというのは、人生における優先順位がはっきりしているという意味で、美点と言えるだろう。うのの夫が稼ぎ続ける限り、浮気しようが別居しようが、別れることは
ないように思う。
そんなカネが大好きなうのが、ブランド品総額3,000万円をベビーシッターに盗まれる窃盗事件の被害者となり、その顛末を初告白したのが、『日曜ファミリア 芸能人つまずきビッグデータ』(フジテレビ系)である。
同番組の取材を受けた街行く一般人は「(ベビーシッターに)不満を持たれるようなことをしたんじゃないの?」と、暗にうのの自業自得を指摘するが、うのは「まったく逆。まわりに、『うのちゃんにあんなによくしてもらって、よくあんなことができるね』って言われた」と完全否定した。
親しくなったきっかけを、うのは「私にもよくしてくれました」と述べた。シッターは、うのの洋服のボタン付けをしてくれるなど、子どもだけでなく、うのにも気配りをしてくれたという。信頼していた人に希少価値の高いカネメの物を盗まれた悔しさからか、その表情は終始険しかった。
新セレブ妻タレントの大沢は、「自分はお掃除の人に入ってもらう場合は、管理人さんに立ち会ってもらっている」とうのの脇の甘さを指摘したが、管理人の目の届かない場所で何かある可能性もゼロではないので、万全な策とは言えないだろう。家に他人を入れることはハイリスクであるらしく、同番組では元タカラジェンヌの毬谷友子も、ペットシッターの女性に、宝石や着物を質屋にいれられるという被害に遭ったと明かした。
被害に遭ったうのと毬谷には、共通点がある。それは、シッターの女性を「家族(母親)同然」と思っていたことだ。それくらい親しいという意味だろうが、「家族同然」と「家族」は違う。血のつながりを持たない他人と家族同然に付き合うことは珍しくないが、それは両者の関係が対等な場合である。シッターの場合、カネをもらっているわけだから、シッターの方が立場は弱い。
そう考えた場合、うのの「よくしてあげた」が、シッターにとってうれしいことだったかは疑問である。例えば、うのはシッターと酒を飲むことを親しさの象徴だと思っているようだが、状況から考えて、酒代はうのの驕りだろうものの、そこで夫婦の愚痴を聞かされることに、賃金は発生しないはず。家族や友人に愚痴を言いやすいのは、話を聞いてもらうかわりに、自分も聞くという「お互い様」な関係だからだが、うのがシッターの愚痴を聞くとは考えにくい。つまり、うのの言う「家族同然」とは、シッター側のメンタル(愚痴を聞かされた相手がどう思うか)に配慮せず、金銭的なメリットも与えないという、家族というより「うのにだけ都合のいい関係」なのである。
断っておくが、うのが配慮に欠けたから、こんな被害に遭ったというつもりはない。ただ、夫も本人もあれだけ稼ぎ、華やかな交友を誇り、実母も健在なうのが、仕事を終えた後に、愚痴を聞いてくれる相手がシッターしかおらず、その人を信じて頼りにしていたという姿に「孤独」を感じるのである。一般人の想像が及ばないセレブライフを送るうのが、一般人ですら味わうことのないであろう「孤独」を持っている。世の中には、カネで買えないものも確かに存在するということだ。
窃盗犯が、最初から窃盗目的で、うのの家に入り込んだかどうかは不明である。しかし、うのの抱える「孤独」が、犯罪をほう助した可能性はないとは言い切れないと思うのだ。
(仁科友里)
※画像は神田うのオフィシャルブログより