近年、ネット上でのチケット売買を問題視し、厳しい取り締まりを行っているジャニーズ事務所。嵐や関ジャニ∞・渋谷すばるのコンサートでは「デジタルチケット」(電子チケット)が適用され、本人確認のための顔認証も実施。
昨年12月、嵐は『ARASHI LIVE TOUR 2015 Japonism』の東京ドーム公演で、一部の席において入場時の顔認証を義務付けた。さらに、今年2月18日~3月27日に行われる『渋谷すばる LIVE TOUR 2016 歌』、4月23日~8月10日まで開催される嵐のアリーナツアー『ARASHI“Japonism Show”in ARENA』ではデジタルチケット&顔認証での入場実施を告知。ジャニーズファンから大きな関心を集めている。
そこで、大手チケット売買サイト・チケットストリートに、今回の嵐ツアーチケットの取り引きについて、またデジタルチケット・顔認証制度が二次流通業界に与える影響などを聞いた。
◎デジタルチケットでのトラブル例はない
近年、他アーティストのライブでは「QRコードチケット」を用いて入場する電子チケットサービス「ticket board (チケットボード)」の活用も広がっている。ジャニーズでは新規導入の段階だが、チケットストリートでは過去にデジタルチケットを販売した例が「ある」という。
「当社ではチケットボード社はじめ、電子チケットについても全てのチケットに対して受け渡し確認を実施しており、紙チケットと同様まったく問題なくお取り引きいただいています」
とはいえ、ファンにとっては“チケットを購入して終了”ではなく、無事に入場できるかどうかが最も重要な問題。デジタルチケットを売買サイトで購入後、どういったトラブルがあり得るのだろうか?
「他社では、同一チケットをコピーして複数人に販売するなどの詐欺的なトラブルを聞きます。QRコードをキャプチャした画像を販売する手法ですが、入場時にエラーで引っ掛かり、コンサートを見ることはできなくなります。当社では取引ルールの徹底によりトラブルは発生していません」
現在(3日21時)、同社サイトではジャニーズの電子チケットは販売されていない。
「一般論として、100%の顔認証の実施など、買い手本人が確実に入場できないと弊社が判断した公演は、取り引きを停止します」
つまり、デジタルチケットの流通は問題がないとしても、顔認証の精度が要となるようだ。同社では、全取り引きにおいて、チケットが偽造ではないことを保証する「本物保証」などがついている。さらにオプションを選択すれば、主催者の都合で入場できなかった場合や公演中止・延期になった際にチケット代金が全額返金される補償や、注文したチケットが届かなかった際に、代替チケットを手配するという。仮に、嵐のデジタルチケットを取り扱うことになっても「同様にこれらの保証はおつけします」とのことだ。
◎顔認証システムはアーティスト人気の衰退につながる
先述のように、ジャニーズコンサート事務局は、転売には厳格な姿勢で立ち向かい、特に高額チケットが多数出回る嵐については、公式サイトにおいて「オークション等出品による当選取消し一覧」というかたちで“摘発”情報を掲載している。今回の顔認証&デジタルチケットの導入は、こうした法外な価格のチケット流通やダフ屋(転売屋の一種)対策の措置として有効だろうか?
「チケットの2次流通は劇的に減少します。顔認証という多大なコストと手間をかけ、行けなくなったファンに金銭的負担をかけてでも『一切の転売を防ぎたい』と主催者が考えるなら、それはそれで仕方ないと当社は考えています。しかし、顔認証のコストは、ファンが負担することになり、実際に、嵐アリーナツアーの価格は9,500円と、過去最高の価格になっています。また、チケットはあるものの当日行けなくなった人への救済手段がないのは問題ではないかと考えます」
一方で、電子チケットは郵送・発券のコストがかからないため、「本来であれば2次流通に最適」とも指摘する。
「海外はほぼ100%電子チケットで、転売詐欺対策のために、2次流通側と主催者の発券システムがオンライン接続され、2重出品、カラ出品などができない仕組みが採用されています。今回、海外の嵐ファンは2次流通を含めチケットを購入することができず、落胆の声が多く聞かれます。
今後、ジャニーズサイドはデジタルチケットや顔認証を全面的に取り入れていくのか? 2次流通市場からも関心が注がれている。