下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

 今年ももうゴールデンウイーク。

お正月早々、ベッキー騒動を皮切りに数多くの著名人が不倫騒動を巻き起こした上半期だった。同時に注目されたのが「週刊文春」(文藝春秋)の快進撃だ。下半期も「文春」の一人勝ち状態は続くのか!? 他週刊誌もそれに触発され健闘すれば、斜陽産業の週刊誌業界も少しは活気づくのでは、と期待したい。

第314回(4/28発売号より)
1位「篠原涼子 江口洋介 危うい深夜の逃避行」(「女性セブン」5月12・19日合併号)
2位「真木よう子は歌舞伎町の女王」(「女性セブン」5月12・19日合併号)
3位「おかしいぞ日本 震災支援バッシング! 日本人の寛容と匿名」(「女性セブン」5月12・19日合併号)
※ゴールデンウイークのため「女性セブン」のみ

 「女性セブン」のトップに驚くべきタイトルが躍った。

 篠原涼子と江口洋介が逃避行、って不倫か!? もしそれが本当なら、日本を代表する脂の乗った40代の俳優同士、しかも双方既婚のダブル不倫劇という超ド級のスクープだ。

 記事によれば、篠原と江口が“密会”していたのは都内の有名焼肉店。そこで食事とかなりの酒を飲んだ2人は、深夜12時過ぎ、別のレストランの完全個室で隣同士に並んで密着し、さらに酒を(かなり)飲み、深夜2時まで大盛り上がりしたという。で、次はどこに? そんな期待を抱かざるを得ないものだが、しかし、結論からいえば、それだけだ。記事を読む限り2人の関係は不倫ではないし、その確証などまったくない。2人で大酒を飲んで盛り上がった。それだけだ。それどころかこの特集記事には、特に目新しくもない篠原の家族に対する献身ぶりや、江口・森高千里夫妻のラブラブぶりをクローズアップして2頁半に及び引き延ばしに延ばした。


 おそらく篠原と江口が2人で会っているとの情報で張り込みを開始したが、しかし2人は飲むわ飲むわで大盛り上がりした挙げ句、すんなりお互いの家族の元に帰ってしまったのだろう。

 しかし「セブン」としてはこれは困った事態だった。せっかく長時間張り込んだのに、しかもゴールデンウイーク合併号なのにネタがない。だから仕方ななく記事にするしかなかった。そんな編集部の苦悩と無理矢理感が満載な記事。

 だからなのか読後の感想としては“40代同士の気の置けない俳優同士で大酒飲んで盛り上がって颯爽と別れる”というカッコいいイメージだけが残るものとなっている。

 だが1つ、「セブン」は偉かった。なぜなら江口と別れた篠原を自宅まで追跡し、翌朝の様子までレポートしていたからだ。そして、それが更なる“男前”の篠原像だった。

 篠原は深夜2時までかなりの酒を飲んだにもかかわらず翌朝、笑顔で息子たちを送り出し、自身はヨガに行ったという。すごい気力と体力。

 結果的に不倫ではなかったが、そんな“コアな”情報までしっかりと入れてきた「セブン」の長時間張り込み。
不倫ではなかったけど、次には本当のビッグなネタがきっとゲットできる! と期待できる根性の張り込み劇だった。

 次も“男前”女優のすごいお話。昨年、作家志望で元俳優の夫と離婚した真木よう子が新宿歌舞伎町で伝説を作った。
 
 今年に入って老舗ホストクラブAに通うようになったという真木だが、3月末、1人で来店し、高級ワインやシャンパンで大豪遊。一晩で使ったお金は推定2,000万円! 太っ腹、男前だ。この記事が出たことでホスト通いから足が遠のくのではという心配もあるが、そんなことは気にせず、是非中村うさぎばりに表現や作品として昇華してほしい。

 そして「セブン」には、引き続きイケメンホストと真木との関係を取材したスクープ記事を是非とも期待したい。元気な、そして景気のいい大物女優たちの動向は、世の中を明るくする。

 そして3位は、著名人たちの足を引っ張る人々に関する特集記事だ。熊本大地震でクローズアップされたのが「不謹慎狩り」という言葉だった。

 井上晴美西内まりや紗栄子藤原紀香長澤まさみダレノガレ明美など数多くの著名人たちがSNSやブログなどを通し被災地の現状を伝え、また励ましのメッセージを送っているが、それに対し「売名行為」「不謹慎」などという声が上がり、次々と炎上している。

 こうした現象について、「セブン」では炎上騒動を起こす人を分析・批判しているが、これがかなり単刀直入で素敵だ。


「昔から成功者や能力の高い人のことを妬み、コソコソと悪口を言っている人はいました。そういう未熟な人たちが、ネットの匿名性の中で力を持ってきたのが、今の社会なのです」(コラムニスト小田嶋隆氏のコメント)
「寄付もボランティアも何もしていない人が匿名のもとに無責任に批判の声を上げ、炎上を作り出している」(記事本文より)
「若い世代、ときに「若い女性」が寄付をすると、“何を偉そうに”と思われ、炎上を招きやすい」(記事本文より)

 そして芸能人たちのメッセージに対する、被災地のこんな声も掲載している。

「嬉しかですよ」「被災者が芸能人を叩くんだったら筋が通りますけど、よそ者には関係ない。“叩くな、バカヤロウ”って感じです」「熊本の人、誰も売名行為なんて気にしてないですよ」

 こうした炎上騒動に対する分析・批判は、自分たちに向けられる“炎上”を恐れる大手メディアは及び腰だが、だからこそ今回のような記事は貴重だろう。メディアの後押しがあれば、著名人たちも炎上を必要以上に恐れることなくなる。売名行為などという卑劣な誹謗に負けず、著名人たちは被災地にどんどんメッセージと支援を表明してほしい。

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