音楽プロデューサーからラッパーへと転身し、ファッションデザイナーや実業家としても活躍しているカニエ・ウェスト。放送禁止用語だらけの曲が多いが、彼の音楽から強いメッセージを感じるというファンの間では、「カニエのステージは神秘的な雰囲気が漂う」と崇められている。



 カニエはファッションデザイナーとしても業界から高く評価されており、アディダスとコラボした「YEEZY BOOST」は飛ぶように売れている。生産数が少なく希少価値があるから売れているとの意見もあるが、以前、ナイキとコラボした「AIR YEEZY2」も爆発的ヒットとなっており、「なかなか手に入らないから売れる」だけではない。今年3月にニューヨークのSOHOで短期間オープンした「ポップアップ・ショップ」にも長蛇の列ができ、大盛況だった。

 そんなカニエが「Famous」のミュージックビデオ(以下、MV)をお披露目し、全に衝撃が走っている。

 上映は、24日にカリフォルニア州イングルウッドの「ザ・フォーラム」アリーナの巨大スクリーンで行われ、まず雲の映像が登場。続いて『MTV Video Music Awards 2009』で、カニエに受賞スピーチを妨害される直前の歌手テイラー・スウィフトの笑顔が映し出され、続いて歯を見せて笑うカニエが登場。
複数の人の動画が小刻みに流れた後、「Famous」でコラボしたリアーナのコーラスが流れ、曲がスタートする。

 すると画面に、女性の乳房が登場。続いて、白いベッドに全裸で並んで寝ている、ファッション誌「VOGUE」の名物編集長アナ・ウィンター、共和党大統領候補ドナルド・トランプ、リアーナ、リアーナの元恋人クリス・ブラウン、カニエの妻キム・カーダシアンの元恋人レイ・J、カニエの元恋人アンバー・ローズ、キムの元養父(現養母)ケイトリン・ジェンナー、コメディアンのビル・コスビーとおぼしきそっくりさんたちの姿が映し出され、会場は大いに戸惑い、ざわつく。

 「Famous」には、「オレはテイラーとセックスしたい気分」「なんでって、オレがあのビッチを有名にしてやったからだよ!」「あのクソアマを有名にしたのはオレだ!」という歌詞があり、テイラーへのディスソングとして知られている。全裸のテイラーは、その歌詞が流れるときに登場。カニエ側は「歌詞の許可はとった」としているが、テイラーは「歌詞の内容など知らされてない」と否定し、2人の関係は最悪な状態だというが、そんなテイラーへのささやかな復讐なのか、女性の中で彼女だけ、やけに貧乳だった。


 リアーナが歌う部分では、リアーナの胸がアップになる。顔はあまり似ていないが、乳首のピアスや乳房のタトゥーからリアーナだとわかる。アンバーの直後にキムの顔を映し出すなど、ゴシップ的に「狙った」ショットも多い。彼らを侮辱するようなMVを制作したカニエだが、最後には、登場する一人ひとりに感謝の言葉を述べ、上映は終了したとのことだ。

 MVに登場しているのは、曲のタイトル通り「Famous=有名人」ばかり。しかし、この曲の歌詞は「オレさま有名!」「どう思う? マザーフ●ッカー!」「おれたちを止められる奴などいない!」という、「オレ様」的な支離滅裂な内容であるため、テイラー以外の登場人物は、歌詞とは関係ない。
それどころか、アナはカニエのファッションショーをサポートしてくれるだけではなく、キムと「VOGUE」の表紙を飾らせてくれた恩人。リアーナもよくコラボしているアーティストで、ケイトリンは元義父と、カニエに近い人物である。

 リアーナは自分のMVや雑誌などで乳房を露出しているため、今回許可した可能性はある。しかし、テイラー、クリス、キムを有名人にしたセックステープで相手を務めていたレイ、カニエと敵対してる元彼女のアンバー、リケーン・カトリーナの被害者救済チャリティー番組でカニエに「ジョージ・ブッシュは黒人のことなんて気にしちゃいない」と言われたブッシュ元大統領、レイプ訴訟で揺れるビルが、自身のそっくりさんを全裸で登場させるることなど絶対に許可しないだろう。

 ネット上では、「おもしろいことはおもしろい。みんな“有名人”というシーツにくるまり、安心しきって寝ているというコンセプトなのだとわかる」とアートとして評価する声、「これはやりすぎ。
名誉毀損で訴えられるのはないか」と批判する声が飛び交い、大盛り上がりしている。ちなみに、カニエ自身は「出てるのは全員本物」と断言。これに対して、ネット上の意見は真っ二つにわかれており、米大手ゴシップ芸能サイト「TMZ」には6,600を超えるコメントが殺到。「チャーリー・シーンが入っていないのが残念」「最悪」「こういうのを報じるから、カニエが調子に乗るんだ」「こんな卑猥な映像は見たくもない」とこちらも炎上している。

 「TMZ」は、ドナルド・トランプの代理人から「本人のわけがない」というコメントを入手したとも報道。ブッシュ元大統領の代理人からは、「本人じゃないかとみなさん混乱しているようですが……本人ではありません」「本人の方が、いい体してます」というコメントを寄せ、「さすがブッシュ」「ニタニタ笑いながらMVを見ている姿が目に浮かぶ」「人間、これくらい余裕がないと」と株を上げていた。


 さらに「TMZ」は25日、家族で外出中のカニエにも突撃取材しており、「MVのモデルは、本物?」と質問。カニエは「魔法はそう簡単には教えられないよ」と余裕の表情を見せており、確信犯であることは確か。アナを侮辱するようなMVを制作したことで、今後、ファッション業界で肩身の狭い思いをするのではないかともいわれているが、自分に絶対的な自信を持っているカニエのこと、「彼だからこそ、こういうMVを作っても許される」という意見も多数上がっている。