<私自身はすべての所属タレントの「親」としての責任を負いながら今後も彼らが“ひと”として成長できますよう、支援し続けて参る所存でございます。>
TOKIOの山口達也が、レギュラー出演していたNHK Eテレ『Rの法則』に出演していた女子高生ら2人を自宅マンションに連れ込み、強制わいせつを行った容疑で書類送検されたことを受け、5月1日、所属するジャニーズ事務所のジャニー喜多川社長は、そんなコメントを発表した。
山口を、今後も支援していくことを示唆する寛大なコメントだったが、その5日後の6日には、本人がTOKIOのリーダー・城島茂に渡していたという辞表をジャニー氏は受理。山口はTOKIOを脱退、契約解除となり、ジャニーズ事務所を退所することとなった。
「事の重大性が理解できず、謝罪会見で山口は『またTOKIOに戻りたい』と言ってしまったことで、騒動はさらに大炎上。残りの4人のTOKIOメンバーが慌てて謝罪会見を開き、身内から誰よりも厳しい意見を浴びせることで事態の沈静化を測りましたが、もはや山口を守るすべはありませんでした」(芸能記者)
被害者の少女とそのご家族とは、和解が成立しているとはいえ、山口の犯した罪の重さは変わらないだけに、普通の所属事務所ならば、これは当然の措置だろう。
だが、ジャニーズ事務所が“普通”だろうか。
創業者であり、現在も社長を務めるジャニー喜多川氏。その人による、未成年所属タレントへの“ホモセクハラ”騒動(※)が、これまで何度もマスコミをにぎわせてきたという“黒歴史”が存在するからだ。
今の若いファンも、知っておくべきだろう。
初めて、ジャニー氏のホモセクハラが話題になったのは、今から実に54年も前、1964年のことだった。 金銭問題から”ホモセクハラ問題”へ
ジャニーズ事務所の初代タレント、その名も「ジャニーズ」は、アマチュア時代に新芸能学院で歌やダンスを学んでいたが、人気が出てくると、マネジャー的存在であったジャニー喜多川氏とともに学院を飛び出し、独立。それに対し、新芸能学院の学院長は、所属中の授業料やスタジオ使用料など、約270万円を支払うようにと、東京地裁に訴えを起こしたのだ。しかし、3年以上も続いたこの裁判、金銭問題よりも”ホモセクハラ問題”がマスコミにクローズアップされることとなったのだ。
裁判では、ジャニーズとともにレッスンを受けていた同僚が、ジャニー氏のホモセクハラを告発。少年たちにエロ写真を見せて興奮させた上で、少年の体にいたずらをし、ジャニー氏のものも触らせるという、男同士のヘビー・ペッティングを教え込んだとのことだった。
ほかにも、15人もの少年たちがその毒牙にかけられており、その中にはジャニーズの4人も含まれていたという。そもそも、ジャニーズのあおい輝彦が、「あんなことをされてボクの一生はおしまいです」と訴えてきたことが、原告側の学院長がジャニー氏の蛮行を知るきっかけだったという。
だが、67年9月の後半では、すでに人気グループとなっていたジャニーズの4人が出廷し、原告弁護士からホモセクハラの有無について質問責めにあったが、「知りません」「覚えていません」で押し通し、4人がその事実を認めることはなかった。
しかし、ジャニーズのメンバーの1人であった、中谷良氏は、89年に上梓した告白本『ジャニーズの逆襲』(データハウス)の中で、それが“偽りの証言”であったことをハッキリと明かしている。
<事前に答弁の言葉は決められていました。ジャニー喜多川氏が、それが自分たちにとって最高の手段であるのだと、みんなを説き伏せて……。>
(『ジャニーズの逆襲』76ページ)
中谷氏たちは、当時17歳。多くの若い女性ファンへの影響、自分たちの前途を考えると、それ以外の選択肢はなかったに違いない。
同著の中では、中谷氏が初めてジャニー氏からの性的なアプローチを受けたときのことが克明に記されている。驚くべきことに、それはなんとまだ中谷氏が11歳のときだったという。
4人は、学校が終わるとジャニー氏の自宅に遊びに行くようになっていたが、ある日、中谷少年が1人で遊びに行くと、2人でじゃれ合いながら、「気持ちいいはずだよ、こうすると」と、手を上下に動かして中谷少年を射精へと導いたという。 ジャニーズは、代々木公園に集まる30人ほどの少年たちに野球のコーチをしていたジャニー氏が、この野球チームにいた4人の幼なじみを誘って映画『ウエストサイドストーリー』を見に行ったことがきっかけで結成されたグループだった。その野球チーム「ジャニーズ球団」時代から、ジャニー氏は彼らを欲望の手にかけていたというのだ。
繰り返すが、相手は、ネットもなく性情報も少ない時代の、まだ何も知らない、11歳の少年である。その悪質性は山口と比ぶべくもない。
昨年、110年ぶりに刑法が改正され、性犯罪への罰則が強化された。
これまでは、被害者本人が告発しない限り罪に問えない親告罪であったが、その事実が確認されれば立件が可能になり、被害者が女性の場合のみに限られていたのが、性別に関係なく適応が可能になった。
この新基準を、中谷氏の告発に照らし合わせると、現在であればジャニー氏はその立場を失ってもおかしくない。
すべての所属タレントの「親」としての責任――を語るならば、こうした自分の過去についても、ジャニー氏はしっかり説明する必要があるのではないだろうか。
(渡邊孝浩)
※今日では差別意識を助長する表現ですが、「逆セクハラ」同様、「セクハラ」が男性から女性への“行為”と限定されていた当時の社会的状況を伝えるため、時事用語と捉え、1999年の「週刊文春」(文藝春秋)報道から引用しています。