サンリオの看板キャラクターである「ハローキティ」は1974年に誕生し、来年でなんと45周年を迎える。芸歴45年と考えるとかなりのベテランだが、いまも彼女は「仕事を選ばない」といわれるほどの働き者。
■タイアップ案件はサンリオ側からも声をかけている
サンリオが生み出したキャラクターたちの人気投票である「サンリオキャラクター大賞」の本年度1位は「シナモロール」が獲得、昨年に続き2連覇を達成した。近年、台湾では「マイメロディ」(5位)の人気が伸び、中国でも「ぐでたま」(8位)の新商品開発が進むなど、振興のキャラクターが勢いづいているという一方、サンリオの顔である「ハローキティ」は最終4位とトップ3に入ることができなかった。
「今年は4位に甘んじてしまいましたが、弊社のエースは間違いなく『ハローキティ』です。サンリオの商品は世界130カ国で販売されていますが、どの国でも売り上げ1位はキティ。それだけ全世界にファンがいるという証拠です」
「キャラクター大賞」はアイドルの総選挙のように、ひとりで複数投票が可能などさまざまな理由から、「キャラクター大賞の順位=実人気」ではないという。
キティちゃんは売り上げトップだけでなく、ライセンス契約、つまり企業などとのタイアップ件数も社内トップの稼ぎ頭だ。そもそもサンリオが他社とタイアップするというコラボレーション路線を切り開いたのもキティちゃんであり、2000年代に入って、その案件数は飛躍的に増えたという。こうした他社との共同グッズ開発は、どのように進めているのだろうか?
「先方からお話をいただくこともありますが、こちらからお声がけをする場合も多いですね」
大ベテランのキティちゃんから、国内外の企業・アーティストへタッグを組もうと持ちかけるとは意外だが、これにはサンリオの企業理念が関係しているという。
「弊社のキャラクターを使用して、他社さまが新規のファンを獲得できれば――というのが基本思想です。例えば老舗の食品企業は顧客層が高齢化していて若い客層を取り込みづらいということが多いのですが、パッケージにキティがいるだけで、幅広いお客さまが手に取ってくれるようになるんです」
今年6月の株主総会でサンリオの辻信太郎社長が「良い商品なのに売れていない商品があれば、サンリオとコラボすれば売れる」という趣旨の発言をし、話題になったが、世の売れていない商品をも盛り上げることが、キティちゃんが仕事を選ばないといわれる理由なのだ。
さまざまな商品に顔を出し、他のキャラクターとコラボするときには原形をとどめないほどの仮装ぶりを発揮しているキティちゃんだが、「NGナシ」というわけではないという。
「弊社の企業理念の『世界中がみんな“なかよく”』に反するものはお断りしています。例えば包丁は悪意のある人が手にすれば人を傷つける道具になってしまう恐れがあるため、要望があっても作らないようにしているんです」
過去に一時期カッターナイフを製造していたこともあるが、現在は刃を研いでいない子ども用の練習包丁を除き、ナイフ・包丁類は商品化しないという。
「キティをはじめ、サンリオキャラクターたちが人を傷つけたり、暴力を振るったりする姿は絶対に描きません。このポリシーを守るために、バトル要素のあるゲームなどにも出演は難しく、『仕事を選んでいる』というのが本音です」
■「仕事を選ばない」あまりに困ったことも
NGナシのように見えたキティちゃんでも、実際には会社のルールによって仕事を選び、断っていた案件もあった。しかし、それ以外では、かなり柔軟に対応していることも事実。では、ファンである“キティラー”たちは、キティちゃんの七変化を、どう思っているのだろうか?
「キティファンの皆様はキティの可能性や柔軟性をご存じなので、キティがどんな姿になっても、あまり驚かない方が多い印象があります」
過去のさまざまなコラボで鍛え上げられたキティラーたちは、どんな風貌のキティちゃんを目にしても、動じることはないらしい。しかし、キティラーたちの順応力が高すぎるがゆえに、困ってしまったケースもあるという。
「以前、キティの姿をした『会話型ロボット』を開発した際、ネット上にこのキティを塗り替えた『ガンダムバージョン』や『ダースベイダーバージョン』といったフェイク画像が出回ったのです。弊社では関わっていないニセグッズなのですが、弊社がいろんな企業さんとグッズを開発しているため、多くの人が公式のグッズだと受け入れてしまい、対応に追われたことがあります」
仕事を選ばなそうにみえるキティちゃんだが、すべてのコラボは「世界中がみんな“なかよく”」というポリシーに基づいている。