SNSの普及により、手軽に男女が出会える昨今。若い世代の女性を中心に、富裕層の男性と食事やデートをする対価として金銭援助を受ける「パパ活」がひそかなブームとなっている。

パパ活を行う女性のSNS投稿からは、かつて“オンナ”を売って囲われていた「愛人」や、セックスと引き換えに金品をもらう「援助交際」とは「一緒にしてくれるな」というプライドのようなものを感じる。その一方で、肉体関係有りきの関係が蔓延している様子も垣間見られ、実際のところ、愛人・援助交際との境界線は曖昧に思える。一体、彼女たちは“パパ活”をどのように捉えているのだろうか? そこで、2月に発売された『副業愛人 年収300万円で囲えるオンナの素顔28』(徳間書店)で、1回のセックスにつき、1万円弱という安い手当で副業的に愛人を行う女性たちの実態に迫った著者・中山美里氏に、パパ活女子の自意識について見解を伺った。

■“月極愛人”から“都度払い愛人”へ
――『副業愛人 年収300万円で囲えるオンナの素顔28』を執筆されたきっかけは?

中山美里さん(以下、中山) もともとは雑誌の企画だったのですが、取材を進める中で、昔はひと月何十万円みたいな“月極”が主流だった愛人のお手当が、最近は、会うたびにお金をもらう“都度払い”に変化していることを知りました。都度払いだと傍から見れば個人売春と変わらないのに、本人は愛人というスタンスでやっている。そこの自意識や世間の認識とのギャップに興味を惹かれたんです。
しかも、会ってみたら、愛人のイメージによくある“女のプロ”みたいなオーラも漂っていない普通の女性が、ほかに仕事を持ちながら副業的に愛人をやっているんですよ。それも面白くて、同じような女性を探して話を聞いていきました。

――“愛人”というと、日陰の女みたいな淫靡なイメージがありましたが、今時は違うんですね。

中山 カジュアルで、あっけらかんとやっている女性が多い印象はありますね。昔の“耐え忍ぶ女”みたいな愛人感はなくて、仕事はしているけれど、男性からもお金を引き出してワンランク上の生活を送りたいといったような、たくましく、したたかな感じです。だから、どっぷり愛人業に浸らず、いつでも身を引ける状態をキープしながら、ゲーム感覚で「どれだけお金を引っ張れるか」みたいな面白さを感じていたり、良い男がいたらすぐに愛人をやめて結婚してやるといった変わり身の早さがあったり。
女性の生きる力強さを感じます。

――最近は「パパ活」がブームのようですが、パパ活とはどのようなものなのでしょうか?

中山 パパ活が生まれたのは、2011年あたりに女子大生やOLなど素人女性をウリにした「ラウンジ」が出てきたことが、大きく影響していると思います。六本木や西麻布界隈で遊んでいる富裕層の男性と素人女性との接点ができて、それがメディアにフィーチャーされ、「パパ活」という言葉が生まれたのかと。さらに、そこにアダルト業者が目をつけたことで、SNSやアプリなどを通じて、ラウンジを利用しない男女にまで広がっていったのだと思います。

――パパ活をする女性の特徴などはありますか?

中山 あるラウンジのオーナーから聞いた話や、私が実際に会ってみたパパ活女子の話を元にすると、彼女たちは愛人のような「セックスと引き換えにお金をもらう」という認識は薄く、「今の彼氏とは味わえないような、未知なるセックスを楽しめるかも」という好奇心を抱いている感じがありますね。「セックスせずに済めばラッキーだし、良い人ならヤってもいい」とか、「大人の世界を見てみたい」とか、「年上男性からいろいろと教えてもらって女磨きができる上、お金ももらえて超ラッキー!」といった感覚なのかなっていう印象を受けました。


――確かに当初、パパ活は「食事だけ」「デートだけ」の関係で、アルバイト感覚でセックスまではしないと言われていましたが、今はそのようなことはないのでしょうか?

中山 ほぼほぼないですね。今はパパ活と個人売春との区別がなくなってきたように感じます。アプリなどでパパを探している女性たちは、デリヘルや個人売春と変わらない感覚ではないでしょうか。ただ、中には雰囲気や話術でセックスなしの関係を上手に引っ張る子もいて、三軒茶屋に家賃12~13万円のオートロックマンションを借りてもらって、週に3回ほど食事をするという関係を1年半続けても、1回もセックスしていないという女性がいました。彼女は3人のパパと同時に付き合っていて、家にはエルメスの箱が積んであったくらいなのですが、誰とも体の関係をもたなかったそうです。

――彼女を含め、パパ活女子の年代や容姿はどのような感じですか?

中山 その女性はあどけなさの残る清楚で可愛い感じでしたけど、20代なのに30代くらいに見える子もいますし、年齢も10代~40代までと幅広く、共通点はないですね。
ただ、容姿に自信はないけどサービス精神は旺盛とか、自分の価値をしっかり踏まえた上で、お値段プラスアルファのセールスポイントを持っていると、見た目に関係なくうまくいくことが多いようです。

――お話を聞いていると、パパ活女子から好奇心の強くて合理的な印象を受けます。彼女たちはどのような意識でパパ活を行っていると感じますか?

中山 やっぱり基本はお金です。ただ、一人が寂しいというメンヘラっぽい女性もいれば、男性に求められることで心を満たす自己評価の低い女性もいるし、とにかくお金! っていう女性もいて。“お金”という基本に、どんな願望が乗っかるかで多種多様な組み合わせができているので、あまり分類はできないですね。本当に人それぞれで、最終的なゴールもみんな違いますから。


――90年代には「援助交際」ブームがあったと思います。「援助交際」と「パパ活」の相違性を感じますか?

中山 パパ活は、相手との関係に継続性があるという面では愛人に近いものを感じますが、ブームの始まり方は、援助交際とすごく似ている印象を持ちました。援助交際もパパ活も、生活のためにやっているのではなく、「大人の世界を覗いてみたい」という遊びの延長のような感じなので、女の子が強気なんですよ。私は援助交際第一世代だから、シンパシーを感じましたね。

――パパ活女子のSNSなどでは、自身を「PJ」と称して、「援助交際と一緒にしないで」「相場を下げるようなことをしないで」といったような、パパ活女子としてのプライドを感じさせる投稿も目立ちます。

中山 私もある座談会で、パパ活女子の自意識を感じたことがあります。
ただ、パパからもらえる金額やブランド、相手のタイプなど、表面的なことにこだわりすぎていて、つまらないって感じたんですよね(笑)。それよりも、いろいろ経験していく方が楽しいのになって。買う方の男性にしても、日常生活では出会えないような面白い女の子を求めているので、「私、いくらだから」とお高くとまっていたり、マウンティングし合うような普通の子は、チャンスを逃しちゃっているような気もしますね。

――確かに、パパ活女子は、SNS上で「今日は食事で0.5回収(5,000円もらった)」など状況を逐一投稿してマウンティングしあっています。

中山 援助交際でも、「何を買ってもらった」とか「あの子は旅行に行ったらしいよ」とか、女の子同士のマウンティングはあったんですよ。ただ、当時は比較対象が自分の周囲だけだったのに対して、今はSNSが発達して見ず知らずのパパ活女子の様子もわかってしまうので、マウンティングが激化している様子は感じます。あと、視覚からの情報は大きいので、写真もアップできる分、ほかのパパ活女子がブランド物のバッグを持っていたりすると、「あの子は買ってもらえて、どうして私は買ってもらえないんだろう」って、余計に固執してしまう部分もあるのかもしれませんね。

(後編につづく)

中山美里(なかやま・みさと)
1977年、東京都生まれ。フリーライター。編集プロダクション株式会社オフィスキング取締役。『16歳だった~私の援助交際記』(幻冬舎文庫)『漂流遊女~路地裏の風俗に生きた11人の女たち~』(ミリオン出版)『高齢者風俗嬢~女はいくつまで性を売れるか』(洋泉社)などがある。