Twitterで話題の、元ウリセンボーイで現在歌舞伎町のバーの店長を務めるカマたくさん。テンポよく作られた動画やツイートが人気を博し、フォロワーは39万人(6月21日現在)を突破。

Twitterではたびたび「16年売春していた」と話し、実際の体験をネタにもしていますが、そんな「カマたく」が誕生した背景とは? 出張ホストやウリセンボーイを取材したルポ『男娼』(光文社)の著者・中塩智恵子さんが迫ります。

■最初の動画で「16年間、体を売っていた」と告白

中塩智恵子さん(以下、中塩) Twitterに上げた「オカマでーす」で登場する動画が大きくバズっていましたよね。初めて動画を上げたのはいつ頃なのでしょう? 動画を上げることにしたきっかけも教えてもらえますか?

カマたくさん(以下、カマたく) 去年の9月から動画を上げ始めました。30万人くらいフォロワーのいるヴァネッサという女の子と仲が良くて、彼女に勧められたんです。「やったら、たぶんいけるよ」って言われてやってみたら、一発目でバズりました。

中塩 それをきっかけに、一気にフォロワーが増えた印象です。

カマたく 寝て起きたら3万人くらい増えてて、もう止まらずに10万人まで増えました。それからユーチューバーなどに注目され始めて仲良くなって、動画を出すとまたバズるの繰り返しです。お店にもお客さんがいっぱい来るようになって、ますますフォロワーが増えていきましたね。

中塩 最初に上げた動画は「16年間、体を売っていた」と告白したものですよね?

カマたく そうです。それが最初です。

中塩 あれを見た時、リズム感がとてもいいし、パンする(カメラを左右に振る)タイミングとかが絶妙で、おもしろい! と思って拝見していました。
動画はすべてカマたくさんがお一人で作られているんですか?

カマたく 全部一人で自主制作みたいな感じです。ネタ出しと撮影と編集と出演と。動画を撮って、文字を入れて、つなげていく作業を繰り返してiPhoneだけで作っています。勘というか、「どのアプリ使ってる?」ってヴァネッサに聞いて、いろいろ適当にやってみただけです。

中塩 去年一時期、動画更新やTwitterを中断されていた時期がありませんでしたか?

カマたく 仕事が忙しすぎて、ストレス性肝炎で入院していました。私のお客さんが一日に4~5組来て終わり、みたいな適当なお店だったんですけど、動画がバズった次の日から急に40組くらいになっちゃって。従業員がオーナーと私の2人だけだったので、無理じゃない? となったんです。もともとそんなに大きくないお店なんですけど、急にもう入れない店みたいになっちゃって。

中塩 入れない店に……。すごい反響ですね。

カマたく 入れないうえに3時間待ちとかになって。今でも、それがずっと続いてる感じです。
適当に週6働いてたら、とんでもねぇことになっちゃって……。私、アレルギーなんで、お酒は一滴も飲めないんですよ。シラフで、ずっと営業してます。



中塩 2月6日の動画は、売春を始めた経緯を漫画にしたものでしたけど、衝撃的な内容でした。酒乱で家庭内暴力(DV)のひどいお父さんが、売春を始めるきっかけになったと。どこまでが事実なのだろうと思いながら見ました。

カマたく オール本当の話です。あまりにも、なぜウリセンを始めたのかを聞かれるから、面倒臭いな、言ったほうが楽かなと思って。

中塩 ウリセンボーイを取材してきた中でも、カマたくさんの話は特に衝撃的でした。16年間、体を売っていたということは、逆算したら、13~14歳からじゃないですか。

カマたく そうですね。中1からなんで。


中塩 中学から援交を始めて、お小遣いや生活費を稼いできたという人は少なくないんですけれど、父親が息子に男性客をあてがってビジネスにしてしまったというのは初めて聞くパターンでした。

カマたく そうですねぇ。きっかけは父親でしたけど、その後、継続してやる必要はなかったんですよね。でも、私は開き直っちゃったんです。普通だと父親にそんなことをされて傷つくはずなんですけど、「こういう稼ぎ方があるんだ。便利ね」という、あっけらかんとした感じでした。父親はもう死んでますし、なぜああいうことをしたのか、意図を聞いたことがないのでわからないですけど。

中塩 最初にお父さんに連れられて男の人のところへ行ったのは、13歳の時なんですよね?

カマたく そうです。「友達の家に行くから」みたいに言われました。急にそう言われたから、「なんで?」とは思いました。

中塩 いきなり男の人と2人きりにさせられたんですか?

カマたく はい。それで父親は「パチンコ行ってくる」とか言って出たんですよね。
あんまり覚えてないですけど。

中塩 そこから怒涛の展開になって、びっくりですよね。いきなり男性とセックスすることになるなんて。お父さんには、その後、何か言わなかったんですか? 「ひどいよ」とか「ありえない」とか。

カマたく あんまり……。父親にお金さえ渡せば、そんなに暴力も振るわなくなったし、おとなしくなったんですよね。本当に暴力が減ったんで、これでいいじゃんみたいな感じだったんですよ。別に、そんなにしんどくないし。



中塩 お父さんがきっかけで男性への売春を始めたわけですが、その後、どこかのお店に所属してウリセンボーイを始めたのでしょうか?

カマたく 「スタービーチ」っていう出会い系サイトの先駆けみたいなのがあったんですけど、それを駆使して、自分で相手を探しました。年齢が13歳だとお店には所属できないので。それにその当時、売り専って、そんなになかったですし。父親がきっかけではありましたけど、それからは自分でお客さんを取るように。
なんか自分でやれるなと思って。

中塩 13歳だと、出会い系プロフィールでは年齢を詐称していた?

カマたく 17歳って書いてたと思います。でも、実際会ったら言ってました。実際の年齢を。

中塩 13歳って言われたほうは、たぶんびっくりしますよね?

カマたく でも16~7歳いける人って、大体、中学生もいけるんですよ。若いほうが好きな性的嗜好の方が多いので。

中塩 一回の相場は、いくらだったのでしょう?

カマたく 制服で行ったら一律5万円。ジャージが好きな人だったらジャージで行く。学校の帰りに、その人の自宅などへ行って稼いで帰ることもありました。

中塩 ジャージコースをつくったんですね。結構稼げましたか?

カマたく 稼げましたね。最高が、月180万円です。
14歳の時ですね。

中塩 ええええ!? 14歳で?

カマたく そうなんですよ。ほんとすごいなって思いました。ちゃんと計算してないんで、たぶん180万くらいだったと思います。

中塩 10代の時にそれだけ稼いでいたら、金銭感覚が狂いませんでしたか?

カマたく 狂わなかったですね。全部自分のものではなかったので。父親の借金を返すためじゃなかったら、たぶん狂っていましたけど。ただ母親は、ちょっと不審がってました。何か買うと「これはいつ買ったの?」って。うすうす何かおかしいと感じていたとは思いますけど、うまくはぐらかして。そこまで突っ込んで聞いてこなかったんですよ。

中塩 当時、一番高いもので何を買いましたか?

カマたく 今もそうなんですけど、物欲がないし、趣味もないから、お金を使わないんですよね。お金絡みで苦労してきたので、無駄にお金を使おうと思わないんです。お酒も飲まないし。



中塩 ちなみに、お父さんの借金の総額はどれくらいだったのでしょうか?

カマたく たぶん1000万円くらいだったと思います、ざっくりですけど。母親は私が「20歳になったら離婚する。とりあえずそれまでは、なんとか耐えようね」と、ずっと言ってたんですよ。でも、19歳の夏くらいに父親ががんになったので、しょうがねぇから最後まで面倒見るかとなったんです。

中塩 お父さんが亡くなった時は、どういう気持ちになりました?

カマたく 私は焼き鳥屋でバイトをしていて、店を片付けてからじゃないと駆けつけられなくて、死に目には間に合いませんでした。その時は悲しいというか、「あぁ、死んだんだな……」みたいな感じでしたけど、葬式の時は不思議と泣けましたね。父親としてはなんとも思ってないけど、やっぱり家族だったんだなっていうのはありました。

中塩 今は、お父さんに対してどういう感情を持っていますか?

カマたく 何もないです。無です。もう死んじゃったし、家族の中でも別に話題にも上がらないくらいです。年に一回、命日あたりでちょっと話をするくらいです。

中塩 お墓参りに行ったりとかは?

カマたく 私は行かないです。母と姉は行っているみたいですけど、私は行かないです。基本。

(後編へつづく)

カマたく
歌舞伎町のバーCRAZEの店長。
Twitter

中塩智恵子(なかしお ちえこ)
ライター。宮城県石巻市出身。アダルト系出版社を経てフリーランスのライターに。主に女性週刊誌で執筆。現在、新宿二丁目在住。著書に『風俗嬢という生き方』『男娼』(ともに光文社)がある。
7月20日(土)に『男娼』トークイベント開催。詳細はHPにて 

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