羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「今回の夫の発言は、私が知人の男性と身体を密着させ飲酒していたことを夫が疑い、そのことで夫がお相手の方を責めた結果、なされたものでした」道端アンジェリカ
(所属事務所公式サイトでの謝罪コメント、10月5日)

  カネのあるオトコほど、カネの話をするオンナが嫌い。

先週この連載で、そんなことを書いたが、「カネの話をするオンナ」とはどんな人なのだろうか。

  芸能界で「カネの話をするオンナ」というと、女医でタレントの西川史子を思い浮かべる人もいるだろう。西川はタレントとして出立ての頃、「結婚相手に望む年収は4000万」と宣言し、また「ブスは生きる価値がない」とも語るなど、高飛車キャラで話題を集めた。

  もう一人、カネの話を臆することなくしていたのが、モデルの道端アンジェリカである。アンジェリカはかつて『解決!ナイナイアンサー』(日本テレビ系)で、「結婚相手は最低年収5000万円ないとダメ」と発言、さらに「週に一度は子どもを預けて、夫婦でディナーしたい」と述べて、ネットで叩かれたことがあった。

  年収300万円の人にとって、年収4000万、5000万というのは想像すらつかない金額だけに、彼女たちを「強欲」と捉え、非難した人もいただろう。

しかし、自身も高収入であろう西川やアンジェリカにとっては、「ちょっと上」くらいの数字なのではないのではないだろうか。有名人や名の知れたモデルと親しくしたいと考える高収入男性もいるだろうし、富豪と女性芸能人という組み合わせは定番でもあるので、私は彼女たちの発言が「強欲」とは思わない。

  が、カネの話をはっきり口にする女性タレントほど、カネのある男性と縁がなくなるのではないだろうか。

■西川史子が「年収4000万」公言と引き換えにしたもの

  例えば、西川は結局、年収4000万でない男性と結婚したが、離婚。結婚していた頃から『サンデー・ジャポン』(TBS系)でけんかや夫の家出の話をするなど、不仲は周知の事実だった。離婚後は激やせが話題になるなど、「メンタルやや不安定」なキャラとして見られるようになった。

  なぜ西川が年収4000万の男性と「結婚できなかったか」と言えば、テレビ出演が仇になったのではないか。年収4000万の男性と言えば、代々お金持ちの名門家庭のお坊ちゃんが思い浮かぶ。名門家庭というのは、かなり保守的で、芸能界など人前に出る仕事をする女性を嫌がることもあると聞く(一発当てた時代の寵児的な男性も、年収4000万に当てはまるが、確かに彼らは常識や既成概念にこだわらないものの、保守的な家庭に育ち、人に頭を下げられ慣れたセンセイである西川とは、文化的に相入れない部分もあるだろう)。

  駆け出しのタレントが、テレビに出るためにはキャラが必要である。西川はテレビに求められるまま「年収4000万でないと結婚しない」キャラとなり、タレントとしてのポジションと引き換えに、年収4000万の男性を遠ざけたのではないだろうか。

 そんな西川は、離婚直後にも『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)で「年齢は80歳まで。

年収3000万以上か資産家」と再婚相手の募集をかけていた。番組司会のとんねるず・石橋貴明が軽く引いていたように私は感じ、またネットでも「まだ年収にこだわっている」と叩かれていたものだ。ここでも西川は、求められるキャラを貫き通していたとも思えるが、好感度を意識しだしたのか、最近は男性の年収の話はほとんどしない。

 が、恋愛はしていたようだ。9月24日の自身のインスタグラムで「昨日失恋をしました」「私が良いと思ってた人、 みんながクソみそに罵ってくれました!」と発表。10月6日放送の『サンデー・ジャポン』で、その詳細について話していた。

西川いわく、相手の男性とは「何年か交際していた」「指輪まで見に行った」「ハリー・ウィンストンに担当の人までいた」仲で、「会社にも報告していた」そうだから、ある程度結婚を見据えて交際していたのだろう。

 最終的にうまくいかないのは縁がなかったということだから、早くわかってよかったと思うべきだろうが、その一方で、ほかのタレントとは異なり、結婚、再婚を通して条件にカネをあげた西川の再婚が遠のいているのは、そうすることにより、カネのあるオトコ、もしくは結婚が逃げていくという“呪い”にかかっているのではないかと思わずにいられない。

■道端アンジェリカは実のところ「カネに興味がない」?

  もう一人のカネの話を臆することなくするオンナ、道端アンジェリカは今、渦中の人と言っていいだろう。

  アンジェリカの夫が、アンジェリカの知人男性から35万を脅し取ったとして逮捕された。夫は男性に「お前の家族をめちゃくちゃにする」「ウソをついたら、鉛筆で目を刺す」「人生やり直しだな」と迫ったそうだ。なぜこのような事件が起きたのか。

アンジェリカの所属事務所のホームページに掲載されたコメントによると、「今回の夫の発言は、私が知人の男性と身体を密着させ飲酒していたことを夫が疑い、そのことで夫がお相手の方を責めた結果、なされたものでした」としている。「スポニチアネックス」によると、二人は夫の経営するバーの個室で密着していたとされ、個室に備え付けられた防犯カメラの映像を見た夫が、アンジェリカと共に、男性の職場に乗り込んだそうだ。

  アンジェリカがなぜ男性と密着していたのかはわからないが、夫の目の届く場所で、防犯ビデオが備え付けられているのに、わざわざ夫の嫌がることをするとは考えにくい。さらに、夫と一緒に男性の職場に乗り込んでいるのだ。なぜアンジェリカは、自分も恐喝行為に一枚噛んでいると思われることに気づかなかったのだろうか?

  夫の逮捕を受けて、アンジェリカは『東京ガールズコレクション北九州2019』の出演を取りやめており、事件の全容が明らかになるまで、今後も活動を自粛することが予想される。場合によっては、長期休業をやむなくされるかもしれない。

35万のカネを脅し取る夫を止めなかったために、カネに換算できない損失をこうむってしまったと言えるだろう。

  そんなアンジェリカを「バカだ」と責めたいわけではない。案外アンジェリカは、実のところカネに興味がなく、ザル勘定なのではないかと思うのだ。「女性自身」(光文社)によると、結婚当時の夫はPR会社のサラリーマンで、年収5000万には届いていなかったそうだ。もし本当にアンジェリカがカネ第一主義なら、稼げる額に限界があるサラリーマンとは結婚しないだろうし、もっと緻密にカネのことを考えていたならば、自分の仕事に差しさわりがある行為(仕事ができなければ、自分の収入も減る)に加担するような行動は取らないのではないか。彼女は西川と違って、高収入の男性を遠ざけるだけでなく、タレントとしてのポジションまで失いかけてしまったように思う。

  ほかのアジア地域と違い、日本はカネを不浄と見ることがある。金銭の寄付を浄財と言うのも、カネを穢れたものとする意識があるからだろう。ゆえにカネの話をする人は下品だとされ、眉をひそめられるわけだが、アンジェリカの例から考えるに、カネの話をする女性は、案外ワキが甘いというか、お人よしではないだろうか。カネの話をしない人の方が、カネに対する執着が強いのかもしれない。

  カネがなくては生活できないのは、誰にとっても疑いのない事実であろう。それくらい重要なものだからこそ、カネの話をしてはいけないと解釈することもできるはず。現状の日本において、「高収入男性と結婚したい」という女性は、マナーの面でも、アンジェリカの轍を踏まないためにも、「結婚相手は年収〇万以上の人」と口に出すことはやめた方がいいのかもしれない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。