11月22日、大丸梅田店に、バイブレーターやデリケートゾーンのケア製品を扱う女性向けセルフプレジャーブランド「iroha」の常設店「iroha STORE 大丸梅田店」がオープンした。「iroha」は、昨年8~9月にかけての2週間、同百貨店でポップアップストアを展開。

13日間で約1,500人が来店し、売り上げは目標の3倍以上となる約400万円を達成して、各メディアで大きく取り上げられることに。その後、二度のポップアップストア実施を経て、この度、同百貨店に新設された、女性の性や生理などのバイオリズムに特化したゾーン「michikake(ミチカケ)」内に、常設店が誕生したという運びだという。

 百貨店に、アダルトグッズが並んでいるという状況は、ひと昔前には決して考えられなかったことだが、近年、女性の性欲やセルフプレジャーに対する意識は、どのように変化してきているのだろうか――。今回、女性向けアダルトグッズメーカーの広報部に取材を行い、その実情を探る。前編では、「iroha」広報宣伝部広報チームの犬飼幸氏と本井はる氏に話をうかがった。

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「iroha ポップアップストア」来店者の約半数は「40~50代」

――「iroha」初の常設店が、大丸梅田店の新ゾーン「michikake」にオープンしました。このゾーンは、「月のみちかけのように、あなたのリズムに寄り添う。」がコンセプトとのこと。女性のリズムを「もやもや期」「キラキラ期」「ゆらゆら期」「どんより期」の4つの周期に分け、“人には言いにくい悩み”に応えるアイテムやイベントを展開するとのことですね。

犬飼幸氏(以下、犬飼) 「michikake」のコンセプトは、「iroha」のブランドコンセプトにばっちり合っていると思います。世間的に、女性のセルフプレジャーは「はしたないもの」「恥かしいもの」と捉えられている面があると感じるのですが、我々は、性欲は男女問わず「ある人はある」「ない人はない」ものであり、性欲のある女性がセルフプレジャーをすることは、はしたなくもないし、恥かしくもないと考えています。セルフプレジャーを「寝る前のパック」「お風呂でのトリートメント」と同じ“日常のセルフケア”の一つであると捉え、それをブランドコンセプトとして掲げているんです。

 大丸梅田店では、過去3回ポップアップストアを実施していますが、大丸さんはiroha のポップアップストアを、性の悩み相談をできる場と捉えている面もあるみたいです。

実際に、来店された方が、店員に性の悩みを打ち明けてくださるということがよくあるんですよ。

――ポップアップストアへの来店者層について教えてください。

犬飼 来店者で一番多かった年代が40代で、40~50代の方が約半数を占めていました。男女比は、女性が8割、カップルが1割、男性が1割。通常「iroha」は、オンライン購入が全体の8割を占め、購入者は「20~30代女性」が最も多いのですが、店舗にはその上の世代の女性も足を運んでくださいました。そもそも百貨店に来店する層に年齢層が上の方が多いことが影響しているのかなと思いつつ、irohaのニーズは年齢問わずであると実感しました。

――常設店の来店者層は、ポップアップストアと比べていかがでしょう。

犬飼 年齢層は20~70代で、特に40~60代の女性のお客様が多くみられます。ネットニュースきっかけで来店される方が多いようで、例えば「子どもが生まれて半年がたち、旦那さんとマンネリ気味。夫婦で『irohaやTENGAを試してみる?』という話になった」という30代女性の方、また「彼氏とのセックスで毎回痛いため、トレーニングしたい」という20代女性の方、などがいらっしゃっていました。

大丸梅田店で「バイブが買える」時代に! 「iroha」に聞く、女性のセルフプレジャーはどう変わったか?

――「iroha」は2013年に誕生し、6年がたちました。大丸梅田店に常設店がオープンというのは、まさに女性のセルフプレジャーが日常のものと認識されるようになったからとも言えますが、実感としていかがでしょう。

本井はる氏(以下、本井) 男性に比べると女性のセルフプレジャーは、いまだタブー視されている向きが強いとは思いますが、確実に変わってはきています。我々がメディアの取材を受ける際も、当初は「へぇ、で、君は脱がないの?」と聞かれるなど、偏見の目で見られることが少なくなかったのですが、最近では女性の性欲やセルフプレジャーグッズを真面目に取り上げてくださるメディアが増えました。また女性誌だけでなく、NHKの番組や「朝日新聞」など、幅広い視聴者/読者層のメディアでも扱っていただけるようになっています。

――「iroha」が、その変化の一端を担ってきた部分もあるのでしょうか。

犬飼 「iroha」は女性自らが手に取りたくなるものを目指して開発され、性器を模さない、日常に溶け込むようなデザインになっています。あと、爪が長くても押しやすいスイッチにするなどの工夫も凝らされているんです。こうした点が、これまでの男性が女性に使って楽しむ“エロいもの”を想定して作られたアダルトグッズとは異なると思いますね。

――健康雑誌「ゆほびか」(マキノ出版)の8月号では、「心と体が超若返る!ウエストが劇的に細くなる!『ひとりエッチ』は薬だ!」という特集が組まれていました。「michikake」出店も含め、女性のセルフプレジャーが、ヘルスケアに近いジャンルのものとして扱われている印象ですが、そのことついては、どう思われますか。

本井 それもここ数年で変わってきたことの1つかなと思います。率直に、うれしいですね。海外だと、セルフプレジャーはすでにヘルスケアの一種として捉えられているんですよ。

米国テキサス州で開催されている世界最大のクリエイティブビジネス博覧会『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)』が、18年から「ウェルネスエキスポ」を始めたのですが、そこでは、セルフプレジャーグッズが、オーガニック化粧品や食品、アロマ、ヨガなどと一緒に、ヘルスケア用品として展示されていました。また、今年TENGAが、アメリカ在住の約1,000人(18~54歳)を対象に「ストレス解消に有効な方法」を聞いたところ、74%が「セルフプレジャー」と回答したことも印象的でしたね。

 日本で「セルフプレジャー=ヘルスケア」という空気が生まれつつあるのは、やはりうれしいことです。実際ポップアップストアには「膣トレ目的」でセルフプレジャーグッズを購入される方も結構いらっしゃいましたよ。骨盤底筋を強化するとセックスの感度が上がると言われているのですが、それ以外に「尿漏れ対策」として興味を持ってくださったようですね。

大丸梅田店で「バイブが買える」時代に! 「iroha」に聞く、女性のセルフプレジャーはどう変わったか?

――「尿漏れ対策」は、まさに中高年の健康問題に直結していますね。

本井 広くデリケートゾーンへのタブー自体が薄らいでいる印象もあります。性は日常のものと認識されると、性の悩みや体の気づきについて、フラットに話せる空気が生まれると思うんです。そうすることで、性の知識が無いゆえに心身ともに傷つく人が減ったらいいな、とも思っています。先ほど、性に対する意識が変わりつつあると言いましたが、それでも日本の性教育が遅れていることは否定できません。TENGAが世界18カ国を対象に実施した「マスターベーション世界調査」で、日本人はマスターベーションを始める年齢が最も低年齢だった一方、学校の性教育でマスターベーションを習ったことがある人は最も少ないという結果が出ました。

犬飼 つい最近、大学生~20代前半を対象とした女性誌から「性のお悩み相談」を受けたのですが、その中に「セックスの後、コーラで女性器を洗えば妊娠しないって本当ですか?」という質問があって、とても驚きました。

「絶対洗わないで!」って。なぜいまだにこういう質問が出てくるのかと言えば、やはりまだまだ性がタブー視されているため、正しい知識を得る場がないことが影響しているのかなと感じます。ネットを検索しても、セックスのテクニックばかりが出てきてしまいますからね。「iroha」としては、こうした状況を今後変えていけたらなと考えています。

(後編につづく)

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