
北朝鮮が、昨年9月に韓国との間で結んだ軍事分野の合意のうちの1つを履行せず、「スルー」していたことがわかった。韓国側は準備万端ととのえ、待っていたにもかかわらずだ。
北朝鮮はほかにも、韓国の文在寅大統領が要望した、日本からの独立運動100周年行事を共同開催する約束を「スルー」している。2回目の米朝首脳会談が不調に終わり、韓国政府は仲介役として貢献すべく意気込むが、北朝鮮に対するグリップが怪しくなってきている状況だ。
北朝鮮はもともと、韓国と全面的な「蜜月関係」ではない。気に入らないことや自分の立場から見て韓国に「筋が通らない」と思われる部分があれば、強い表現で罵倒することもいとわない。
しかしそれにしても、最近の北朝鮮の行動には、「韓国軽視」とも思える部分がうかがえる。
今回、北朝鮮が「スルー」したのは、今年2月末までに実施することにしていた南北共同遺骨発掘団の構成・相互通知だ。
昨年9月に双方が交わした軍事分野合意書には、南北が非武装地帯(DMZ)内で朝鮮戦争戦死者の遺骨を共同で発掘するため、大佐級を責任者とする5人ずつの共同調査・現場指揮チームを構成するほか、80~100人の発掘団をつくることや、2月末までに相互に通知することが明記されている。韓国側は、遺骨発掘団の構成をすでに終えている。
朝鮮半島情勢の全体的な構図の中で見れば、小さな問題と思えるかもしれない。しかし北朝鮮と韓国はこれまで、陸海空での敵対行為の中止やDMZの監視所の試験撤去、軍事境界線上にある板門店の共同警備区域(JSA)の非武装化、漢江河口の共同水路調査など、軍事分野合意書の記載事項を着実に履行してきたのだ。